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全国高校総合体育大会通称インターハイと呼ばれる大会は、年間を通して春高と並ぶ大きな大会だ。

長期連休真っ只中。
川西の親戚の家から電車を乗り継ぎ、目黒にある総合運動場に来ていた。
その中でも多くの人が集まる体育館。その入り口に掲げられた看板は、いつにも増して人の興奮を煽るものだった。

本日は、全国高等学校総合体育大会バレーボール競技高校男子の部の準々決勝が行われる。
出場チームは、宮城県代表白鳥沢学園。

ごった返す人の波でも一際目立つ「獅子奮迅」と書かれた横断幕が掲げられ、ブラスバンドにチア、応援団と相変わらずものすごいラインナップだ。

さすが強豪校と言われるだけあるなぁと毎回感心する。
そして紫のユニフォームが、彼らの目印。あ、それと、顧問の先生の怒鳴り声。これは昔も有名だった。

私と川西はと言うと、この熱に埋もれながらも、なんとか白鳥沢側の応援席に座ることができた。
隣にいた白鳥沢生にはあまりいい顔はされなかったけど。どうせ牛島さん目当てだろとか思ったに違いない。

だけどまさに私たちは、若利目当てなので、何も言うまい。


ピ!と電子音が響き、2チームはネットを挟んで並び、相手そして審判に挨拶をすると、それぞれのコートに戻り、1チームずつポジションと番号の確認が始まる。
そして、それが終われば試合が始まる。

一番前列の太鼓が、始まりの合図。どこからともなく聞こえてくる応援の歌詞に合わせて叫んでいれば、隣の白鳥沢生に変な顔をされ、隣の川西には爆笑された。

そして、なんのためらいもなく普通に叫んでいた自分にも驚いた。
最終的には紫色のメガホンを渡され、点が入れば立ち上がり一緒になって叫ぶと言う構図が出来上がっていた。

「待って、なんで分かるわけ!?」
「…染み付いたくせ、的な?」
「なにそれ、ウケる」

なんて、最初は馬鹿にしていたくせに、試合が進むにつれて、川西も同じく立ち上がりコートに声援を送っていた。

試合は2-1で白鳥沢が勝利に、準決勝に進出を果たした。

「川西ー、ちょっと飲み物買ってくるね」
「じゃ私はトイレ行ってこよー」
「ここ次のチームくるからさ、入り口集合する?」
「おけ。」

そう言って途中で川西とは別れ、1人自販機の前で紅茶にするかコーラにするか悩んでいた。

「町田…?」
「え?…あ、黒尾」

東京のしかもこんな限られた場所で、川西以外に名前を呼ばれるなんて思いもしなかった私は、不審に思いながらもゆっくりと振り返った。

その先にいたのは、制服を着た黒尾でスクールバッグを肩にかけ、ポケットに手を突っ込んだまま固まってこっちを見ている。

一瞬誰なのかわからなかった。なんというかあの髪型見てようやく認識して、ゆっくりと手を胸元まで持ってくると、ひらひらと手を振った。

ここで逃げるわけにもいかず、ぼんやりと黒尾を眺めているうちに、珍しく驚いた表情を浮かべた黒尾は、ずんずんと大股で近づいて着たと思えば、目の前でピタリと止まりこっちを見下ろしていた。

「…何でここに?」
「応援で」
「…はぁ、なんだよ、言えよ。こっち来るって。」
「いや、夏休みだし清水が東京で合宿があるって言ってたから、音駒も参加してると思って」
「そうだけどさー、そうだけどー。」

はぁぁ。と額に手を当てながらため息をついた黒尾は、チラッと私を見ながら「それでも連絡してくれてもよくね?」とぼそりと呟いた。

「ご、ごめん…?」

んん!?な、何だ今の。いきなりドクドクと血液が全身をめぐるような、苦しさが襲ってくる。それを誤魔化すように、お金を入れたままになっていた自販機のボタンを押す。
テキトーに押したせいで、ガコンと出てきたのはレモンウォーター。

これじゃない!もう一度お金を入れなおし、冷たいミルクティーを押した。

近くのベンチに座っていた黒尾の隣に腰を下ろすと、「はい」と先ほど間違って買ったレモンウォーターを差し出す。


「え?」
「間違って買ったから、あげる」
「おー、サンキュ…」

黒尾の隣に腰を下ろすと、フタを開けると一口飲む。背もたれに寄りかかりだらんと足を伸ばした。

「どこで見てんの?」
「んーメインアリーナの2階、黒尾は?」
「俺は今来たところ」
「あれ、そう言えば合宿は?」
「あー昨日まで。烏野の奴らはもう帰ったぞ」
「マジか。」

あとで清水に連絡しよう。

「どこの試合見にきたの?」

さっきの試合でシワシワになったトーナメント表を開く。わかりやすいように白鳥沢のところに、赤く引かれた線ににやけながら広げる。

「狢坂対稲荷崎」
「むじ…?」
「狢坂…あー、これだな」

…狢坂対稲荷崎。
あ、ホントだ。なんだ、今日の最後の試合じゃん。しかも、ここの勝った方が、明日の白鳥沢の準決勝の相手になる。
マジか、この試合もちょっと見たいなぁ。

「なぁ…」
「ん?」
「こっちいつ来たの?」
「昨日」
「マジか」