「ぎゃああああああああああああああああ」
―――立海大付属中学男子テニス部
強豪と呼ばれるこのテニス部で、いつも通りの練習が行われている中、部室から突如聞こえた悲鳴。
駆けつけるレギュラー達。
扉を開けると、テーブルの前で肩を震わせて立ち尽くしているマネージャー、苗字名前の姿があった。
「名前先輩!大丈夫っすか?!」
「なんの騒ぎだ。」
「おいおい大丈夫かよぃ?」
「どうしたんだ?」
「なにがあったんじゃ名前。」
「お怪我はありませんか?」
「わ、私、の…」
名前の震える声。一体彼女に何があったのか。
様子を見守るレギュラー達。
「何事だ、この騒ぎは!」
「煩いよ、真田。それはそうと、何があったんだい、名前。」
大事なマネージャーの悲鳴が聞こえたとなれば駆けつけるのは当たり前である。が、レギュラー全員が駆けつけたのであっては練習どころではない。
部長である幸村は、何があったのか早く答えるよう促した。
「私、の…」
ゆっくり振り返る名前。
その表情は、
「私のプリン…どこ?」
怒りに満ちていた。
「「「……………は??!」」」
「だから!!私のプリン!!ここに置いてあったの!
後で食べようと思ってたのに!!」
「名前…ふざけてるのかい?」
「ふざけてないわよ!!!」
「たかがプリン如きで、たるんどるぞ名前!」
「おい、たかがプリン如きってどういうことだふざけんじゃねぇぞああん?!!」
「む…っ」
よほどの怒りなのか、名前の口は普段の何倍も悪い。馬鹿な奴だと思っていても、怒らせたら相当怖いのだということを実感したレギュラー達であった。
「そのプリンを最後に見たのはいつだ。」
「そういえば、私と仁王君が部室へ来たときにはまだあったような気がしますが。」
「おー確かにあったのう。」
「俺が来たときはなんもなかったっすよ?」
「となると、赤也が来る前ということだな。
まぁもっとも、既に犯人はわかりきっているようだが。」
その場にいた全員の視線が一点に集中する。
疑うべき犯人は容易い。置いてあったプリンを食べようなんて思うのは、恐らくこの部活では1人しかいないであろう。
「…………………ブン太……?」
「…わ、悪ぃ…名前…」
「ブン太の…ブン太のぉ………
バカああああああああああああ!!!!!!!!」
「ほんっっっとーに!すまねぇ!」
「うう…プリン…ぅっ」
「腹減りすぎて死にそうでよ、つい魔が差したっつーか、ほんと、悪かった!奢るから機嫌直してくれよぃ!な?頼む!」
「あの、あのプリンが食べたかったんだもんんんバカバカバカバカバカブン太のバカ!!!」
散々怒り散らした後泣き出した名前。
もはや部活どころではない。
「プリンは俺が買っちゃるけぇ、元気出しんしゃい。」
「に、にお…」
「キスしてくれたらの」
「死ね!!」
「抜けがけっすか仁王先輩!
俺だって名前先輩とキスしたいっすよ!!」
「キスなんてするかバカバカバカ!
今そんなことどうでもいいんだよ!!
うっ…プリン…私のプリン…」
「すまねぇ…プリンだって買うしなんでも言うこと聞くから許してくれぃ!頼む!」
「うぅ…ほんと…?」
「当たり前だろぃ!」
ブン太の言葉に少しだけ元気を取り戻した名前。
同じプリン買ってもらって、他のも買ってもらって、あと何をしてもらおうかな、なんて企んでいると、段々と元気が出てきた。真田のこの一言を聞くまでは。
「全く、プリン如きで大騒ぎしおって。
さっさと部活に戻るぞ。」
「プリン…如き…?」
「お、おい名前…?」
「む…?」
「弦一郎、先ほどと同じ過ちを繰り返してどうする。」
「真田…プリン如きプリン如きって…どういうつもりだよプリンに謝れ!ああ?!」
「これ以上長引かせてどうするんだよ真田。責任取れよ?」
「す、すまん幸村…!」
今にも真田に飛びかかりそうになっている名前を止める、ブン太、赤也、ジャッカル。
「名前先輩落ち着いて!」
「そうだぜぃ!真田は名前の代わりに制裁してやるって!ジャッカルが!!」
「おい俺かよ!!」
「プリン様に謝れ真田ああああああああああああ」
もはや名前はプリンのなんなのかという疑問が湧いてくる。
たじたじなレギュラー達。ビビる真田。仁王は1人おもしろそうに笑い、柳はいつも通り何かをノートに書き続けている。紳士柳生は皆を見守っている。
そして、部長の幸村が、動いた。
名前の前に立ちはだかる。
「名前。」
「な、なによ精市…」
「部活が終わったら、何をしてもいいよ。真田に制裁を食らわせようがブン太を扱き使おうが他の奴に奢らせようがね。
でも、今は部活中だ。これ以上練習時間を減らすようなら……俺が許さないよ?」
幸村の有無を言わせない笑顔に、空気が凍りつく。
「…は、はい…」
「うん。わかればいいんだよ。さぁ皆。10秒以内に戻らないと、校庭300周走らせるよ?」
「「「?!!」」」
全員猛スピードで部室を後にした。後ろ姿を見守り、幸村が微かに笑っている。名前は顔を引きつらせた。我が部長、おそるべし。
「あ。」
名前もマネージャーの仕事に戻ろうとした瞬間、幸村が何か思い出したかのように声を発した。
「え?」
「部活後のことだけど、俺とプリンデートするってのもありだから。」
「…えっ」
そう言って嬉しそうに笑った幸村は、コートへと戻っていった。
部活後にも、何かが起こりそうな予感を抱きながら、仕事へ戻った名前であった。
fin...?
→幸村とスイーツパニック
5万打&8周年企画
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