0.





『―――ぃ…』

あの時から、

『零、』

僕の気持ちは何も変わってない。

『―――ごめんね、』

アイツの笑顔はいくらでも思い出せる。けど。


『                               』


あの時のアイツの表情が
今でも頭から離れない。












「―――っ…!」


叫んで呼び止めようとした声は声にならず、
消えそうになるアイツを掴もうと伸ばした手は空を切った。

心臓に悪いそんな夢から飛び起きるように目を覚ました僕の目の前には、昨日となんら変わりない自室が映る。
なんていう夢を見るんだ。
あれからもう、何年経っていると思ってるんだ。
会わなくなってからもしばらく経っている。

そっと息を吐いて、汗で少し湿った前髪をかきあげる。
アラームよりも随分早く起きてしまったようで、バイトの時間までしばらくある。
シャワーでも浴びるかとベッドから抜け出した途端、携帯が着信を告げた。
こんな早朝から電話を掛けてくるなんて、緊急の事態が起こったか、非常識な奴のどちらかだろうと思ったが、ディスプレイに表示された名前を見て後者だとわかり、溜め息を吐く。
嫌々ながらも通話を押せば、朝から聞きたくもない女の声が耳元から聞こえてきた。

『Hi,Bourbon.』
「なんです、こんな早朝から。―――ベルモット」
『あら、起こしたかしら?』
「いえ、少し前から起きてましたけどね…」
『…にしては、随分疲れてるみたいじゃない。』
「…少し夢見が悪かっただけですよ。」

そう呟いた声に、電話越しの女が笑う。
朝から耳障りな声だと内心悪態をついた。

「そんなことより、なんの用事ですか。」
『そうそう。今夜は空けておいてちょうだい。』
「…わかりましたよ。」
『あら、随分素直じゃない?』
「どうせ強制でしょうし、何を言っても仕方ないですからね。
それよりもういいですか。バイトの支度をするので。」

そう切り出し、半ば無理矢理通話を切る。
今夜…か。経過報告と新たに任務、というところだろうか。
気を引き締めていかないと。

カーテンを開ければ、太陽が漸く少し顔を出したところだった。
こんな朝からとんでもない一日になりそうな予感に、また一つ溜め息を吐いた。











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