いち


――赤い星が昇る



高華国。緋龍城。緋龍城は王の他には世継ぎの皇太子も世継ぎを産む皇后も無く、ただ齢15の皇女だけが大切に育てられていた。

「ねえ父上。私の髪、変じゃない?」

この国のたった一人の皇女、ヨナが自分の髪を指に絡ませながら言った。彼女の髪は赤毛で少し癖毛である。纏まり難いその髪は年頃の彼女にとって不満であった。ヨナはムキになりながらも現国王である父、イルの言葉に耳を傾ける。

「ちっともまとまらないーーっ」
「そんな事ないだろう。なあハク」

イルは庇うように近くに控えていた従者のハクに同意を求めた。

「ええ、イル陛下。姫様の御髪が変などと誰が申しましょうか。あえて申し上げるなら――頭が変ですね」
「お黙り下僕」

態度の大きい従者に対しヨナはびしびしとモノを投げつける。しかし城でも指折りの将軍である彼にとって、彼女が投げたもの全てを掴み取ることは容易いこと。全てを受け止め、ヨナが投げるものが無くなった所で、ハクはヨナに切り返した。

「お着きになったみたいですよ、スウォン様」



「緋龍城に来るのは久しぶりですねー」

ヨナの父方の従兄、スウォンは城を眺めながら懐かしむように言った。スウォンは男性にしては長い金色の髪を風で靡かせながら、直ぐ隣に控えている従者に目を向ける。紫がかった黒髪を揺らす、少女というには大人びた女が小さく溜息を吐いてスウォンを見上げた。

「いいですかスウォン様。城に着いたら必ずイル陛下御挨拶に向かって下さいね。ついでにハク将軍にも」
「わかってますよー。##ってば私の母親みたい」
「こんな大きい子供は要りません」

##はジロッと睨みつけるようにスウォンを見た。彼が陛下たちに挨拶を忘れることはないであろうが、彼にこのように言いつけるのは##の癖であった。小さい頃から彼に仕えていたため、口が勝手に動くようであった。この城に来るのももう何度目のことであるか。

「ヨナ姫にも御挨拶しないとですね」

笑顔でスウォンは言って歩き出した。――##はイル王の娘、ヨナ王女が苦手だった。綺麗な赤毛を持ち、愛らしい容姿をした姫であるヨナは年上で自分の姉のような##によく懐いていた。しかし##はヨナが成長するにつれて##は彼女の傍に寄る度に居た堪れない気持ちになるのだ。

「……そうですね。では私は先に陛下のもとへ向かいますので」

スウォンとその後ろに控える従者達に一度頭を下げて、城へ歩き出す。##がスウォンに仕えて早10年。未だ彼女は城の門を彼と一緒に通ったことはない。

20171015

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