旅館を出た頃には空は茜色に染まってた。
行きと同じように並んで歩くけど、沖田隊長の顔がまともに見れなくてぎこちない動きになってしまう。



「よかったじゃねーか。これであんな野朗と結婚しなくて済んだろィ」


けど、隊長はすっかりいつも通りで意識してるこっちが余計に恥ずかしかった。


「あ、ありがとうございました…全部隊長のおかげです。あんな事まで言わせてしまって、すいませんでした」

「つーか好きなとこ一個も出てこねぇとはどーいう了見でィ。顔でもよかったんですぜェあの場合」

「最後までそれですか」


あの時は咄嗟の事で出なかったけど、今なら一個くらいいえるかな…なんて死んでも口には出さないけれど。


「ま、謝礼は期待してまさァ」

「じゃあ一週間団子奢りますよ」

「足りねェ」

「じゃ、じゃあそれとですね…」

「俺がほしいもの、当ててみなせェ。わからねェとは言わせやせんぜ」


突然足を止めた隊長に顔を覗き込まれ思わず一歩後ずさる。
いつもみたいに揶揄ってる、というよりかは射貫くような瞳と目が合って、言葉を口にするより先に唇を塞がれた。


「なっ、たっ隊長っ」

「なんでさァ」


唇を離した後も何食わぬ顔してじっとこちらを見つめてくる隊長にさっきの料亭での台詞はもしかして、なんて考えてしまう。
でもそれをすぐに聞くことが出来ずにいると隊長は全て見透かしたように口を開いた。


「それくらい自分で考えなせェ」


ばーかと舌を見せた後、背を向けて颯爽と歩き出した沖田隊長の後を戸惑いながら追いかける。

真撰組に勤めて、補佐になって早二年。

これからも隊長に翻弄される日々は続く。

露草

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