小さな巨人

そもそもの出会いの言うのは、私と仁花が同じクラスだったことがきっかけのような気がする。

梅雨が終わりようやく宮城にも、夏の季節がやってこようとしている。ジメジメとした気候と上がり始めていた気温に、登校拒否になりそうになりながら、なんとか高校生活を送っていた。

「衣織」
「んー?」
「あのお願いが、あるんだけど…」

机から額を離して顔を上げると、伏し目がちの友人が、どこか申し訳なさそうモジモジし目線を右往左往させている。

「どーしたの?」

体を起こして頬杖をつくと、なるべく穏やかに首をかしげる。

「あ、あのね。す、数学を教えて欲しいの!」
「数学?仁花数学苦手だっけ?」
「に、苦手じゃないよ…あの!私じゃなくて…」

そう言った仁花の視線を辿れば、先程から感じていた視線の持ち主が、こちらを見下ろしていた。

オレンジ頭と目つきの悪い男子。

うん、気づいていたよー。毎度騒がしいなーって思ってたもん。
でもね気づかないふりをしていたんだよー。

「3組の日向くんと影山くん」
「ちわっす!」
「ウス。」
「どうも。」

二人の顔を確認した後、仁花に視線を移せば、なぜか決心したようにじっと私を見つめていた。
なんとなく勘が働き分かってしまった、話の流れ。


「あ!私がこいつらに数学を教えろと?」
「う、うん!」

気まずそうな仁花の言葉に間髪入れずに、ガバッと数学のノートを前に突き出し頭を下げたオレンジ頭。

「お願いします!赤点とったら東京遠征行けなくなるんですっ!
お、おい、影山も!」
「教えてください。」
「私からも、お願いシャス!」

教室中に響くほどの大声で、仁花までもが、男子2人に混ざって頭を下げるこの光景。
チラチラとクラスメートたちも面白がって見ているし、「町田ー、教えてやれよー」なんて声も飛び出してくる始末。

この注目された状況で断りでもしたら、私嫌な奴確定じゃん。

「わ、分かった!」
「ぃよっしゃー!」

ガバッと勢い良く頭を上げたオレンジ頭と仁花は、お互いに顔を見合わせニコッと笑った。

「お願いします。」
「衣織、ありがと!」

「俺、1組の日向翔陽!これは影山。」
「っす。」
「…町田衣織です。」