風間蒼也は問う




「お、いよいよ敵のおでましかな?」

私も迅に習って前方を見る。うわぁ遠征部隊しかいない。間違った、三輪隊もいる。冬島さんは船酔いして来れないため、自分が冬島隊の代表としてきたと当真くんが言ってた。冬島さんらしいなと苦笑する。

先陣切って、私達の前にやってきたのは太刀川くんと風間くんだった。



「こんなところで待ち構えてたってことは、俺たちの目的もわかってるわけだな」

「その目的って玉狛にいる空閑くんのブラックトリガーを奪いに来た、で合ってる?
そして理由はボーダー内のパワーバランスが崩れるから」

「そうだ。目的が分かってるなら話は早い。そこをどけ」

「えーと、かわいい後輩達のジャマしないでほしいんだけど…」

「いくら夢子の頼みでも無理だ、と言ったら?」

「その場合は仕方ないわ。実力派エリートと一緒に先輩として一肌脱がなきゃ」



ね、迅。と呼びかけると迅と太刀川くんがにらみ合っていた。二人ともまだ余裕を残した笑みを浮かべているが、一触即発の雰囲気を醸し出している。




「ほかの連中ならともかく、俺たちの部隊を相手にお前ひとりで勝てるつもりか?」

「おれはそこまでうぬぼれてないよ。遠征部隊の強さはよく知ってる。それに加えて三輪隊、おれが黒トリガーを使ったとしてもいいとこ五分だろ。…おれと夢子さんの2人だったら、の話だけど」

迅がにやりと笑った直後、そこに颯爽と赤い隊服を纏った彼らが現れた。




「待たせたな。迅、夢子さん。
嵐山隊、ただいま到着した!」



A級5位、嵐山隊の到着だ。

あら、と私は驚嘆の声を上げた。私は嵐山隊が来るなんて聞いてないわという視線を迅に向ける。彼はごめんと謝罪の込めたウィンクをするだけだった。



「嵐山たちがいればはっきりいってこっちが勝つよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる。おれだって別に本部と喧嘩したいわけじゃない…退いてくれるとうれしいんだけどな、太刀川さん」



自信たっぷりな迅さんの言葉に太刀川さんがどう答えるか、容易に予想がつく。


「おもしろい…おまえの予知を覆したくなった」


その言葉を合図に一斉に動き出す。無線で迅から嵐山隊のサポートに回ってくれという指示を受け、「夢子、了解」と短く返事して動き出す。