お疲れ青春

「昨日彼氏と喧嘩しちゃったー。
だって彼束縛激しいんだもん」
「それ最悪じゃん。
束縛する男とか最低」
「でしょー?」
「しかもさー……」


席が近いというだけで聞こえた派手めの女子の会話は、最近発売したばかりの雑誌で読んだような内容だった。

男女ともに、何かのランキングで2位にランクインしていた。
たぶん、別れる原因のかそんなのだろう。
そこまで、詳しく読んでいなくてわからないけど。


「私、あいつと彼氏がいる所前に見たけど、全く相手にされてなかったわ。マジ妄想お疲れ。」


はっ。と鼻で笑う。
私の前でマニキュアを塗り直す友人は、可愛い顔をして毒を吐いた。

そのマニキュアの色と同じくらい毒々しい。
もっと可愛い色にすればいいのにと、いつも思う。パステルピンクとか、黄色とか、そういうパステル系が似合うのに、なんでそんな色。

綺麗に出来上がっていく友人の爪から、見開きのまま置いてある雑誌にに視線を移し、紙パックの紅茶を啜った。


「そういえば、どうなの?バスケ部は。」
「あー。辞めた」
「は、いつ?」
「先週?あたし入学する前に漫画読みすぎてたみたい」
「…うわ…ゲス」
「はいはい、うるさいよー」


彼女は、ファッションとか食べ物とかに、こだわりは強いものの、とても影響されやすい人間なのだ。
どっかのセレブが愛用しているものだと聞けば、いつの間にか彼女も使っていたり。

まぁ、これでようやく納得したわ。
どおりで最近少し前までは会うと喋ってたバスケ部の子たちを無視すると思ったよ。なんて分かりやすいんだろう。

「あーあ、部活どうしよっかな」
「え、またなんかやる気なの?やめとけ、勉強しなさい」
「えー、勉強なんてやってらんないよ、高校最後の年だよ、やりたいことやっとくの!」
「…あんた運動部ってタイプじゃないでしょ。見た目も中身も」
「失礼な」
「正直者と言って」
「でもあたしも自分運動部向いてないなーって思った。」
「だろうね」


運動苦手そうだもんね。
自覚あったんだ。


「そういう椎名はなんだかんだ言って、運動神経いいよね。見た目ガリ勉なのに。」
「失礼だな。」
「正直者と言って。」
「……。」

ムッとする私にニヤニヤしながら、塗りあがった爪を満足そうに見つめた友人は、ふっと息を吹きかけた。

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