当真勇は驚く




さあ私はどんな風に動こうかな。と建物に隠れながら考えを張り巡らす。
チラリと建物の影から迅が戦っている方向を見ると、早速誰かが光の筋となって本部へ飛んでくのが見えた。私も負けてられない。



戦況を綾辻ちゃんに聞く。

「綾辻ちゃん、今どうなってる?」

「迅さんの風刀により、菊池原くんがベイルアウトし、藍ちゃんが米屋くんを廃マンションに引き付け戦闘をしています。
そして三輪くん、出水くん相手に嵐山さんと時枝くんで交戦してます。」

「佐鳥もいますよ〜」

無線から悲しそうな佐鳥の声が聞こえる。綾辻ちゃんはごめんなさい!うっかり忘れてた!と慌ててフォローになってないフォローをしていた。佐鳥が更に落ち込んだが、この場でフォロー出来る人間は交戦の真っ只中だった。とりあえず励ましも込めて、


「佐鳥くんのツインスナイプ見れるといいな」


と言っておいた。彼は嬉しそうに、佐鳥の活躍を待っててくださいね!と意気込んでいた。




迅からは嵐山隊の援護、と言われたが私が中途半端に援護しても、嵐山隊の阿吽の呼吸を乱すだけだろう。

それなら、私はスナイパーくんたちを潰しに行こう。スナイパーを潰せば少しは動き易くなるだろう。と言ってもここは射線が通りずらく、スナイパーの危険性は低めだが。



バックワームを起動し、家屋の上へとあがる。


私のSEの正体は常人より発達している声帯と肺活量だ。
私は人に聴くことが出来ない程の高音を出すことができる。つまりは超音波だ。その超音波を使ってコウモリと同じように人を探知することができる。私のSEの応用と言えば聞こえは良いが、習得するのにかなり苦労した。しかしこの超音波は広いところじゃないと使えないという欠点もある。


この超音波を菊池原くんは聴き取るかもしれないという心配は、迅くんのおかげでなくなった。

風間隊の菊池原くんを中核とした隠密行動を防ぐためにベイルアウトさせたかったのかもしれないが、どっちにしろ助かったことには変わりない。彼の強化聴力は厄介であり、私のSEと相性は最悪だ。ランク戦でも当たりたくない。



家屋に上がりる。うん、広いここならできるわ。
大きく息を吸い、高音と共に吐き出す。そして集中して、返ってきた音を聴く。








「見つけた」







バックワームを起動したまま、家屋を飛ぶように駆ける。彼、当真くんは風間隊や太刀川さんの援護をしていたはずだ。彼のことだから射線上の通らなさを見てこちらに移動してきたのだろう。


スコープを覗く当真くんを背後からスコーピオンでトリオン供給器官を破壊する。身内で争うなんてやっぱり嫌ね。



「おいおい、こっちバックワーム起動してるんだぞ?
どうやって、だれが、俺をみつけたんだよ、、、」


フードを被っているため私が誰だか分からなかったようだ。戸惑う当真くんへ無情にも、トリオン供給器官破壊、ベイルアウト。と機械的な声が響くと本部へ帰っていく。さっきまで当真くんがいたところを見つめ、質問に答える。




「それはね、魔法よ」




その声は闇へと融けた。