パートA
ダンプに跳ねられてくそニートな天パ野郎と身体が入れ替わってから早二日。
未だに戻る術は見つからず、くそニートな天パ野郎のまま生活して早二日。もう一回言う、二日だ。
「ったく、冗談じゃねーぞ」
一刻も早く自分の身体に戻って屯所に帰りてえ。だって彼処にはあいつが
「ぎ、ぎんちゃああああん!!」
キャスター付きの椅子に座りながら煙管を噴かしていると聞き慣れた声がしてスパーンと居間の扉が開かれる音がした。アルアル娘でもメガネでもない。そこにいたのは、…なまえだった。
「な、おまえ、なななんでここに…」
なまえは真撰組の唯一の女隊士であり、副長補佐であり、俺の…
「聞いてよ銀ちゃん!」
「おま、くそ天パと仲良かったのか…?」
「は?何言ってんの?くそニートで天パでマダオなのは銀ちゃんでしょ。ついに自虐ネタ?」
「いや、俺そこまで言ってねえよ」
「まあいいや、それより話聞いてよってば!」
そう言ってソファーに踏ん反り返りながら座るなまえ。
俺の前ではいつも冷静沈着、しっかり仕事はこなすし口答えなんかされた事もない。そんななまえが万事屋の前ではこんな態度をとっていたなんて正直意外でしかなかった。そしてこんな姿を曝け出せる仲だったことも。
…なんか胸の辺りがざわざわして落ち着かねえ。
「実は最近土方さんの様子がね、変なの…」
「あ?変?俺の様子が?」
「銀ちゃんじゃなくて土方さんだよ!」
「あ、ああ…」
そういや今は俺が万事屋なんだ、くそ、マジややこしい。
「な、なんていうかさ…その、最近いつもの土方さんじゃないっていうか…スキンシップがやに多いっていうか…」
「スキンシップだあ!?」
「銀ちゃん声でかいよ」
俺の身体で何やらかしてくれてんのあのくそエロニート天パああああ!
「酔った勢いで太ももとか触ってくるし、この前は着替え中にわざと部屋入ってきて。今までこんなことなかったんだけど」
太もも…まだ俺だって触ったことねえぞ。
「………あいつ、マジ殺す」
「どうしちゃったんですかって聞いたら、ただの嫌がらせって言われて…」
「…………」
「私、嫌われちゃったのかなあ」
…違う。それ多分俺への嫌がらせ。
あいつ、俺の気持ちに気づいてやがる。その上であえてなまえにちょっかいだしてる。元に戻った暁にはあの腐った毛根から毛を一本一本毟り取ってやる。
「私は、前の土方さんに早く戻ってほしい」
「…あ?」
「堅物でくそ真面目でマヨラーで、」
…おまえ、口答えしないと思ってたら中でそんなこと思ってたの俺の事。
「…だけど、いつも仕事には一切手を抜かない。真っ直ぐなあの背中を私はいつも追いかけてた」
そう言って頬を染めながら少し切なげに目を細めたなまえに、ドキリと心臓が跳ね上がる。
「…なまえ」
「なのに急にただの変態上司になるし目は死んでるし局中法度はめっちゃくちゃだし!!!」
「なまえ」
椅子から立ち上がり一歩ずつなまえとの距離を詰める。
名前を呼ばれきょとんとした表情で俺を見上げるなまえの頬にそっと手を添えた。
「俺も、いつも隣で支えてくれるお前の姿を、ずっと見てた」
「……え?」
俺が風呂入ってる隙に溜まった書類をばれぬよう片付けてくれてた事も。
徹夜で慣れない裁縫道具で破れた隊服を縫ってくれてたことも。全部知ってんだよ。不器用に優しいお前を俺はずっと、
「それって、モンハンの話?」
「は?モンハン?」
「いや、銀ちゃん下手くそだからさあ、いつも隣で支えてあげてんじゃん私」
「……………」
「銀ちゃんオフ会で会った時から全然上手くならないよね!ゲーム」
そう言ってケラケラ笑いながら「今日もやる?」っとPSPを取り出したなまえ。おい、土方さんの話は何処へいった。そしてモンハンのオフ会で出会ったんかいこいつら。そして
「あれ、銀ちゃんどこ行くん?」
「ちょっと、自分の身体取り戻してくるわ」
「は…?」
なんかもう、一刻も早く戻らないとダメな気がする。
露草
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