上京した時から長らく住んでたアパートを引き払い、本当に銀さん達と一緒に住む事になった。
女中として働いていた真選組のバイトも先月で辞めたが、万事屋の仕事は未だに野良猫探ししか連れてってもらえていない。
急激に変わった生活環境に、身体よりもまだ心がついて行ってない部分がある。
幸せだし、嬉しい。なのに時々、漠然と不安になる事があるのだ。

銀さんは、私のどこをそんなに好いてくれたんだろう…なんて。


「もう旦那と上手く行ってないんですかィ?そりゃいいや」

「いや、上手くいってなくはないんだよ?というかいいやってどういう意味」

「言葉の通りでさァ」


憎たらしく机に頬杖をつきながら向かいで団子を頬張る沖田さん。今日はサボりではなく、本当に非番らしい。
隊服ではなく私服の袴姿で、なんだか新鮮だ。

今日は銀さん達は仕事で、私は家でお留守番。
行っても足手纏いになるだけだから、行きたいとごねることもできず、かといってやるせ無い気持ちで大人しく待ってる事もできず、気分転換に外に出た。
たまたま町で会った沖田さんが「久々に飯でも行きやせんか」と誘ってくれて、今に至る。

沖田さんとは年も近いし、わりと話しやすい。バイト中もよく世間話したし。
相談相手にするには…ちょっと一言多いけど。


「上手くいってる女が「私の魅力ってなんだと思う?」なんて普通他所の男に聞かねーですぜ」

「え、そうなの?」

「まあ恋愛経験も貧しくて、ついでに胸も尻も貧しい素朴な所が魅力なんじゃねぇですかィ?」

「待って、それ全然褒めてない!」


やっぱり沖田さんに余計な事言わなきゃよかった。
今更後悔しても後の祭り、とほほと肩を落としながらお団子を齧る。

上手くいってないわけじゃない。寧ろ一緒に住んで前よりうんと距離は縮まったと思う。
二人きりの時間も増えし、何より毎日一緒にいられるのが嬉しい。けど、だからこそ。銀さんと長く一緒にいればいるほど、銀さんを知れば知るほど、銀さんはどうして私を選んでくれたんだろうとか、本当に私でいいのかなとか、昔は考えなかったいらない悩みが沢山増えた。

銀さんが仕事で家を出て行くその後ろ姿を見るたびに、今の生活は自分には相応しくない気がしてしまうのだ。


「まあ旦那が嫌になったらいつでもこっち戻って来れるように俺が交渉しといてやりまさァ」

「ありがとう、けど私…銀さんのこと絶対嫌にならない。というかなれない、その自信だけはある」


沖田さんの言う通り、恋愛経験が貧しいからなのか。好きだからこそ苦しい、なんて感情があるとは初めて知った。


「なまえさんは俺がどんなに口説いても昔っから旦那の事しか見てねーし。まァ、そこが魅力つー事でいいんじゃないですかィ?」

「え。…口説いてた?」

「少なくとも、その間抜けズラがS心に刺さるつートコだけ旦那の気持ちがわかりまさァ。じゃ、せいぜいお幸せに」


そう言って残っていた団子を一気に平らげると、財布から取り出した二人分のお金を机に置いて、沖田さんはひらひら手を振り去って行った。

普段の性格のせいで冗談か本気かわからないけど、沖田さんなりに励ましてくれたと捉えてそれ以上考えるのはやめよう。余計に頭がこんがらがってしまうから。


露草

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