02


黒尾と別れ集合場所である体育館の入り口に行けば、すでに川西がいてベンチに座ってスマホをいじっていた。

「ごめん、お待たせ」
「おっそい。」
「ごめんて!」


宿舎に戻ってから少しだけ自由時間があるらしく、宿舎近くのカフェで待ち合わせをした。

どうせこれが終わらないと彼は来ないから、ここで見ることにしたのだ。

「太一来るってさ」
「え、ホント?大丈夫なの?」
「多分ね」

「あんたも連絡すればいいじゃん、幼馴染に。」
「いや、奴がスマホを見るはずがない。」
「らしいわ。」

ブハッと笑った川西は、やっぱ変わってないねー。とクスクス笑っている。
当たり前だ。私が見てきた15年間。子供の頃からあの天然と物事の考え方は全く変わってはいない。それは、恐ろしいほどに。

「ちょっと待って。
太一に伝えてもらうから」
「いいよ別に」
「よくないし、私が会いたい」
「お前がかよ」

今日最後の試合だったおかげで、試合が終わるとそそくさと体育館を後にした私は、近くのファミレスにいた。

窓際のソファーに座ってメニューを眺めて待っていると、コンコンと窓を叩く音がして、顔をあげればジャージ姿の太一くんが無表情でひらひらと手を振っていた。驚いたことに、我が幼馴染と共に。カオスかよ。


「太一、こっちー」
「ほんとに来てたんだ」
「まあな。」
ニヤッと笑う川西に脱力しながら、前の席に座った。
「町田先輩も、すいません付き合わせちゃって」
申し訳なさそうにする太一くんに、首を左右に振った。
「いや、こちらこそ」

この人連れてくんの苦労したでしょ。
…はい。
心中察するよ。

「若利何か飲む?」
「水でいい」
「だよね」

店員のお姉さんがお冷2つと、烏龍茶、メロンソーダを持ってきてくれて、改めてグラスを持つ。

「それでは、準決勝進出を祝して、かんぱーい!」
「乾杯」

ガチンとグラスが当たる鈍い音がして、グラスの中のメロンソーダがかすかに泡を立てた。

「おばさんは元気か。」
「うん、元気くらいしか取り得ないからね、あの人。」
「そうか。」

お母さんは、どうやら若利がお気に入りらしく、盆や正月に会うたび酔っ払ってふざけては絡んでいる。
そしてその圧に、圧倒される若利を若利母と共に笑うのが、我が家の恒例だ。

「準決勝進出おめでとう」
「あぁ。」
さも当たり前のように特に何も言わないあたり、本当に変わってない。準決勝なんて進んで当たり前。どんだけ自信家なんだ。だけど、それに実力も追従してくるから、本当にタチが悪い。

「決勝もくるのか」
「うん、応援行くよ」
「そうか」

それだけかい。何故が納得したように頷いた若利は水を一口飲んだ。

「ところでさぁ、斜め前のボックスに座ってる赤い髪の人は知り合い?」
「は?どれ」
「あれ」

川西の言葉に、ちらっと通路を覗き込めば、おかっぱの子と…赤い髪の妖怪がニヤニヤしながらこっちを見ていた。

小さく指差した先をクルッと背もたれの陰から覗き込む太一くんは、はぁと深いため息をついた。1人は私にも見覚えはある。

「天童さん…健二郎。」
「もー、健二郎のせいでバレちゃったじゃん!」
「天童さんのその髪のせいじゃないですか?」
「あんたら、暇なんすか」

ギャンギャン騒ぎながら近づいてくる元クラスメートにため息をつきながら、薄くなった烏龍茶を飲み切る。

そもそもその図体で、ボックス席に身を隠せると思ってたの?逆に驚くわ。

「町田ちゃん、久しぶりー」
「おー」
「相変わらずテンションひっく!」

こいつは相変わらず謎のテンション。試合終わりで高いわけ?

「ちょっとそこ交換してよ」と太一くんに詰め寄っている覚を尻目に、スマホで時間と確認する。

そろそろ16時になろうとしているところ。そろそろ時間だ、と思いバッグにスマホをしまう。

「若利、そろそろ出よう」
「えー!せっかく衣織ちゃんと会えたんだからさー、もうちょっと居ようよー。」
「3年がそんなんじゃ示しがつかないでしょ、さっさと帰れ覚。」
「ヒドイ」

相変わらず辛辣。とメソメソ泣きマネをする覚にため息をつくと、川西を押し出して通路に出た。

「送る」
「いいよ、疲れてるでしょ」

私のバッグに伸びできた若利の手を押し返して、バッグを肩にかける。

「じゃあ、途中まで一緒に行こー。」

ガバッと覚に肩を掴まれ、ほぼ引きずられながらファミレスを後にした。身長差を考えろ、しぬわ。

「もー、烏野行ってから全然連絡くれないんだもん」
「覚に連絡する用ないし」
「えー、俺と衣織ちゃんの仲じゃない。」
「どんな仲だよ、デタラメ言うな」
「相変わらず連れないなー」

相変わらずヘラヘラしてんな、こいつ。はぁ、とため息をつきながらも、なんだか懐かしいこの空気が、中学時代に戻ったみたいで少し嬉しかった。
最寄りまでこいつらを届けた私と川西は、お世話になることになっている親戚の家に向かった。

「やっぱ牛島くんかっこよかった」
「へー、そう。」