まーてまてまて稀血ィィィ!
こ、来ないでください!殺さないで!
そう言うわけにはいかねぇんだよ。


「ぃいやぁぁーっ!」

悲鳴を上げ、勢いよく布団から上半身を起こした●は慌てて辺りをぐるぐる見渡す。

鬼っ…鬼はっ……?

ハァハァと荒い息が出る。額にはじわりと汗が滲んでいた。昨日私は鬼に追われて、それで川に……落ちて……生きてる……!
あれっ?ここはっ!……私の…部屋……?

「むう。随分と大きな寝言だな、●!」

聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこには隣に寝転がりながら頬杖をつく煉獄の姿があった。

「煉獄様…!お、お帰りなさいませ!すみません大きな声…」

あれっ、なんで煉獄様が私の自室で寝て…?あ、まだ夢の中なのか……も…

布団で横になっている煉獄の身体には布が無かった。布団に隠れている下は確認出来ないが、服を着ていないように見える。

そんなはずは無いと●は両眼をごしごし擦る。煉獄はハハハと悪戯っぽく笑う。

「なんともいい眺めだ!」
「そ、そうでしょうか…?」

この殺風景な私の自室のどこが?と不思議に思いながらも煉獄の笑顔につられ、自室を見られた恥ずかしさもあって、はにかんだようにニコリと笑った。

●は背中にヒヤリとした空気を感じ、着物の襟を正そうとするが襟が見当たらない。不思議に思い自身の体を見やると着物を着ておらず、布団から出ている胸と背中が露わになった状態だった。

「え!!えぇっ!?な、な、なんっ」

●は急いで下半身を隠していた布団を手繰り寄せ、顔と身体を隠した。耳まで真っ赤になった●は布団の中で縮こまる。煉獄の顔がまともに見られない。


「ハハハ!そう恥ずかしがらなくてもいいだろう!一夜を共にした仲だ」

そういうと煉獄は恥ずかしげもなく起き上がり、隊服を身につけていく。

えっ?一夜を共に?煉獄様と私が…!?
ま…全く記憶にないのだけれど…でもお互い裸で寝ていたということは………

昨日起こったかも知れない出来事を想像して、●の身体は火照り、変な汗が出てきた。


出られない…布団から出られない…恥ずかしすぎて……でも苦しくなってきた…着物は…着物はどこだろう…

「れ、煉獄様…」
「なんだ?」
「あの…失礼ですが少し目を伏せて頂けませんか……あの着物を着る間だけ…お願いします…」
「むう。分かった!」

●は布団からこそっと赤い顔を出して煉獄を覗き見た。顔はこちらを向いているが確かに目を瞑ってくれている。安心した●は、布団を胸に当てながら部屋の隅にある箪笥の方へそろそろと移動した。1番上にあった着物を適当に引っ張り出し、布団を床へ落として着物を着ようとすると、覚えの無い包帯が足に巻かれていた。

夢の中で転んで打ち付けた場所だ…あの夢は本物だったんだ……。ジンジンと痛むけどしっかり手当てがされている。一体誰が……。

そんな事を考えながら着物を羽織り、帯を絞めた。『もう大丈夫です』とお礼を言おうと煉獄を振り返ると、真っ赤な双眼が●をじっと見ていた。煉獄と目が合い、●は固まり顔は一気に赤く熱くなった。

えっ?目…閉じて無い……!い、いつから?いつから?いつから?ふ、布団で隠してない間…見られて……!?



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2021.10.31確認
※次話はr18です。長いです。

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