軍議(忠犬先生編)

※一部,続花丸ネタあり。バレンタインデーキスの後日談設定。


「同士よ,貴方にこれを。」

大量の油揚げが天井に吊されカラカラ回る部屋ーーーこんのすけの部屋である。政府から金を引っ張ってきてくれる頼もしいこんのすけのためにと,特別に用意された部屋だ。どうやら,今日の軍議の会場はここのようだ。こんのすけは,同士である長谷部に自身の顔がプリントされた仮面を手渡した。

「顔の上半分が隠れる面か?これは・・・」
「貴方を無敵にするお守り,その名も無敵仮面です。」
「無敵仮面だと!?しかし,俺には主から頂戴したお守りが・・・」

これだから長谷部は。と,加州は天を仰いでカラカラ回る油揚げを見た。こんのすけお気に入りのインテリアである。

(あの油揚げ,主が油抜きしてるんだっけ。油が飛び散るからそのまま干すなって言ってたな・・・。)

こんのすけは,皿に乗った3つの稲荷寿司を長谷部の目の前に置く。そして,恋のえー・びー・しーをご存知ですか。と尋ねた。長谷部は稲荷寿司を見てポカンとしたままだ。

「同士よ。恋にはえー・びー・しーというものがあるのです。先日,勇敢な貴方は“えー”を卒業しました。」

こんのすけは,一番隅に置かれた稲荷寿司を食べた。相変わらず,長谷部はポカンとしたままである。もしゃもしゃと稲荷寿司を食べたこんのすけは,残り2つのそれを指差した。

「残るは,びーとしーだけです。さて,ここからが問題です。」
「おい,同士!えーとかびーとか一体何なのだ!?ん?俺が極になったことと関係あるのだな!?」
「ちょっと待って。長谷部さ,本気で言ってるの?こんなの基本のき!いい加減してよ!」
「あーもう!情けなか!!」

全く要領を得ない長谷部に対し,苛立つ加州と博多。ボロクソに長谷部を非難し始めた。軍議は開始早々,場が荒れて大混乱だ。

「貴方色の着物に身を包んだ審神者様を腕に抱き,仮面越しに口吸いをしたでしょ?それが,えーです。本来なら唇と唇が直接触れあうのが口吸いですが,流石は新進気鋭の芸術家。前衛的な口吸いにワタクシ達は痺れましたよ?」
「ど,同士っ!!その話はやめてくれと何度も言ってるだろう!?あれは,体が勝手に!!」
「長谷部,それを手練手管っていうの!主はやっぱり生娘じゃないってこと!嵌めまくってるってこと!!」

斬るぞ!と顔を真っ赤にして怒り狂う長谷部。そうなのだ。大人気漫画家集団あるじの忠犬先生でもある彼は先日,バレンタインイベントのサイン会に訪れた己の主人と仮面越しにキスするという斜め上の行動を起こしたのだ。

「審神者様に関して“ねんね”の貴方は,仮面をつけると漢になるようですね。これは,同士がびーとしーを行うための仮面です。これを付けるだけで,無敵化した同士は,あの燭台切様も形無しの圧倒的夜感を身につけた漢になれるのですよ。」
「ちょっと待て!俺は何もするつもりはないぞ!貴様ら,主を不埒な目で見ているな!?」
「やれやれ。同士,審神者様へ高価な贈り物をしているそうじゃないですか。藤色の着物や香でしたっけ?」
「そーばい!“ねんね”のくせに金だけはあるばい!」

仮面越しのえーを済ませた長谷部は,己の主人と文通する約束をちゃっかり取り付け,文や高価な物を贈り続けている。平たく言うと,己の主人に貢いでいるのだ。

「着物を贈っておいて何もしないとは見下げた男ですね。審神者様は股を濡らしてお待ちのはずですよ?男が女に衣を贈るということは,“その衣を脱がせたい”という意味なのですから。脱がせるそれ即ち,濡れた股に・・・ね?」
「な!何だと!?俺は!俺はそんなつもりではっ・・!!」
「その言い訳,機動力2。長谷部ご自慢の機動力はどこに行っちゃったのかなー。あの日の長谷部は凄かったのになー。」
「どげんもこげんも無かろうが!揉めっ!!挿れろっ!!出せっ!!」

圧倒的機動力を誇る博多の熱い檄を食らい,長谷部は,顔を真っ赤にして手が白ばむほど拳を固く握りしめて俯いてしまう。こんのすけは,はあ。と溜息をついた後,皿の乗っている2つの稲荷寿司を指差した。

「もうおわかりですね?びーは愛撫,しーは性交です。びーとしーは実質1つ。『今日はびーだけ。しーはまた今度ね?』なんて野暮な事は言ってはいけません。あの審神者様の肉体という据え膳を前にして。」
「長谷部,何のために今まで勉強してきたの?主に伽を命じられても恥ずかしくないようにでしょ?俺,知ってるよ。長谷部が,動く春画を兵法書を読むように真剣に見てたの。主以外じゃ勃たないことも・・・」
「おいっ!!!!」

加州による無慈悲な暴露によって,顔を赤くしたり青くしたりと忙しい長谷部。しかし,悲しいかな。加州の暴露はもう皆にばれている事なのだ。事実,こんのすけも博多も全く驚いておらず,真顔で稲荷寿司を食べている。

「口元が出ていなければ,口淫もできないでしょう?この仮面は特別な霊気を纏っております。どんなに審神者を激しく揺さぶっても息苦しくなることもなければ,外れることもありません。審神者様の痴態も視界を遮られずに見ることができますよ。」
「こ・・う・・・・」
「え。長谷部って,何もしないでいきなり突っ込む派?長谷部のくせに?それって,通い婚全盛期の平安じじいのまぐわい方だよ!?愛がなさすぎて引くんだけど。拗らせるのも大概にしてよ・・・。」
「せんと!?それでも主お世話係ね!」

長谷部はしないと言ったわけではない。それにもかかわらず,またしても責め立てられてしまった。顔を真っ赤にして俯く主お世話係の見る影も無い残念な姿。こんのすけは,後足で首を掻くと長谷部に話しかけた。

「同士よ,避妊はしっかりしなさいね。」
「・・・?愛し合う者であれば,その・・・」

長谷部が話し終わる前に,こんのすけは態とらしくがっくりと頭を下げた。加州と博多に至っては,今にも斬り掛かりそうな迫力で長谷部を睨み付けている。

「はあー。本当に貴方は“ねんね”ですね。それは演出ですよ!婚姻もしないで懐妊した女子への世間の風当たりは,それはそれは厳しいものです。」

そう言うと,こんのすけと加州が息ピッタリの寸劇が始めた。

「紅爪の奧さん知ってます?あの審神者ったら,刀剣に中出しされてデキちゃったんですって!」
「あら狐の奥様!妖艶な女だと思ってはいたけど,やっぱりアッチも助平だったのね〜。どこの刀剣かご存知?」
「自分の本丸のへし切長谷部ですって。社畜のくせにやる事やってるのよ!徹夜だとか言って,本当は毎晩ヤリまくってただけなんじゃないかしら?へし切って,ムッツリっぽいし。」
「あの審神者のことだから,『私が教えてアゲル。長谷部,いっぱい中に出して良いのよ?』とか言って,馬乗りで腰振ったに違いないわよ!だってあの女,生娘のはずないもの!」
「あら嫌だわ〜。本当にへし切の子かしら?他の刀剣とも生でハメまくってるかも!助平な女ね〜」

いつまでも続きそうな寸劇。顔を真っ赤にして激怒する長谷部は抜刀寸前だ。

「ふざけるな!主を貶す輩は,俺が圧し斬るぞ!!あのお方は,毎晩お命を削って執務に邁進されているのだっ!!しかも,不特定多数の不純異性交遊などあるわけないだろうがっ!!!」
「圧倒的責任感で審神者様にお仕えするとご自分で言っていたではありませんか!今がその時ですよ,同士。」

一番薄い0.01みり買ったばい。と,博多が避妊具の箱を手渡した。長谷部は,それを無言で受け取りポケットにしまう。加州は,動く春画見たって付け方は出てこないからね。とまたしても神経を逆撫ですることを言った。こんのすけは,ずしりと長谷部の肩に乗ると彼の耳元に口を寄せた。

「最後にもう1つ。ワタクシから同士へ送る最も大事な助言です。審神者様を抱く前にはーーー1回ヌイてからお会いしなさいね。要らぬところで機動力を発揮したくはないでしょう?」
「・・・・・万屋へ・・新作の・・打ち合わせに・・行ってくる・・・」
「長谷部!俺達に『合体成功!』って言わせてよね!?」
「吸えっ!!揉めっ!!舐めろっ!!付けろっ!!挿れろっ!!出せっ!!外せっ!!」

顔面蒼白の長谷部は,こんのすけに渡された無敵仮面を持ってよろよろと出て行った。それを見送る加州が大きな溜息をつく。檄を飛ばしまくった博多は顔をげっそりさせている。

「長谷部は大丈夫なの?検非違使みたいな主相手に無事で済むわけないじゃん!練度低すぎて話にならないよ!」
「ばり心配ばい・・・。主に破壊されると?」
「大丈夫。同士の無敵ぱわーを信じましょう。彼ならできますよ。さあ,新たなる伝説の幕開けです。」



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