1.
「…よし。毛利さーん!終わりましたよー!」
「おぉ!わざわざすみませんなぁ名前さん!」
「いえいえ、お易い御用ですよ。」
米花町の一角に佇む『毛利探偵事務所』。
ここの主である毛利さん御一家に出逢ったのはほんの数日前。
仕事で訪れていたマンションで起こった事件の容疑者の1人にされ、取り調べやらなんやらに巻き込まれた私。その事件を見事解決したのが、あの有名な『眠りの小五郎』こと、この毛利小五郎さん。
帰り際に、無実を証明してもらった御礼と言ってはなんだが、セキュリティ関係やパソコン関係等でお困りのことがあれば、と差し出した名刺。プログラマーのような、何でも屋みたいな仕事をしているので、無料でお伺いしますよ、と告げてから数日後の今朝。
登録したばかりの電話番号からの着信を取ると、パソコンのセキュリティのことでと聞き、今に至る。
「セキュリティソフト入れておきました。あまり重くないけどセキュリティ性に優れているものを入れたので、快適に使えると思いますよ。」
「いやーこんな美人な方が博識で、こんなことまで出来るとは!さすがですなぁ!」
「そんな、大袈裟ですよ。」
「お父さんったら…。」
お茶を持ってきてくれたしっかり者の娘の蘭ちゃんが、私を煽てまくる毛利さんを呆れたように見た。
あともう1人、毛利さんと一緒にいたコナンくんという小さな男の子は、今は出掛けているらしい。
小学校1年生らしいというその子が、今回の話のきっかけになった、毛利探偵事務所のホームページを作ったと聞いたときは驚愕したが。
数日前の事件現場でも、物知りな子だなとは思ったが…何者なんだ彼は。
「でも、本当にいいんですか?タダでやっていただくなんて。」
「もちろん!私が作ったソフトですし、この間の御礼なんで、気にしないでください。」
「でも…」
「おお!そうだ!これから一緒に食事でもいかがです。御礼に奢らせてください!」
「え?」
「そうね、もうすぐコナンくんも帰ってくるし。
ポアロでお昼ご一緒しませんか?」
「ポアロ…?あ、下にあったカフェ?」
「そうです!カフェなんですけどご飯もおいしいんですよ!」
「へー!」
カフェでランチなんてオシャレだなぁ、なんて呑気に考えていたら、ドアの開く音がした。
「ただいまー」
「おかえりコナンくん!ちょうどよかったわ。」
「おかえりなさい。」
「あれ?名前さん?」
「お邪魔してます。」
「お父さんがね、ホームページも作ったことだし、セキュリティちゃんとしといた方がいいんじゃないかーって言って来てもらったのよ。」
「そうなんだ。」
「それでね、今からポアロでお昼にしようと思うんだけど、コナンくんも行くでしょ?」
「うん!」
「でも…いいんですか?お昼までお邪魔してしまって。」
「いいんですよ。なんなら2人きりでも…」
「もう、お父さん!」
「じゃあ…ご一緒させていただきます!」
無料で、と言っておいて、まさかお昼を奢っていただくなんて思わなかったけれど、ご好意に甘えてしまおうと思うほど、私のお腹の虫は今にも鳴きそうになっていた。
作業してたらあっという間に時間が経っていたようで、時計の針は12時を回っていた。
「いらっしゃいませ、毛利さん。」
「よぉ、梓ちゃん。」
「こんにちは、梓さん。」
階段を降りてすぐ。毛利探偵事務所の真下にあるカフェ、ポアロ。
私は毛利さん御一家について入り口へと足を踏み入れた。
「お?今日あいつはどうした。」
「安室さんですか?今は休憩中で…あら?
いらっしゃいませ。毛利さんのお客さんですか?」
「いや、客ではないんだ。」
「あ、初めまして。苗字…」
「いらっしゃいませ、毛利さん。」
目の前にいる梓さんと呼ばれた店員さんの後ろの方から聞こえた明るい声に、名乗ろうとした私の声は遮られた。
その、聞き覚えのある声に。
「安室さん、こんにちは。」
「こんにちは。」
「こんにちは、蘭さん、コナンくん。」
聞き覚えのある声の主は"安室"と呼ばれ、人違いかと少し安堵する。しかしこんなに似ている声なんて、どんな人なんだろうと覗き込んだのが間違いだった。いや、私が覗き込まなくても、彼はこちらに向かってきていたから時間の問題だったのだ。
目が合ってほんの一瞬、わかるかわからないかくらいに目を少しだけ見開いた彼は、名前が違うその人は、紛れもなく、
私の元恋人だった。
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「…よし。毛利さーん!終わりましたよー!」
「おぉ!わざわざすみませんなぁ名前さん!」
「いえいえ、お易い御用ですよ。」
米花町の一角に佇む『毛利探偵事務所』。
ここの主である毛利さん御一家に出逢ったのはほんの数日前。
仕事で訪れていたマンションで起こった事件の容疑者の1人にされ、取り調べやらなんやらに巻き込まれた私。その事件を見事解決したのが、あの有名な『眠りの小五郎』こと、この毛利小五郎さん。
帰り際に、無実を証明してもらった御礼と言ってはなんだが、セキュリティ関係やパソコン関係等でお困りのことがあれば、と差し出した名刺。プログラマーのような、何でも屋みたいな仕事をしているので、無料でお伺いしますよ、と告げてから数日後の今朝。
登録したばかりの電話番号からの着信を取ると、パソコンのセキュリティのことでと聞き、今に至る。
「セキュリティソフト入れておきました。あまり重くないけどセキュリティ性に優れているものを入れたので、快適に使えると思いますよ。」
「いやーこんな美人な方が博識で、こんなことまで出来るとは!さすがですなぁ!」
「そんな、大袈裟ですよ。」
「お父さんったら…。」
お茶を持ってきてくれたしっかり者の娘の蘭ちゃんが、私を煽てまくる毛利さんを呆れたように見た。
あともう1人、毛利さんと一緒にいたコナンくんという小さな男の子は、今は出掛けているらしい。
小学校1年生らしいというその子が、今回の話のきっかけになった、毛利探偵事務所のホームページを作ったと聞いたときは驚愕したが。
数日前の事件現場でも、物知りな子だなとは思ったが…何者なんだ彼は。
「でも、本当にいいんですか?タダでやっていただくなんて。」
「もちろん!私が作ったソフトですし、この間の御礼なんで、気にしないでください。」
「でも…」
「おお!そうだ!これから一緒に食事でもいかがです。御礼に奢らせてください!」
「え?」
「そうね、もうすぐコナンくんも帰ってくるし。
ポアロでお昼ご一緒しませんか?」
「ポアロ…?あ、下にあったカフェ?」
「そうです!カフェなんですけどご飯もおいしいんですよ!」
「へー!」
カフェでランチなんてオシャレだなぁ、なんて呑気に考えていたら、ドアの開く音がした。
「ただいまー」
「おかえりコナンくん!ちょうどよかったわ。」
「おかえりなさい。」
「あれ?名前さん?」
「お邪魔してます。」
「お父さんがね、ホームページも作ったことだし、セキュリティちゃんとしといた方がいいんじゃないかーって言って来てもらったのよ。」
「そうなんだ。」
「それでね、今からポアロでお昼にしようと思うんだけど、コナンくんも行くでしょ?」
「うん!」
「でも…いいんですか?お昼までお邪魔してしまって。」
「いいんですよ。なんなら2人きりでも…」
「もう、お父さん!」
「じゃあ…ご一緒させていただきます!」
無料で、と言っておいて、まさかお昼を奢っていただくなんて思わなかったけれど、ご好意に甘えてしまおうと思うほど、私のお腹の虫は今にも鳴きそうになっていた。
作業してたらあっという間に時間が経っていたようで、時計の針は12時を回っていた。
「いらっしゃいませ、毛利さん。」
「よぉ、梓ちゃん。」
「こんにちは、梓さん。」
階段を降りてすぐ。毛利探偵事務所の真下にあるカフェ、ポアロ。
私は毛利さん御一家について入り口へと足を踏み入れた。
「お?今日あいつはどうした。」
「安室さんですか?今は休憩中で…あら?
いらっしゃいませ。毛利さんのお客さんですか?」
「いや、客ではないんだ。」
「あ、初めまして。苗字…」
「いらっしゃいませ、毛利さん。」
目の前にいる梓さんと呼ばれた店員さんの後ろの方から聞こえた明るい声に、名乗ろうとした私の声は遮られた。
その、聞き覚えのある声に。
「安室さん、こんにちは。」
「こんにちは。」
「こんにちは、蘭さん、コナンくん。」
聞き覚えのある声の主は"安室"と呼ばれ、人違いかと少し安堵する。しかしこんなに似ている声なんて、どんな人なんだろうと覗き込んだのが間違いだった。いや、私が覗き込まなくても、彼はこちらに向かってきていたから時間の問題だったのだ。
目が合ってほんの一瞬、わかるかわからないかくらいに目を少しだけ見開いた彼は、名前が違うその人は、紛れもなく、
私の元恋人だった。
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