天気、快晴。
視界、良好。
まだ少し肌寒さが残る春のある日。
本日は、烏野高校の入学式。校長の長い挨拶、来賓、生徒会長挨拶、新入生代表挨拶という恒例の話に耳を傾けていたが、途中から寝ていたせいですっとばしてしまった私は、初日から式が終わる直前に隣の子に起こしてもらうという失態をやらかしたのだ。
なんてこった!
それから終了まで爆睡した私は、「もう終わったよ」と、肩をたたかれ飛び起きたのだ。
といっても、立ち上がりはしなかったが隣の子に視線を移せば、困ったように苦笑いを浮かべていて、私はあわてて「助かった、ありがとう」とお礼を告げ、教頭先生が礼をした後に小さく頭を下げた。
というか、隣の子めっちゃ美人さん。
いや、美人というか、可愛い。
高1なのにハイスペックだな。と一人感心しながら体育館から退場にし、そのまま教室に向かう。
まだ、入学したてとあってそんなにうるさくはなかったが、所々ですでにグループが出来上がっているように見えた。
またもや、乗り遅れた感があるのは、気のせいかな…。
つい習慣づいていた昔の癖。
首をゴキゴキ言わせながらう廊下を進み、私は1年4組の教室に足を踏み入れた。
そして席は、残念なことに前から2番。窓側だったことが幸いで、教卓の前に座る彼はさぞ気まずいことだろう。
入学早々、先生の真ん前とか付いて無さ過ぎる。
と、自分の席にポジティブになったころガタン。と隣の席に誰かが座った。
今年一年、お世話になるであろうお隣さん。
ちなみに前の席の人は、真面目そうな男子生徒。
ものすごく真面目で率先して、一番前に座ったのだろうか。
なんて、考えを巡らせながら、チラっと隣を見れば、見覚えのある美人とバチッと目があった。
「あ。」
「…え?」
そしてそれはなんと、入学式で助けてくれたメガネが似合う美人さんだった。
不思議そうに首をかしげる姿までもが、絵になる彼女に少し気まずくなって視線を逸らし、そして呼吸を整えて再び視線を戻す。
「…さっきは、ありがとう。」
「え?」
「えーと…入学式の時。」
あぁ。と思い出したようにハッとした表情を浮かべた彼女は、「いえ、気にしないで。」と小さく頭を振る。そんな姿につられて自然と頬が緩む。
無表情で、淡々としているけど、悪い人ではなさそうだ。
それから間もなく担任が教室に来た。
今日この後の予定や部活、委員会などの説明をし、軽い自己紹介のしたあとSHRはお開きになった。
その間、ずっとぼんやり黒板を眺めていたせいで全くと言っておいいほど話を聞いてはいなかったが、まぁ、どうにかなるだろう。
担任が教室を出ていくと、すぐにガヤガヤし始める教室。アドレスの交換とかをし始めるのは、女子も男子も同じことらしい。
ま、とりあえず帰るかな。なんて、バッグを持って立ち上がろうとしたとき、「あの…」とどこからともなく、とはいかなくて隣の席から声がした。
か細くてちょっと控え目な声。
その主を見れば、隣の席の清水さん。
「なんでしょう。」
「落としましたよ。」
「え?」
そう言って彼女が差し出したのは、黒いシャーペン。
しかも私が中学から愛用してきた品にそっくりだ。
急いでバッグをあさって、ペンケースの中を探れば見事にそいつだけがなくなっていた
「ありがと。」
「いえ。」
表情一つ変えずにそういった彼女は、椅子を押して立ち上がりバッグを肩にかけた。
「あぁ、待って!」
「…え?」
ぽかんと驚いた表情を浮かべる彼女に続いて、リュックに背負って急いで立ち上がる。
「途中まで一緒に行ってもいい?」
「え?」
「せっかく隣になれたんだし、清水さんと話してみたい。」
そう言うと、彼女は目を丸くした。と思いきや、じわじわと頬を赤くする。
んん?
「…うん。」そう小さく頷いた彼女に、密かに萌え死にしそうになったのは内緒だ。
「あ、私町田衣織です。」
「…清水潔子。」
「清水さん!
よろしくね。」
「こちら、こそ。」