深夜、もぞもぞと何かが動いて目が覚めた。
毛布を剥いで今日も確認作業を行えば私の隣で気持ち良さそうに…というか凄いいびきをかいて寝ているそいつに、またかとため息をつく間も無く躊躇なくベッドから蹴り落とす。
それでも起きない事に最早驚きもしないまま、何事もなかったように再び私は毛布を被り、眠りについたのであった。
「ちょっとなまえ、また俺のこと蹴り落としたでしょ」
「君が勝手に人のベッド入ってくるからでしょーが」
「だってソファーで寝ると身体痛くなるんだもん」
「じゃ今日からはあそこ使っていいよ」
そう言って飼っている猫(タマ)の高級ふわふわベッドを指させば朝食の目玉焼きを奪われた。
炊飯器いっぱいに炊いたご飯はすでに空だし、ほんと食費代のことを一切考えてないなこいつは。私はライオンでも飼ってるんか。
「第一猫がベッドあって人間がソファーっておかしくない?」
「居候の分際で何を言うか」
宿なしよりマシでしょ?っと勝ち誇った笑みを浮かべ空になった食器を片付ける。
椅子にもたれながら不満気な声を上げる居候兼金食い虫の揺れる三つ編みを、タマが爪を立てて遊んでいたが全部見なかったことにしてそそくさスーツに袖を通した。
血まみれで夜道に倒れていた奴を拾って早うん週間。
目を覚ましてからお腹が空いたって言うからご飯をあげたの機に出て行かなくなってしまった。
最初は私のいうことを割と…多少、いやほんのちょっとは聞いていたはずの奴だが最近では日に日に態度が大きくなってきている。
あの日助けたのは正解だったのか、もしかしたら私は人生の重要な選択肢を間違えたような気がしてきた。
「ねえ、なまえ」
「なに」
「今日は一緒に寝ようよ」
お風呂から上がって化粧水を塗っているとき、クッションを抱えながらしおらしい雰囲気で部屋に奴がやってきた。
いつも勝手に潜り込んでくることはあってもこうして直接頼まれるのは初めてで、素直にこわいです。
「人をゴキブリみたいに言うなあ」
「変わんないでしょ。なんかあったの?」
「昼間ネトフリでホラー映画観たから怖い」
「ダウト。君はホラー映画に震えるタイプじゃ絶っ対ない」
というか私からしたら何考えてるかわからない君の笑顔の方がよっぽど怖い。躊躇なく人殴りそうと言ったら「あながち間違いじゃないよ」と相変わらずの爽やかスマイルで返ってきて背筋が凍った。嘘でも否定してほしかったそこは。
「で、ほんとの理由は」
「背中いーたーいー」
「だから今朝タマのベッド使っていいよって言ったじゃん」
「あれ本気だったの?」
「キミと違って嘘つかないから」
「手厳しいなあ」
そう言って口を尖らせながら方向転換した奴に諦めたか、と肩の力を向いた瞬間…ドレッサーの鏡越しに助走をつけて勢いよく私のベッドにダイブする姿が見えた。
「おやすみ…」
「っちょっと待ってよ!もう、ほんとーに何やってんの君は!」
「いいじゃん、たまには俺もここで寝かせてよケチ」
「男女が同じベッドで寝るのは流石にまずいでしょって話」
「俺を男としてみてるってこと?」
「性別上はね?男か女で言ったら君は男だから…って聞いてる?」
嘘、寝てるじゃん。早くない?というかこの状況でこの速度で寝れる?いびきかいてるし。
無理に起こしても蹴られそうだし、仕方がなくその日は私がソファーで寝た。背中が痛くてあんまり寝た気がしなかった。
露草
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