彼女のこんな姿を見て、私は、本当に愚かだったのだと思い知りました。
「名前…すみません。私は、私は本当に、馬鹿ですね。何もわかっていなかった。貴女の気持ちも、何も。…怖かったんです。こんなにも、人を愛したのは初めてで、こんな気持ちは初めてで。自分のことしか見えてない。相手の気持ちも考えることができないなんて、本当に子供ですね。自分が情けない。」
キツく抱きしめる私にしがみつくように抱きしめ返してくれる名前が少し震えている。こんな姿を見たのは初めてで、それでも、初めて見た彼女の姿に嬉しいと思ってしまうのは、不謹慎かもしれません。
『私も、ごめん。ごめんね、トキヤ。
私もトキヤの気持ちわかってなかったし、年上だからって振る舞おうとしてたとこ、あると思う。でも、困らせたくないの。好きだから、大好きだから。呆れられたくないの。トキヤだけのせいじゃない。私、こそ、ごめんね…っ』
そう言って泣き出してしまった名前の涙を指で拭い、顔を見せたくないのか俯いたまま顔を上げようとしない姿すらも愛しくて、覗き込むようにして唇に触れた。
驚いたように少し顔を上げた名前に額をくっつけて、泣かせてすみません、と呟けば、名前は少し照れたように笑った。その笑顔を見て嬉しくなり私自身も自然に笑っていた。
それから何度も、気持ちを確かめ合うように、キスをした。
喧嘩、というのでしょうか。
名前とこんなに喧嘩をしたのは初めてでしたが、お互いの気持ちを改めて知れて、前よりももっと、気持ちが大きくなりました。
年齢差なんて、本当に些細な悩みで、大事なことは、相手の気持ちをちゃんとわかって、思ってることは口に出さないといけないんだということ。
それがわかっただけで、少しは成長出来た気がします。
そんなことを伝えると、名前はクスクスと笑った。
「…なんですか?私は真面目に…」
『トキヤの良いところは、何事にも真面目なところかな?』
「…っ」
『真面目すぎて考えすぎるのはたまにきず。』
「な…!」
『でも、私を愛してくれてるところが、大好きです。なんてね?』
名前はそう言ってまた笑った。
本当に貴女は、狡い人ですね。
『トキヤ…?…っ!』
「覚悟してくださいね?時間はたっぷりありますから。」
『は?!ちょ…!』
貴女のことを、心から愛しています。
fin.
奏
<< title *