突然、白石が私を避けるようになった。
何をしてしまったかわからない。
罵声を浴びせてしまったから?
でも、今までだって変わらなかった。
いつも、私の大好きな笑顔で、笑ってくれてた。
なのに、なんで。
私が、悪いの…かな。
『はぁ…』
「ん?どぎゃんしたとね?名前。」
放課後の教室で、私が今日何度目かわからない大きな溜め息をついたとき、聞き覚えのある訛りが聞こえてきて、顔を上げると、巨人がいた。
『…あぁ、千歳か。』
「なんね?そぎゃん大きい溜め息ばついて。」
『…なんでもない。』
「ふーん。名前といい、白石といい、溜め息ついてばかりたいね。」
『はっ?白石…?』
突然出た白石の名前に動揺するも、何故白石が溜め息をついてるのかがわからない。
何かあったんだろうか?謙也と喧嘩でもしたのか?
…謙也、か…
『はぁ…』
私は俯いて、再び溜め息をついた。
「お。白石。」
千歳が何を言ったのか、瞬時に理解出来なくて、ゆっくりと顔をあげて振り返る。が、千歳がでかすぎて何も見えない。
「なんや、こんなところにおったんかい千歳。ここクラスちゃうやろ。それより早よ部活来ぃや。」
向こう側を覗きこもうとした瞬間聞こえた声に、瞬時に千歳の影に隠れた。
何故。何故今来たんだ。どんな顔して会ったらいいんだ。
「名前が酷い顔で溜め息ついてたばってん、覗いただけたい。」
『ば…っ千歳…!!』
「…っ、名前…?」
あっけなく千歳にバラされて見つかった私は、久しぶりに白石と目が合った。
胸が高鳴る。
ああ、やっぱり……私は白石が好きや。
引いてみる作戦に出たものの、好きな子を避けるというのはなかなか精神的にきついものがあって、俺は無意識に何度も溜め息をついていた。
それでも、何事もないかのように時間はすぎるもので。
もうすぐ部活が始まるというのに現れない千歳を探しに校内を歩いていると、千歳のクラスではない教室にいるのを見つけた。
なんでこんなところにいるんだろうと思いつつ声をかければ、名前の名前が出てきて、思考が止まる。
聞こえた声と、見えた愛しい姿に、見とれてしまった。
固まった俺を見て、ほんの少し笑った千歳が「先に行ってるばい。」と言ったのに空返事するのが精一杯で、あれだけ避けていた分、一度ちゃんと見てしまうと、目が離せなくて。
ほんまに……名前が好きや。
奏
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