東京遠征を賭けて
「町田さーん!」
「あれ、日向」
「数学のテスト、半分取れたよ!」
「おぉ!すごい!」
ぴょんぴょん飛び跳ねる日向に若干圧倒されながら、掲げらた両手をパンっと重ねた。
「この調子で期末も頑張ろ!」
「うん!じゃあね!」
「うおー!!」と雄叫びをあげて教室に戻っていく日向の背中を眺めていると、「衣織、どうしたの?」いつの間にかトイレから戻っていた仁花ぎ隣に並んでいた。
「あぁ、さっき日向が昨日のテスト見せに来てさ、半分取れたんだって」
「え!すごいじゃん!すごい成長だよ!」
「そうだね」
うふふっと嬉しそうに笑う仁花につい頬が緩む。先に教室に入った仁花を追って私も入ろうと顔を上げた先で、何故かバチっと絡まった視線。
隣のクラスから出ようとしていた明るい髪の背の高い眼鏡。
一瞬不機嫌そうにピクッと眉間にしわを寄せた彼は、何事もなかったかのように背を向けて歩き出す。
今、一瞬目あった気がしたけど、気のせいか。
そんなことがあってから、数日後。
相変わらず仁花の部屋は綺麗だった。
可愛らしいカーテンとインテリア。本棚には何やらデザイン関係の本が並んでいる。
「衣織、何か飲む?」
「んー、お構いなく。」
お昼過ぎのテキトーな時間、数冊のワークを持って仁花ん家集合がかかった。
「お邪魔しまーす!」
「ちわっす。」
「わー、谷地さんの部屋綺麗だねー。
あ、町田さん。」
「おつかれーっす。」
少し遅れてやって来た日向と影山は、部屋の隅っこにバッグを置くと早速教科書とノートを取り出し机に並べた。
その光景をぼんやりと眺めていると、バチっと日向と目があった。
「ねぇねぇ町田さん」
「はい。」
「ここ!教えて、昨日の授業でわかんなかったとこ!」
「ほいよ。」
それからようやくひと段落して、仁花が用意してくれた紅茶を飲みながら、数学のワークを説いている影山くんと日向のつむじを眺めているとふと疑問に思った。
「2人はさ、英語と数学以外はどうしてるの?」
「月島っていうメガネに教わってる」
「…メガネ?」
珍しく顔を上げた影山くんは、心底嫌そうに呟いた。
「あぁ、4組にいるだろ」
「ごめん、他クラスの人とかわかんないわ」
「そーか。」
「最近俺と影山がバカすぎて、イライラしてんだよなー。」
「あんなやつ別に怖くねーし」
ふん!とそっぽを向く影山くんに、つかさず「優しく教わった方がいいだろ!」と突っ込む日向は、はぁっとため息をついた。
「あー…なるほどね。」
分からなくもないけど、ここは心に留めておこう。
「いやー、ほんと助かった!谷地さん、町田さん土曜まで勉強教えてくれてありがとな!」
「アザッス。」
「うん、テスト頑張ろうね!」
小さな2人組みの会話をぼんやりと聞いていると、仁花の隣にもう1人並んだ。
「あの、お邪魔しました!」
「いーえ、この子たちが先生で大丈夫だったかしら?」
「はい!これでテストバッチリです!多分」
最後の最後に不安要素を残した日向に、私と仁花は顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。
「というか無駄にはしません!谷地さんの好意を!」
大真面目な顔でそういった日向に、びくりと肩を揺らした仁花と、ブツブツと好意の意味を語り出す影山くん。
うん、内容は合ってる。
「谷地さんも一緒に東京行こうね!」
まさに地雷。ぅおい!と焦ったのは私だけではなかったようで、それだけいうと元気に帰っていく日向に、残された仁花はチラチラとおばさんを見ながらも何も言わなかった。
「衣織、ゆっくりしてってね」
「はい、ありがとうございます。」
じゃね!と迎えに来た後輩?さんとおばさんは仕事に行ってしまった。
その背中を見送りながら、小さくため息をついた。
「まだ言ってなかったの?」
「う、うん…なかなか言えなくて」
「そっか。さて、今日は夕ご飯何にする?」
「うーん、オムライスがいいかなぁ」
「じゃ、あとで買い物行こうか。」
「うん!」