音駒生三年目

東京に来て3度目の春。
それは、高校生活最後の春であり、子供で居られる最後の年だ。

一つ学年が上がり、新たなクラスへと変わったが、相変わらず私の周りは賑やかだ。


「…うわ、もうこれ何かの呪いかな。」
「私も思ったわ。」
「うちらの運ここで使っちゃったんじゃない?」
「冗談じゃないんだけど」
「それな」


掲示板に貼られたクラス表。始業式の日に、ぼんやりと眺めているといつの間にか隣にいた友人たちが騒いでいる。

何を言ってるのはすぐにはわからなかったけど、自分の名前の隣に友人の名前を見つけた時、ようやく理解した。


「去年と同クラいる?」
「うーん…あ、海と同じじゃん」
「ご利益あるぞ、このクラス」
「お前そういうこと言ってっから、いつになっても男できねーんだぞ」
「うっせ」

さーいくべーとスタスタと歩き出す友人について、私も歩き出す。今年は高校最後の年になる。とうとう受験生になってしまったけど、多分きっと楽しい一年になるんだろうと、なんとなく思った。
それはきっと、この人たちがいるからだろうと思う。

「おーす、海」
「あぁ、吉川、椎名。
同じクラスか、よろしくな。」
「こちらこそ。」
「今年も古文は頼んだぞ!」
「あんたは自分でやる気ないの?」
「ない」
「救いようがないって、このことだよな。」

はっはっはっ。といつも穏やかな海が、笑って時折毒を吐く。ものすごく鋭いやつ。


「くっ…」

胸を押さえてヨロヨロと椅子に座った友人を笑いながら、海の後ろの席に腰を下ろす。

「よろしくねー」
「あぁ、こちらこそ。」

あぁ、この笑顔。確かにいいことありそう。
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