01:てんそうそうち
「〜ったく、帰ってきて早々これかいな…」


目の前の2つの転送装置を見て、青年は思わずため息を零す。

青年の名は、ソネザキマサキ。ポケモン預かりシステムの開発者であり、この25番道路の岬の小屋に1人で暮らしているポケモンマニアでもある。そして自称ポケモンアナリスト。
ついこの間までは、彼の代わりに彼の祖父がここで過ごしていた。
本来ならば、今もまだのんびりコガネシティの実家にて過ごしていたはずだったのだが…
それは、とある昼下がり。彼のポケギアに入った着信から始まる。


「はあ!?使えなくなったあ!?」
「そーですよ!どうにかしてくださいよマサキさん!」


ひょんなことから知り合った、ワカバタウン出身の少年トレーナー。
その彼から久しぶりに着信が来て、何かと聞けばそれは預りシステムの不具合についてだった。
なんでも、いつものようにポケモンセンターのパソコンのトレーナー別専用ボックスから目的のポケモンが入ったモンスターボールを取り出そうと操作したが、いつまで経っても転送されず。また逆にボックスへこちらのボールを送ろうとしても、結果は同じで転送装置が全く動かないのだそうだ。

そんなことあるわけないと実際に自分もパソコンのボックスからモンスターボールを取り出そうと試したが、少年の言うとおりボールは送られてこなかった。
それからポケギアには少年の話した内容と全く同じの預かりシステムへの苦情の着信の嵐。終始鳴り響くポケギアに参り、事態を解決するべくこの岬の小屋に急遽帰ってくるはめになったのだが。


「うーん…一体どうなってるんや、全くわからへん…」


目の前の大きな装置を見上げてマサキは唸った。
パソコンからサーバーへログインし、システムのプログラムを確認するも、特に問題は見当たらず。とりあえず一度この二つの大きな転送装置を使い、実験してみようと起動しようとするが、うんともすんとも言わないのだ。
預かりシステムを開発し、各地方への普及が広がってからはこの転送装置を使う機会は確かにあまりなかったが、それでも小屋にいる間は点検は欠かさなかったし、先ほど機械に以上はないか確認したがこちらもプログラム同様、問題はない。はずなのだが…


「プログラムも装置も全然大丈夫なはずや。なのに、なんでやねん……あーーーー!!全く分からへん!!くそぉー!」
「ブイ…?」


頭を掻きむしりうずくまる彼のそばに、その悲痛な声を耳にして隣の部屋から一匹のイーブイがやってきた。その後ろの部屋の入り口からは、数匹のイーブイたちが顔をのぞかせている。傍らで不安げな表情で見上げてくる一匹に気づき、彼は眉尻を下げた。


「……あー、すまんすまん、大きな声出してもうた…… 心配してくれたんか?お前はやさしいなあ」


頭を撫でて手に擦り寄ってくるイーブイに和んで、ふっと微笑む。


「分からん言っててもしゃーないしな!よしゃ!気合入れよ!まずはプログラムの起動しないバグをどうにかせんと…ん?」


自分の両頬をパン!と叩き立ち上がると、何か聞こえた気がしてそちらを振り向く。
振り向いた先には、見慣れた転送装置が2つ。右側の装置内で、点滅するように途切れ途切れに何か光っているのが装置の扉の小窓から見えた。
耳を澄ませてみると、それはバチッ、バチッと音を出している。


「ひ、火花ァ!?」


装置の異常に気付き慌てて扉を開けようとノブに手を掛けるが、静電気の様なビリッとした衝撃に思わず手を引っ込めてしまった。
中の火花は、次第に音も光も大きくなっていく。
とうとう装置から黒い煙が出てきて、とっさにマサキは傍にいたイーブイ達を抱えて隣の部屋に逃げ込み床にうずくまった。


「あかん!爆発するー!……………う?」


が。いつまで経っても予想していた衝撃と爆音が襲ってくることはなく。不思議に思い、恐る恐る部屋を覗いてみると装置は爆発しておらず、ただ煙を出して佇んでいるだけだった。
ふと、腕の中から離れたイーブイたちが、右側の装置の扉の前へ集まっていく。


「あ、こら!近づくと危ないで!…って、あれ?大丈夫みたいやな…」


イーブイ達の元に近づいていくと、扉の小窓の向こうでは、もう火花は出ていなかった。
ただ、そのかわりイーブイ達は何か感じ取っているのか、そこから動こうとしないのだ。
その中の一匹が、マサキのズボンの裾を加え、装置の方へ引っ張ってくる。


「なんや…?」


おそるおそる装置の扉を開けると…


「なっ…!」


そこには女の子が一人、倒れていた。




(な…なんじゃこりゃー!!)
君を待つ間、空を見上げた。