「名前、タオルくれ。」

「はいー」

「マネージャー、ドリンクもらえますか?」

「はい喜んでー」

「名前、デートしない?」

「しない。」

「おい名前!ドリンク追加持ってこい!!」

「だーもー自分で行けええええええええ!!!」





運命を君と。
33.The backside of the poker face






ついに始まった合同合宿。
突然総合マネージャーになることになった名前は、忙しなく働いていた。
普段作るよりも何倍も多いドリンクを作り、それを入れたボックスを手に、コートに戻ろうとしていた。

「お、重い…」

名前は、何キロあるかわからないようなボックスを抱え、よろよろと歩いていた。
しかし、急に後ろから伸びてきた手によって、軽々とボックスは手元から離れていった。

驚いて振り向くと、先程再会した後輩、財前がいた。


「え、光…?なんで?」
「……重。」
「あ、いいよほんと!重いし!」
「何言うてるんスか先輩。アホちゃう?
そんな細っこい腕で、こんなん持てるわけないやん。
なんで数回に分けるとかせぇへんの?アホやろ。」
「う…」

確かに、数回に分けて運べばよかったのだが、往復するのもめんどくさいと思ってしまって、今に至る。

「どうせ名前先輩のことやから、数回往復するのもめんどいとか思ったんでしょうけど。」
「ば、バレてる…!!」
「当たり前やないスか。
…こういうときくらい、俺のこと頼れや。」
「……へ?」

ボソっと呟かれた言葉に思わず振り向くと、財前は相変わらずのポーカーフェイスなのだが、少しだけ照れが混ざったような表情をしていた。

「光?」
「……なんで、転校したんスか。」
「………怒ってる?」
「別に怒っとるわけやないスけど。
納得いかんだけです。」
「怒ってんじゃん…」

ふと、横を歩いていた財前が止まる。

後ろを振り向くと、真剣な表情をしている財前と目が合った。
目がそらせなくて見つめ合っている形になっていると、財前がゆっくりと口を開いた。



「…俺は、名前先輩の側におりたかった。」





「光…?」

「離れてほしくなかった。」

「光、」

「こんなんワガママやってわかっとりますよ。
でも、ほんまのことやねん。」


財前の表情が少しだけ切なそうに見えて、名前は財前に近づくと、少しだけ背伸びをして財前の頭を撫でた。


「…子供扱いっスか。」
「違うよー。」
「じゃあなんスか。」
「んー…なんとなく?」
「…相変わらずっスね。」
「そう?」
「ええ。相変わらずアホで鈍くて敵わんっスわ。」
「は?!私のどこがアホで鈍いと!!」
「そういうところっスよ。」

そう言って笑う財前を見て、なんだか嬉しくなり、名前も笑った。

「あーもー。反則やろほんま。」
「ん?何が?」
「ほんま、自覚無さすぎて困るんやけど。」
「いやだから、何が?」

わけがわからなくて財前を見つめていると、急に距離が近くなり、額に何かがあたる感触がした。

「……は……?」
「ぷ…アホ面。」
「あ、アホ面って!!!」
「唇のほうがよかったんならやり直しますけど?」
「は、はあああ?!」
「まぁ、また今度っスね。
いい加減戻らな、怒られるんちゃいます?」
「あ…ヤバい。忘れてた。
光ん行こ!!」
「…はいはい」


また今度、と言った言葉に気づいていないんだろう。
自分が、側にいたかったと言った意味さえも、違う意味で捉えているだろう。
財前は前を歩く名前の背中に、小さくため息を吐いた。

しかし、またこうして一緒にいれる嬉しさが勝り、

しゃーないな、と聞こえないほど小さく呟き、

財前は抱えたボックスを持ち直し、名前を追いかけた。




next.

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