24.
通報してあったらしく、私達学生とは違う本職の警察官がやってきて、犯人達を連行していった。
改めて私達を助けに来てくれた3人を見ると、謎にチャラい格好をしていて、なんで?と思わず聞いたが、この方がぽいだろ?と言われた。うん、まぁ、夜に騒いでコンビニに大人数でやってくるパリピ感はあるな、と変に納得した。
「でもほんと、皆来てくれて助かったよ…ありがとう」
「まさか名前までいるとは思わなかったけどな」
「ホントだぜ…何やってんだよ」
「買い物の為でしかないでしょ」
「でも、まさか看板の電気でモールス信号を表すなんて、よく思いついたよね」
「それはホント、ゼロくんさすがだった。頭いい。ね?」
「そんなことないさ。ヒロ達が気づいてくれてよかったよ」
謙遜しなくてもいいのに、そういう所がゼロくんっぽいけど。
皆が帰っていく後ろを着いて行く。伊達くんは何かを考えているようだったけど、どこかスッキリしたような表情だったから、安心した。けんちゃんもいい事言ってたし。けんちゃんって普段あんな感じだけど、結構そういう所がある。ほんとに良い奴なんだと勝手に鼻高だ。
私と同じように、ゼロくんも伊達くんを見ていた。そして、安心したように笑う。それが、なんだか嬉しかった。
「ゼロくん」
「ん?」
「ホントに、ありがとね」
ゼロくんだけじゃない、伊達くんも、来てくれた皆も。
自然と笑みが溢れていた。私の様子を見て、少し照れたようにゼロくんは頬をかく。まさか照れられると思ってなくて、また笑ってしまった。可愛いとこあるな、ゼロくん。
前を行く4人を追い掛けた。ゼロくんも後に続いて。
そして私は、この班でよかったな、と、在学中に何度も思うのだ。
―――合コン。合同コンパとかいうやつ。
それに伊達班の皆が明日行くらしい。他の教場の女子達と。私を除いて。そう、先日の掃除中けんちゃん達に女子がキャッキャしてたあれだ。
勿論これは初めての事ではない。だってあのけんちゃんだ。女の子大好きな奴が合コンに行くのはよくある事。そしてけんちゃんとマブなじんぺーも高確率で行く。いつもの流れだ。
そしてまさかの彼女持ちの伊達くんも行くと言っていた。数合わせでタダ酒だと楽しそうに。私だってそんなの行きたい。タダ酒なんて美味いに決まってるだろ。でも、行けない。
私は拗ねていた。割りと毎度の事だけど。けんちゃんはいつも、一緒に行く?って聞いてくれるけど、行けるわけないだろ。けんちゃんにキャッキャしてる女子達から高確率で目の敵にされるんだよ私は。それに仲良くない女子達に混ざれない。私人見知りなんだよな。
「名前、名前!」
「ん…?」
昼休み、私はいつものように班の皆と一緒にご飯を食べていたが、今日は隅っこに座っていた。拗ねてる感を出してると皆が楽しめないかもしれないし、そうなるのはあまり本意ではないから殆ど表には出さないようにしているが、やはり拗ねてはいるので、些細な抵抗として隅っこにいるという訳だ。
そんな私に声を掛けてきたのは、寮の隣の部屋の友人だった。
「明日暇?」
「え、うん、めっちゃ暇。ほんとに暇!」
心做しか少しだけ声量が大きくなって主張してしまった気もするが、それは仕方ない。だって暇なのだから。
「じゃあさ…」
内緒話をする素振りをして、私の耳元に話し掛けてきた友人の言葉は、予想外のものだった。
―――合コン行かない?
確かに彼女は、そう言ったのだ。
内緒話にしてくれたのは、私のセコムとか勝手に呼ばれているじんぺー達が近くにいるからだろう。
確かにこんな話をしたら、はぁ?とか普通に言われそうだ。なんせじんぺー達は私にやたら過保護だから。
だが、今は状況が違う。皆は合コンに行ってしまう。なのに私だけ合コンに行ってはいけない理由はないだろう。だって皆は、合コンに行ってしまうんだから!!
普段ならちょっと考えていたかもしれないが、今回は断る理由が1ミリも見当たらない。
「行く!!」
私は即答していた。
そして、当日の夕方。門限がある為少し早めに合コンは始まった。
場所は、学校から割りと近い距離にある繁華街の居酒屋だ。
数合わせに近い形の私だが、女子側は寮の友達ばかりだったので一安心。そしてなんと、相手側も別の教場の男子達だった。いや、警察学校内で同じ日に合コン行われてるってどういことだ。どんだけ皆合コンしたいの。
合コンは夕方からだったが、昼過ぎから皆と遊びに行っていたので正直十分満足していた。久しぶりに化粧をして、髪も巻いて、ルンルンで出掛けて、久しぶりに女子の友達と遊んだのが楽しすぎてもう今日は帰っていいかなとすら思ったが、さすがに止められた。
最初に飲み物を注文し、来るのを待ってる間に食べ物も適当に頼み、そして皆の飲み物が揃った頃乾杯をした。それから皆で順番に名前を言い合う。
なるほど…これが合コンか…と、初めての体験でとても新鮮だった。
一通り名前を聞いたが一気に聞いたから覚えられそうにない。でもどうせ私数合わせだからなと思い至りご飯に集中することにした。このお通し美味いな…と味わって食べていると、目の前の男子に話し掛けられた。
「名前ちゃんって、もしかして鬼塚教場の伊達班?」
「え、そうだけど…よく知ってるね」
「あの班有名だからな〜まさかあの名前ちゃんが来てくれると思わなかったな」
「いやマジでな」
そのまた隣の男子が話に加わったが、“あの”ってなんだ。
「……“あの”って?」
「ほら、松田と萩原いるだろ?アイツらのガードが固くて近付けないって、他の男連中皆よく言ってるよ」
「………そうなの?」
「そうそう、話してみたかったって思ってる奴らばっかりだと思うよ今日のメンバーも」
……なんで私と話てみたいと思ってたのかは謎だけど、確かにじんぺーとけんちゃんのガードが固いと言われるのは分からんでもない。昔から彼らはほんとに私に対して過保護なのだ。
「ちょっと〜名前が可愛いからって、私達とも話してくれる?」
「あ、ごめんごめん!」
「?皆の方が可愛いけど…?」
「もーアンタはほんと、自覚ないな」
何故私が可愛いって話になってるのかほんとによく分からないが、まぁ有名な鬼塚教場の伊達班の一員であるというのが物珍しいのだろう。何だかよく話掛けられるが、私は人見知りなのであまり面白い返しは出来ないし、ご飯と酒が美味いことしか分からないな、とぼんやり考えながら過ごしていた。合コン楽しむのって難しい。女子同士で遊んだのが十分楽しかったせいもあるのかな。
今頃、皆は楽しんでるのかな、と思いを馳せる。
思い出してちょっとだけムッとしたが、今は私も噂の合コンに参加しているのだからと思い止まった。
合コンという名の飲み会はそこそこ盛り上がりを見せ、どうやら二次会にカラオケへ行くらしい。うん、ぽいな。割りとイメージ通りだ。
近くのカラオケ店へ移動して、それもそこそこ盛り上がった。
そして、門限も近付いてきた頃、カラオケ店を出て皆で帰ろうとなったその時。居酒屋で私の目の前に座っていた男子が声を掛けてきた。
「名前ちゃん」
「ん?」
「あのさ、連絡先聞いていい?」
「…?なんで?」
「いや、なんでって……仲良くなりたいから、かな」
「仲良く…」
そうか、仲良く。友達になるにしても、教場も違うし男子だし、連絡取れないと仲良くなりづらいってことかな。
「まぁ…いいけど」
「まじ?あ、ならさ、もっと仲良くなりたいから、一緒に抜け出さない?」
「??え、門限あるし帰るのでは…?」
「ちょっとくらい大丈夫だって」
「いやいや……」
え、何、急に圧強いな。手を捕まれて、離れない。皆は気付かず先に行ってしまってるし、友達を呼ぼうかどうしようかと迷った、その時だった。
目の前の男子の手が何者かによって捕まれ、私から離れていく。
誰、と顔を上げると、そこにはなんとゼロくんがいた。
「………えっ」
「ふ、降谷…!?」
「ごめん、無理矢理な感じがしたから…違った?」
「はぁ!?」
男子は驚いたような顔をしてるが、私もめちゃくちゃ驚いてるし、心臓がバクバクとしている。ちょっと怖かった、でも仲間が助けてくれた。それがものすごく安心したのだ。
「おい」
「え……うわ」
「うわってなんだよ」
別の声に呼ばれて振り返ると、ものすごい形相をしたじんぺーが横にいる。そりゃうわ、とも言いたくなる。
「何してんだよ、こんなところで」
「うわ、けんちゃん…」
「そのうわって言うのやめない?」
「なんでここにいるの?」
「オレ達も、あそこのカラオケにいたんだよ」
「あ、ヒロくん」
伊達班皆勢揃いだった。いや、てか相手の女子達はどうしたの、と思ったら少し離れた所でこちらを見ている集団がいて、うわぁ…ってなった。いや、寧ろあっちが怖い。
「け、けんちゃん私は大丈夫だから向こうの女子達送りなって」
「え」
「行って!」
ちょっと渋々だったがけんちゃんは女子達の方に行き、女子達の機嫌は何とか戻ったみたいだ。安心した。そして振り返ると、今度はじんぺーがさっきの男子に詰め寄っているじゃないか。
「あ、ちょっと、じんぺー!」
「まあまあ…」
ガン付けているじんぺーと少し怯えている男子の仲裁をしに伊達くんが入ってくれた。ああよかった。
そして男子が、じゃ、と告げて走って行ってしまう。……結局なんだったんだ。
「苗字さん大丈夫?」
「あ、うん。ゼロくんありがとう。」
「いや…」
じ、と視線を感じる。目の前のゼロくんだ。その視線の意味が分からず首を傾げると、ゼロの視線が少し泳ぐ。…なんだ…?
「どうかした…?」
「…なんでも、ない」
「?」
変なゼロくん。全くよく分からなくて暫くゼロくんを観察してみたが、あんまり見るなと怒られた。それはごめん。私達の様子を見て、ヒロくんかクスッと笑っていた。え、何。
「名前!」
じんぺーに名前を呼ばれて振り返れば、先に進んでいるじんぺーと伊達くんがいた。あ、そうだ、門限近いんだった。ヒロくんも先に歩いて行ってしまい、私も続いて行こうとしたその時、袖を引かれた。
「?ゼロくん…?」
「あのさ……名前で、呼んでいいかな」
「…え?」
目が合う。ゼロくんは真剣な顔で私を見ていた。
「……ゼロくんと同じだよ」
「え…」
「『好きに呼んでいいよ』、ってこと!」
「……!」
私がニッと笑って見せると、ゼロくんも笑った。またゼロくんと、仲良くなれた気がする。
「…名前、行こう」
私の名前を呼んで、ゼロくんが優しく笑う。私の心の奥底がむずっとした事に、この時はまだ気付かなかった。
「うん、行こう、ゼロくん!」
そして私達は帰路に着く。
私達の、学び舎へ。
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通報してあったらしく、私達学生とは違う本職の警察官がやってきて、犯人達を連行していった。
改めて私達を助けに来てくれた3人を見ると、謎にチャラい格好をしていて、なんで?と思わず聞いたが、この方がぽいだろ?と言われた。うん、まぁ、夜に騒いでコンビニに大人数でやってくるパリピ感はあるな、と変に納得した。
「でもほんと、皆来てくれて助かったよ…ありがとう」
「まさか名前までいるとは思わなかったけどな」
「ホントだぜ…何やってんだよ」
「買い物の為でしかないでしょ」
「でも、まさか看板の電気でモールス信号を表すなんて、よく思いついたよね」
「それはホント、ゼロくんさすがだった。頭いい。ね?」
「そんなことないさ。ヒロ達が気づいてくれてよかったよ」
謙遜しなくてもいいのに、そういう所がゼロくんっぽいけど。
皆が帰っていく後ろを着いて行く。伊達くんは何かを考えているようだったけど、どこかスッキリしたような表情だったから、安心した。けんちゃんもいい事言ってたし。けんちゃんって普段あんな感じだけど、結構そういう所がある。ほんとに良い奴なんだと勝手に鼻高だ。
私と同じように、ゼロくんも伊達くんを見ていた。そして、安心したように笑う。それが、なんだか嬉しかった。
「ゼロくん」
「ん?」
「ホントに、ありがとね」
ゼロくんだけじゃない、伊達くんも、来てくれた皆も。
自然と笑みが溢れていた。私の様子を見て、少し照れたようにゼロくんは頬をかく。まさか照れられると思ってなくて、また笑ってしまった。可愛いとこあるな、ゼロくん。
前を行く4人を追い掛けた。ゼロくんも後に続いて。
そして私は、この班でよかったな、と、在学中に何度も思うのだ。
―――合コン。合同コンパとかいうやつ。
それに伊達班の皆が明日行くらしい。他の教場の女子達と。私を除いて。そう、先日の掃除中けんちゃん達に女子がキャッキャしてたあれだ。
勿論これは初めての事ではない。だってあのけんちゃんだ。女の子大好きな奴が合コンに行くのはよくある事。そしてけんちゃんとマブなじんぺーも高確率で行く。いつもの流れだ。
そしてまさかの彼女持ちの伊達くんも行くと言っていた。数合わせでタダ酒だと楽しそうに。私だってそんなの行きたい。タダ酒なんて美味いに決まってるだろ。でも、行けない。
私は拗ねていた。割りと毎度の事だけど。けんちゃんはいつも、一緒に行く?って聞いてくれるけど、行けるわけないだろ。けんちゃんにキャッキャしてる女子達から高確率で目の敵にされるんだよ私は。それに仲良くない女子達に混ざれない。私人見知りなんだよな。
「名前、名前!」
「ん…?」
昼休み、私はいつものように班の皆と一緒にご飯を食べていたが、今日は隅っこに座っていた。拗ねてる感を出してると皆が楽しめないかもしれないし、そうなるのはあまり本意ではないから殆ど表には出さないようにしているが、やはり拗ねてはいるので、些細な抵抗として隅っこにいるという訳だ。
そんな私に声を掛けてきたのは、寮の隣の部屋の友人だった。
「明日暇?」
「え、うん、めっちゃ暇。ほんとに暇!」
心做しか少しだけ声量が大きくなって主張してしまった気もするが、それは仕方ない。だって暇なのだから。
「じゃあさ…」
内緒話をする素振りをして、私の耳元に話し掛けてきた友人の言葉は、予想外のものだった。
―――合コン行かない?
確かに彼女は、そう言ったのだ。
内緒話にしてくれたのは、私のセコムとか勝手に呼ばれているじんぺー達が近くにいるからだろう。
確かにこんな話をしたら、はぁ?とか普通に言われそうだ。なんせじんぺー達は私にやたら過保護だから。
だが、今は状況が違う。皆は合コンに行ってしまう。なのに私だけ合コンに行ってはいけない理由はないだろう。だって皆は、合コンに行ってしまうんだから!!
普段ならちょっと考えていたかもしれないが、今回は断る理由が1ミリも見当たらない。
「行く!!」
私は即答していた。
そして、当日の夕方。門限がある為少し早めに合コンは始まった。
場所は、学校から割りと近い距離にある繁華街の居酒屋だ。
数合わせに近い形の私だが、女子側は寮の友達ばかりだったので一安心。そしてなんと、相手側も別の教場の男子達だった。いや、警察学校内で同じ日に合コン行われてるってどういことだ。どんだけ皆合コンしたいの。
合コンは夕方からだったが、昼過ぎから皆と遊びに行っていたので正直十分満足していた。久しぶりに化粧をして、髪も巻いて、ルンルンで出掛けて、久しぶりに女子の友達と遊んだのが楽しすぎてもう今日は帰っていいかなとすら思ったが、さすがに止められた。
最初に飲み物を注文し、来るのを待ってる間に食べ物も適当に頼み、そして皆の飲み物が揃った頃乾杯をした。それから皆で順番に名前を言い合う。
なるほど…これが合コンか…と、初めての体験でとても新鮮だった。
一通り名前を聞いたが一気に聞いたから覚えられそうにない。でもどうせ私数合わせだからなと思い至りご飯に集中することにした。このお通し美味いな…と味わって食べていると、目の前の男子に話し掛けられた。
「名前ちゃんって、もしかして鬼塚教場の伊達班?」
「え、そうだけど…よく知ってるね」
「あの班有名だからな〜まさかあの名前ちゃんが来てくれると思わなかったな」
「いやマジでな」
そのまた隣の男子が話に加わったが、“あの”ってなんだ。
「……“あの”って?」
「ほら、松田と萩原いるだろ?アイツらのガードが固くて近付けないって、他の男連中皆よく言ってるよ」
「………そうなの?」
「そうそう、話してみたかったって思ってる奴らばっかりだと思うよ今日のメンバーも」
……なんで私と話てみたいと思ってたのかは謎だけど、確かにじんぺーとけんちゃんのガードが固いと言われるのは分からんでもない。昔から彼らはほんとに私に対して過保護なのだ。
「ちょっと〜名前が可愛いからって、私達とも話してくれる?」
「あ、ごめんごめん!」
「?皆の方が可愛いけど…?」
「もーアンタはほんと、自覚ないな」
何故私が可愛いって話になってるのかほんとによく分からないが、まぁ有名な鬼塚教場の伊達班の一員であるというのが物珍しいのだろう。何だかよく話掛けられるが、私は人見知りなのであまり面白い返しは出来ないし、ご飯と酒が美味いことしか分からないな、とぼんやり考えながら過ごしていた。合コン楽しむのって難しい。女子同士で遊んだのが十分楽しかったせいもあるのかな。
今頃、皆は楽しんでるのかな、と思いを馳せる。
思い出してちょっとだけムッとしたが、今は私も噂の合コンに参加しているのだからと思い止まった。
合コンという名の飲み会はそこそこ盛り上がりを見せ、どうやら二次会にカラオケへ行くらしい。うん、ぽいな。割りとイメージ通りだ。
近くのカラオケ店へ移動して、それもそこそこ盛り上がった。
そして、門限も近付いてきた頃、カラオケ店を出て皆で帰ろうとなったその時。居酒屋で私の目の前に座っていた男子が声を掛けてきた。
「名前ちゃん」
「ん?」
「あのさ、連絡先聞いていい?」
「…?なんで?」
「いや、なんでって……仲良くなりたいから、かな」
「仲良く…」
そうか、仲良く。友達になるにしても、教場も違うし男子だし、連絡取れないと仲良くなりづらいってことかな。
「まぁ…いいけど」
「まじ?あ、ならさ、もっと仲良くなりたいから、一緒に抜け出さない?」
「??え、門限あるし帰るのでは…?」
「ちょっとくらい大丈夫だって」
「いやいや……」
え、何、急に圧強いな。手を捕まれて、離れない。皆は気付かず先に行ってしまってるし、友達を呼ぼうかどうしようかと迷った、その時だった。
目の前の男子の手が何者かによって捕まれ、私から離れていく。
誰、と顔を上げると、そこにはなんとゼロくんがいた。
「………えっ」
「ふ、降谷…!?」
「ごめん、無理矢理な感じがしたから…違った?」
「はぁ!?」
男子は驚いたような顔をしてるが、私もめちゃくちゃ驚いてるし、心臓がバクバクとしている。ちょっと怖かった、でも仲間が助けてくれた。それがものすごく安心したのだ。
「おい」
「え……うわ」
「うわってなんだよ」
別の声に呼ばれて振り返ると、ものすごい形相をしたじんぺーが横にいる。そりゃうわ、とも言いたくなる。
「何してんだよ、こんなところで」
「うわ、けんちゃん…」
「そのうわって言うのやめない?」
「なんでここにいるの?」
「オレ達も、あそこのカラオケにいたんだよ」
「あ、ヒロくん」
伊達班皆勢揃いだった。いや、てか相手の女子達はどうしたの、と思ったら少し離れた所でこちらを見ている集団がいて、うわぁ…ってなった。いや、寧ろあっちが怖い。
「け、けんちゃん私は大丈夫だから向こうの女子達送りなって」
「え」
「行って!」
ちょっと渋々だったがけんちゃんは女子達の方に行き、女子達の機嫌は何とか戻ったみたいだ。安心した。そして振り返ると、今度はじんぺーがさっきの男子に詰め寄っているじゃないか。
「あ、ちょっと、じんぺー!」
「まあまあ…」
ガン付けているじんぺーと少し怯えている男子の仲裁をしに伊達くんが入ってくれた。ああよかった。
そして男子が、じゃ、と告げて走って行ってしまう。……結局なんだったんだ。
「苗字さん大丈夫?」
「あ、うん。ゼロくんありがとう。」
「いや…」
じ、と視線を感じる。目の前のゼロくんだ。その視線の意味が分からず首を傾げると、ゼロの視線が少し泳ぐ。…なんだ…?
「どうかした…?」
「…なんでも、ない」
「?」
変なゼロくん。全くよく分からなくて暫くゼロくんを観察してみたが、あんまり見るなと怒られた。それはごめん。私達の様子を見て、ヒロくんかクスッと笑っていた。え、何。
「名前!」
じんぺーに名前を呼ばれて振り返れば、先に進んでいるじんぺーと伊達くんがいた。あ、そうだ、門限近いんだった。ヒロくんも先に歩いて行ってしまい、私も続いて行こうとしたその時、袖を引かれた。
「?ゼロくん…?」
「あのさ……名前で、呼んでいいかな」
「…え?」
目が合う。ゼロくんは真剣な顔で私を見ていた。
「……ゼロくんと同じだよ」
「え…」
「『好きに呼んでいいよ』、ってこと!」
「……!」
私がニッと笑って見せると、ゼロくんも笑った。またゼロくんと、仲良くなれた気がする。
「…名前、行こう」
私の名前を呼んで、ゼロくんが優しく笑う。私の心の奥底がむずっとした事に、この時はまだ気付かなかった。
「うん、行こう、ゼロくん!」
そして私達は帰路に着く。
私達の、学び舎へ。
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