ヤマトくんに甘やかされたい2



「ただいまー」
疲れが滲んだ、まのびした声が響いた。
「あー帰ってきた!ヤマトー!」
聞きつけたガブモンが彼を呼ぶ。
しばらくして、ドアの向こうから先に帰ってきていたヤマトくんが笑顔を見せた。
「おかえり、なまえさん」
「ただいま」
ご飯ありますよ、とキッチンからやってきた彼に「さすがー!」と返事をしてパンプスを脱ぐ。
「ごめんね、最近作れなくて」
「全然。俺が先に帰って来たんで」
大学生のヤマトくんと、パートナーのガブモン、そして社会人の私。
生活リズムが違う時もあるけど、いい関係が築けていると思う。
「いい匂い、」
「今日はオムライスだよ!デミグラスソースがかかったやつ」
嬉しそうに教えてくれるガブモンに「ほんと?最高だね」と答えて頭を撫でる。
「へへ・・・食べ終わったら何して遊ぶ?」
その言葉に、私は持ち帰りの仕事があることを思い出して軽くへこんだ。
「ちょっとだけお仕事しなきゃ」
「仕事?なんで?会社でしてきたんでしょ?」
ガブモン、とヤマトくんはさとすように言った。
「ぜんぶ終わって、元気があったら遊ぼうな」
「ん、分かった」
「よし。じゃ、皿をテーブルに運んでくれるか?」
「うん!ごっはん、ごっはん」
軽く歌いながら機嫌よく手伝いをするガブモンの背中を眺めていると、「なまえさん」とヤマトくんが呼んだ。
「お疲れ。仕事、忙しいのか?」
「ちょっとだけ。でも大丈夫」
これくらいでひいひい言っていたら繁忙期なんて乗りきれない。
初めての波じゃないんだからしっかりしないと。
「・・・ヤマトくん?」
「えらいっすね、なまえさんは」
あやすような手に触れて、なぜだか泣きたくなる。
「・・・ほんとはちょっと疲れた」
「うん」
抱き寄せる腕にされるがまま身を預けた。
「いつもすげえ頑張ってる。でも、俺には弱いとこ見せてもいいから」
年下だし頼りねえかもしれないけど、そう言う彼を「そんなことない」と見上げる。
「私、いつもたくさんヤマトくんに助けてもらってる。年上なのに頼りないのは私のほう」
「俺はかまわないんだけどな。今みたいな時のなまえさんも可愛いし。その、」
彼は「いつでも支えになりたいって思ってる」と言った。
「もう、いっぱい支えてもらってるよ・・・」
「ならもっと。俺、けっこうよくばりなんで」
重なるまなざしがこんなにも愛しい。
唇が触れ合う瞬間、
「ヤマトー終わったよ!・・・あ」
ガブモンはごめん、と呟いた。
「いや!あの!こっちこそごめんね!」
食べよ、とわざとらしく手を鳴らせばヤマトくんはおかしそうに笑う。
「そうだな、冷める前に食べるか」
続きはまた後でな、そうささやく声に思わずしゃがみこんだ。


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