奇跡の人/s.m


会社に入社して早7年。いつの間にプロジェクトリーダーに選ばれるくらいまでに成長していた。周りの同期がどんどん結婚していく中、この頃俺が思うのはちゃんと結婚できんのかな〜?ってことやった。ポロっとすばるにこぼしたことあったけど、すばるには"できたら奇跡やな"って鼻で笑われた。プロジェクトが大詰めになってきた頃、俺は1人毎日残業をしていた。

「お疲れ様〜。信五手伝おか?」

村「なまえか。お前の方も大変やろ?はよ終わったんやったら帰り。」

「私の方は昨日やっと落ち着いたから大丈夫。信五もう1週間くらい残業してるやろ?」

村「まぁな。終わらんわけじゃないねんけどやっとかんとあかん気してもて。」

「じゃあちょっと休憩せん?コーヒー奢ってあげる。」

村「ええよええよ。俺が奢るわ。」

「今日は信五頑張れ!って意味やねんから私に奢らせてよ。」

村「ん〜ほな、今日だけな。」

「ありがとう!じゃあ買ってくるから待ってて!」

そう言ってコーヒーを買いに行った。あいつは同期で唯一結婚してない女。好きな人がおるとかも聞いたことない。いつも俺とかすばるとかよこと飲みに行ってるようなやつ。綺麗な顔してるしスタイルもいい、性格も悪くないのになんであいつが結婚できひんのか俺にはわからん。

「ただいまー!自販機にしようかと思ってんけど窓から外見たら向かいのサンドイッチ屋さんまだ空いてたからコーヒーとサンドイッチ買ってきた!食べよ!」

村「ありがとうな。」

「お気にならさず。笑」

それからなんてことない話をしてふと結婚の話になった。

「信五は結婚せんのー?」

村「なまえもやろ。」

「んー。そうやけどさ。」

村「最近若い子見てたら気引けんねん。」

「ちょっとわかる気するわ〜。」

村「プライドむき出しでそのくせなんか下品やしな。」

「確かにそんな子多い気する。」

村「自分にしか興味無いし、SNSとかで平気に嘘つくし口の利き方悪いし。」

「確かに。SNSで朝から晩まで人の悪口言うてるのもよく聞くなー。入社1.2年の子達から。」

村「そんなこと思ってたりしたらもう誰とも付き合えんやろ。」

「それよ。この年なってさ、年上の人と結婚するってなったら売れ残りやん?私売れ残りやからさ。笑」

村「いや。俺はお前が結婚できひん理由がわからん。」

「実はさ、昔も飲みながらやけど結婚の話したんよ。よことすばるも居ったんやけど。」

村「俺覚えてないわ。」

「そりゃそうよ。信五めっちゃ酔ってたもん。」

村「ほんまか。」

「そん時私に信五が"お前は俺の理想の嫁やねん"って言うてんで。笑」

村「うわっ。酔いながらそん事言うたん?最低やな。俺。」

「まぁ、酔ってるのわかってるしさ、はいはい。って流したけど、私みたいな人を理想って言ってくれたのが嬉しくてさ、誰も信五が言ってくれた言葉に勝てる人が居らんくて、今まで来ちゃったわ。笑」

村「俺のせいやん。いや、でもお前はホンマに理想やわ。真面目で人が良くて、俺が紹介した友達も大切にしてくれて、笑顔が良くて優しくて。あと上手いこと男立てるとことか、気遣い上手で意外と家庭的やったりとか、こうやって俺が1人で悩んだり切羽ってる時いつも隣おってくれたりするやろ。お前が奇跡の人なんちゃうかなーってすばると横に言うたことあったもんな。」

「今の内容プロポーズされてるのと同じくらいの重さあってんけど。」

村「ほんまか。笑 」

「あぁー。信五気づいてないん?」

村「何がや。」

「それもう私の事好きやん。笑」

村「、、、あぁー。ほんまやな。」

「意外と傍におるもんやね。笑」

村「なんやん。お前。笑」

「信五がじいちゃんばあちゃんになってもずっと一緒に居りたいって言うなら大歓迎やなーって思って。笑」

村「ほな、結婚前提に俺と付き合ってや。」

「よろしくお願いします。笑」

村「なんかなまえとやったら半年位で結婚しそうやな。」

「それもありよ。笑 7年のお友達期間があるからね。笑」

村「これからよろしく頼むな。」

「こちらこそ。」

近くにいすぎて気づかへんかった奇跡の人。これから2人で歳を重ねていこう。

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