勧誘前夜

「今度の合宿もう一校増えるらしいぞ」
「え?」

部活終わり、片付けをする先輩たちの会話を聞きながら、ネットを下ろす。

「確か、宮城の…烏野っつったかな。」
「烏?…聞いたことねーなー」
「今はそこはどうでもいいのよ。
うちはは、マネージャーがいなくて、うちが2人森然と生川で一人ずつで、烏野が2人って言ってたかな?」
「で?」
「烏野が、何人で来るかは分かんないけど、もう一人くらい欲しいって梟谷のマネさんが」
「そーいやこの間の合宿、大変そうだったし。」
「だから、音駒から一人だしてくんねーかって。」
「確かに。マネージャーいねーのうちだけか。」

夜久さんは、うーんと険しい顔をしながら、ボールを集めている。

「でもよー、3年は無理だろ?まだ引退もしてる部もねーし、高校でマネージャー経験があるやつは、まぁ、見つからねーだろうな。」
「だよなー。」
「……」


部長のの言葉に、今までしゃべっていた3年が一斉に黙り込む。
だけど突然、何か閃いたように夜久さんがボールから顔を上げた。


「あいつは?」
「あいつ?」
「ゴールデンウィーク来てただろ」
「あぁー、椎名?」
「そ!」
「確かに、あいつ夏休み暇してるだろうし。」

「声かけてみっか」と黒尾さんは、ぐーっと体を前屈させながら言った。


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