腕を引かれながら土方さんに連れてこられたのは副長室、つまりは彼の部屋。
部屋につくなりなんなり私はすぐさま壁に追いやられ逃げ場を失った。

「ひじかっ……!」

名前を呼ぼうと口を開いた瞬間、元々近かった土方さんの顔が更に近づいてきて、距離がなくなった。
いつぶりだろう、土方さんとキスするのは。
開いた唇の隙間から土方さんがすかさず舌を滑り込ませる。その舌から逃げようとする私の舌を、楽しむように土方さんはねっとり絡めてまるで遊んでいるようだった。
ただ薄っすら瞼を開けば彼の怒りに満ちた瞳と目が合って背中の辺りがぞわりとする。

「…んぅっ、ひっじか、」

そろそろ息が苦しくなってきて私は土方さんの背中に腕を回して何度か叩いた。
すると最後に舌を吸われた後、名残惜しそうに唇は離された。もう立っているのがやっとの状態で膝から崩れ落ちそうになる私を土方さんの腕が支えてくれる。

「体力ねえなお前」

「そ、そういう問題じゃないと思いますけど…」

「総悟となにやってたんだよ」

「え?」

「なんで抱き合って、キスしようとしてた?」

「……わかりませんよ、私にだって」

突然抱きしめられて、もれなくキスされそうになって。今だって沖田くんの行動は理解できない。ほんといい性格してると思うよあの子は。

「それに土方さんに、そんな言い方されたくないです」

嫌味たっぷりにそう言って視線を反らせば土方さんはため息混じりに「おまえなぁ」っと呟く。
我ながら可愛くないのはわかってる。けどこのまま私だけ攻められるのは癪だから、そう簡単に折れてはあげない。

「俺は浮気なんざした覚えはねえよ」

「でもシャツについてたじゃないですか、キスマーク」

「…………」

土方さんが黙った。できればこの状態で黙ってはほしくなかった。
きっと今の私はひどい顔してる、こんな表情土方さんには見られたくて俯いた。

「………悪かったよ」

「謝るってことは、認めるんですか?」

「違えよ。キスマークの事は俺はなんも記憶にねぇしつけた覚えもねぇ。何度も言うが俺ァ浮気した覚えもねェ」

「…………」

「けど、普段からなまえの優しさにかまけて構ってやれてなかったろ。俺」

不安にさせて悪かった。と言って土方さんは私を抱き寄せた。
いつぶりだろう、土方さんにこんな風に抱きしめられるの。
ずっと求めてた、この温もりを。再び感じられただけで幸せを感じてしまう私はつくづく単純なのかもしれない。沖田くんにだってまた笑われちゃうかも。

「これからはもっと我儘言え。全部叶えてやれるかはわからねえけど。…だからお前も、もう総悟とあんなことすんな」

「土方さんは、私と沖田くんが抱き合ってるの見て嫌でしたか?」

「ああ?ンもん聞かなくてもわかるだろ」

「言葉にしてほしいです。…早速、わがまま聞いてください」

ちょっとずるい言い方だけど。土方さんを見上げて言葉を待つ。
もう一度奪うようにキスされて、唇を話したあと耳元で「ンな当たり前のこと聞くんじゃねーよ」と蚊の鳴くような声がした。

土方さんの香りに混じってほんのり煙草の匂いがする。
すこし苦いのになんだかとても安心する匂いだった。




後日、上機嫌で洗濯物を干す私の元に再び奴がやってきた。

「土方の野郎とは仲直りできやしたか?なまえさん」

「…おかげさまで。なんだかんだ沖田くんのおかげだよ、ありがとう」

「そりゃあよかった。まっ喧嘩の原因を作ったのも俺だしねィ仲裁役にでもなってやんねーとって思って」

え、それってどういう?

「土方のシャツにキスマークつけたの俺でさァ」

そういって目の前の沖田くん、もといクソガキはニヤリと笑った。

露草

もどる