「お前さあ」
おもむろに、隣を歩いていた十代が口を開いた。
「なに?」
そう返すと、十代はいつもはなかなか見せることのない少し困った表情で、でもデュエル中に見せるあの吸い込まれそうな強い意志を持った茶色の瞳を私に向けながら話を続けた。
「好きなやつとかいんの?」
心臓が跳ねたかのような感覚に陥った。だって、いま、まさに、その好きな人、というのは、私の横でその質問をしている十代だからだ。
初めて十代のデュエルを見た時から水面に反射する光のようなキラキラとした笑顔の十代が頭から離れなかった。でもその時はまだ楽しそうにデュエルする面白い子だなあ、なんて認識だった。
ある日授業の演習でくじ引きの相手とデュエルすることになって、私の相手が十代だったから、クロノス先生を倒した相手に私なんかじゃ太刀打ちできないなあ、なんて思ってた。まあ、当たり前に負けちゃったんだけど。でも十代は お前とのデュエルすっげー楽しかった!またやろうぜ!ガッチャ ってお得意の決めゼリフと決めポーズを私に向けた。私も楽しかったよ、またデュエルしようね、なんて返したけど、 また なんてあるわけないと思ってた。でもなぜか分からないけどそれから十代はわたしを見つける度によく声をかけてくるようになった。
気がついたらいつの間にか一緒に行動するようになっていた。最初は「遊城くん」「名字」だったのが「十代」「名前」に変わって、私の日常に十代がいることが当たり前になっていった。そして最近ようやく私は十代のことが好きなんだって自覚したばっかりなのに。まさか、バレたの?あのデュエルとエビフライのことしか頭にないような男に?一抹の不安が私を襲う。
「な、なんで急にそんなこと聞くの?」
努めて冷静にいつものような返答を心がけながら、絶賛引き攣っている頬を無理矢理にでもあげ、きっとぎこちない笑顔になっているであろう表情で返事をした。
「なんか翔から、いつも一緒にいるっすけど名前さんに彼氏できたらアニキどうするんすか?って言われてよ」
「うん」
「それがどうした?一緒にいるだろって言ったらあいつ、アニキはデリカシーってものがないっす!なんて言い出しやがって」
「まあでも十代ってデリカシーない所あるよね!」
「名前まで言うのかよ」
十代がそっぽを向いてちょっと拗ねた。可愛いなあ。
でも安心した、バレたわけじゃなかったし無事にいつものようなやりとりができるくらいに平静を装うことができてる。
「ごめんね?」
笑いながらそう返すと、いつものように十代は、ぜってー許さねえ!なんて言いながら結局許してくれるんだろうなあ、なんて考えていた。すると、
「でもさ」
いつもと反応が違う。こんなに真面目な表情の十代なんて見たことない。
「実際にお前に彼氏ができて俺と一緒にいなくなった時のこと考えたら、なんか知らねえけど胸が痛くなって、いないはずのお前の彼氏のこと恨んだんだ。なんで名前をとるんだ、って」
「うん」
「でもよ、お前に好きな人がいるって考えた時も同じくらい胸が痛くて、なんで俺じゃないんだよって思った。俺さあ、恋愛のこととかよく分かんねえけど、多分この気持ちってお前のことが好きなんだと思う」
真っ直ぐな気持ちの篭もった言葉だった。
私も十代のこと好きだよ
そう返したらあなたはどんな反応をするんだろう。数秒後の未来が楽しみになった。