「遅い!!」
「すんませんっしたー。」
「……。」
「あーん?」
「あれ、財前、急におらんなったと思とったら、名前のとこおったん?」
「たまたまっすよ。」
「たまたま…ねぇ?」
「………。」




運命を君と。
34.Beginning of…Love?







跡部に遅いと言われている名前の横で、名前の手伝いをして一緒に戻った財前は、部長の白石の質問に適当に答えつつ、練習へと戻って行った。

「なぁ、財前となんかあったん?」
「んー?いつも通りじゃないかな?
あ。私これ配ってくる!」

財前に運んでもらったドリンクの一部を持ってパタパタと走っていく、いつも通りの名前。


「何があったんやろなー跡部君。」
「知るかよ。」

そう言って去っていく跡部を見送り、白石は微かに笑った。

「なんや、色々ありそうやな、この合宿。」

微かにそう呟いて。





名前は、休憩に入っていくメンバーにドリンクを次々と渡していっていた。


「どうぞードリンクですよー」
「ああ、ありがとう。」
「いえいえー
そこのお二人もどうぞー」
「ありがとうございます!」
「……ども。」
「えっと……不動産中のみなさん(笑顔)」
「不動峰っす!!!」
「あ、あれ…?」
「なんだよどいつもこいつも…
わざと言ってんのかよむかつくなぁ…
普通に考えてそんな名前なわけないだろ…あーあ…」
「まさか千石さんと同じこと言う人が他にもいるとは思わなかったっすよ。」
「え、清純…?」

ものすごく顔を歪めて嫌そうな顔をする名前。
何かまずいことを言っただろうかと不安になった神尾。

「あ、あの…?」

「私が…………清純と同じ知能だなんて…!!!」

なんとも失礼なことをさり気なくいう名前。


「俺のこと呼んだー?」

「ぎゃあああああああああああ」


突如聞こえた声とほぼ同時に後ろから抱きつかれ、名前は悲鳴をあげた。

「はは、相変わらず面白い反応だなぁ、名前は。」

嬉しそうに笑う千石を睨みつける名前。
不動峰のメンバーは呆然としている。

「もう!何しに来たのさ清純!!
ってか、急に抱きついてくるなとあれほどだな…!!」
「名前に会いにきた♪」
「意味わかんない意味わかんない」
「急じゃなかったら抱きついていいのー?」
「却下。」
「はは、ほーんとつれないんだからなー
で?何の話してたの?」
「いや、マネージャーさんが、千石さんと同じ間違いを…」
「ふっ、何を言ってるんだ不動産中の鬼○郎くん(キメ顔)」
「ちょっと!!なんすかその呼び名!!
っていうかまた間違えてるし!!」
「はっ!!しまった…!!!」


キメ顔で同じ間違いを堂々と言い、神尾を鬼○郎と呼んだ名前。
横で千石は笑っている。
それを眺めている、不動峰中部長の橘と、神尾と同じく2年生の伊武。
伊武はボソボソとぼやき続けている。

「なんなんだこの人…ただの馬鹿なのかな…
まぁ、アキラの呼び名は的確だと思うけど…
でもこの調子だと、俺も変な呼び方されるんだろうなぁ…
嫌だなぁ…うざいよなぁ…」
「深司。」
「すんまそん。」
「ん…?」

ふと、名前は伊武に目を止めた。
少し伊武に近づき、見つめる。見つめる。

「…、…なんだよ。」

突然のことに少し動揺する伊武。

変だ、馬鹿だと思おうとも、
忘れてはいけない、

名前は美少女である。





「髪さらさらだね!!すごい!綺麗!!」

無邪気に笑っている名前の笑顔に、皆は見惚れていた。
間近にきた整った顔から、伊武は少し視線をそらした。

「…あり、がとう……ござい、ます…」
「ねぇねぇ、触ってみてもいい?」
「……いいけど…、」

名前の手が、伊武の髪に触れる。

「へぇ、深司が人に髪触らせるなんて、珍しいこともあるもんだな。」
「確かにな。」
「…別に。」

普段なら確実に、ましてや仲がいいわけではない相手に触らせることは絶対にしない伊武の様子に、からかうような言葉をかける神尾の意見に、橘は同意した。

「名前、名前、
俺の髪も触っていいんだよ?」
「清純の髪に興味ないもん。」
「はは、ほんとつれない………はぁ」
「2人は仲がいいのか?」

先ほどからの2人の様子を見ていた橘が疑問を口にした。

「そーなんだよ橘クン♪
俺と名前はねぇ、」
「別に仲悪くはないですけど、
そんないいってほどでもないですよ。
ただの腐れ縁ですよ、大仏様。(笑顔)」

「だ…っ!」

嬉しそうに千石は肯定しようとしたが、名前は笑顔でさらっと否定している。
しかも、純粋な笑顔で、橘を大仏様と呼ぶという。
どこまでも名前のペースである。

「おーい!名前ー!」
「あ、はーい!今行くー!」

少し離れたところからブン太に呼ばれた。

「じゃあ私行くんで!
何かあったら言ってくださいね、大仏様、鬼○郎くん、さらさらくん!」


そう言って名前は振り返り、ブン太の方へ向かった。

「なんか変な人だけど、可愛い人だなぁ。」
「そうだな…。」
「…なんだよさらさらくんって…
センスなさすぎだろう。
やっぱり馬鹿なんじゃないのあの人。」


嵐のように去っていった名前を眺める不動峰メンバー。

神尾は少し顔を赤くして見つめている。

橘はどこか嬉しそうに見守るようだ。

またぼやいていた伊武も、心の底から嫌がってるようではなかった。


名前の特殊な魅力にハマっていく者は、
どうやら少なくはないようだ。





「え、俺のこと無視なわけ?トホホ、アンラッキー…」



哀れ千石。




next.

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