02:みさきのこや
「……んん、」

まぶしい。
目蓋の裏に入ってくる光に、思わず顔をしかめる。
どこかで鳥の声が聞こえる。…朝だ。今日は月曜日…午前に大学で講義があったはず。
起きなければ。そう思い、ゆっくり目を開けた。
そして少しぼやけた視界に入ってきたのは、


「あ、目ぇ覚めたん?」
「………」
「いやー、全然起きへんから死んでたらどないしようかと思ったわー。」


知らない男の人の顔だった。
………え?


「きゃあああああッ!!」
「ぶッ!?」


誰!? なんで部屋に!?
いつもと違う朝に頭はパニックになって、気づいたら思いっきりその人の顔を平手打ちしていた。
そのまま男の人は後ろに倒れていき、ゴン!と床に頭をぶつけた音でハッと我に返る。


「ご、ごめんなさい!」


寝かされていたソファから降りて、男の人に駆け寄ろうとしてふと、気づく。
……ここは、私の部屋じゃない。
どこか小ざっぱりした広い部屋には必要最低限の家具しか置いていなくて、殺風景な印象を受けた。


「いっててて…あんさんなかなか力強いなぁ」


床にぶつけた頭をさすりながら、男の人はゆっくり起き上がった。
男の人は、白いワイシャツに水色のネクタイ、くせっ気のある柔らかそうな茶髪に優しそうな目。
歳は、多分私と同じくらい。


「あ、あのごめんなさい。驚いちゃってつい…頭、大丈夫ですか?」
「ああ、腫れてへんし大丈夫やろ。むしろ顔の方が痛いっちゅうか…」
「ご、ごめんなさい…!」


何度も謝っていると、気にせんでええ、と苦笑しながら許してくれた。
……怖い、人ではなさそうだ。けど…


「あの……ここは?」
「ああ、ここはカント―のハナダシティから北にちょっと行ったところにある岬の小屋やで」
「関東……はなだ、シティ?」


関東地方、ってことは分かったけれど、はなだってどこだろう……ていうか、シティ?


「あんさん、アレからいきなり出てきたんやで。一体どこから来たんや?」
「……え」


男の人が指差す方には、部屋の天井に付きそうなほど大きい機械が二つ佇んでいた。
機械は太いコードのようなもので繋がっていて、正面に丸窓付きのドアが付いていて、中に人一人入れそうなくらいの空洞があった。
あの機械から、私が出てきた…?
でも、私あんな物の中に入ったこと無いし、そもそもこの家に来たことも、この人に会ったこともない。


「しっかし、ポケモンと人が合体したことはあるものの、なんにもない中から突然人間が現れるなんて、ホンマ一体どうなってるんや…」


え?


「ぽけ…もん?」
「ん? そうや。あれはポケモン転送マシン。本来人間じゃなくてポケモンを片方から片方へ転送する実験するために作られたマシンや」
「……あの、ポケモンって、」
「あんさん、ポケモン知らんのかいな!? 一体どこから来たんや!?」


い、意味が分からない……
ポケモンって…あの、テレビでアニメもやってる子供向けゲームのこと?
ポケモンを転送する、マシン?
そんな…ポケモンなんて実際にいるわけが……


「! ちょ、大丈夫か!?」


起きたら知らない所にいたり、知らない人がいたり、私の頭はパニックになって、眩暈がしたと思ったら視界がブラックアウトした。



(もう、何がなんだかわからない)

君を待つ間、空を見上げた。