君さえ


キャラ被りって良くないと思うんです。(twst/ジェイド/BLD)


※固有名あり個性強め男オリ主(not監督生)
※BLD(今回要素薄目)
※捏造ご都合主義そのほか諸々
※なんでも許して


 姿見に映り込んだ『自分自身』の姿を見た瞬間、俺は全てを理解した。

 黒に近い藍色のストレートヘアに、空を切り取ったかのようなスカイブルーの瞳。吊り気味の目元は涼しげで怜悧な印象を与え、白い肌はまるで剥きたての茹で卵のよう。伏せ目がちに佇めば長い睫毛が影を落とし、笑みを浮かべれば薄くも形のよい唇が上品に弧を描く。
 端的に言ってしまえば、『美形中の美形』と呼んでも過言ではないだろうその容姿。一体何の話かって? 冒頭の一文を読み直してくれ。そう、何を隠そうこれらの全て、他でもない『俺』が持つ外見的特徴なのだ。

 イエス、美形。イエス、イケメン。
 イエス、生まれながらの勝ち組。

 ここまでの言から察して頂けたとは思うが、そう、俺は所謂『転生者』と呼ばれるそれである。前世では普通オブ普通ロードという名の王道を闊歩していた俺ではあるが、まあ前世や転生についての詳細はばっさりと割愛しよう。つまりはそういうことだ。

 はてさて、そんな風に前世とは打って変わって輝かんばかりの容姿を持って生まれた俺ではあるのだが……ここで話を冒頭に戻そう。

 現在の俺、齢5歳。精神年齢30近く。
 今世の名前、ランディア・モルデスティー。グランディディエライトという希少な鉱石の名前からとったらしい。滅茶苦茶強そうな名前で気に入っている。
 場所、自宅の姿見の前。
 持ち物、くまのぬいぐるみの『うさぎ』。
 状況、自らのこの世界における存在意義を理解。

 ……なるほど。
 どうやら俺は、どこかのゲームか漫画かアニメか小説かの中に存在する『イケメンキャラ』に成り代わり転生をしてしまったようだ。

 だって俺知ってる、こういう展開。たくさん見たから、嘘じゃないから。
 転生した先が人生勝ち組なイケメンだったなら、つまりはそういうことだろう、そうだと言ってくれジョニー。ついでにこの世界がなんて作品でどんなストーリーでどんなキャラが出てくるのかも教えてくれ。多分なんか知らんけど魔法が使える系の何某かだとは思う。母親も父親も魔法使ってたから。あと、この世界の名前である『ツイステッドワンダーランド』という文字列にもどこか聞き覚えがある。詳しくはよく思い出せないけれど、呟くところとかで見たような気がする。多分。
 というか、幼い頃寝物語に聞いた『グレート・セブン』とかいう人たちの話もなんだかどこかで聞いたことがあるような気がするんだけど……思い出せない。転生の過程で結構記憶が飛んでるのかもしれないな、と俺は結論付け、それならば仕方ないからと思い出すことは早々に諦めた。

 俺は『俺』が一体どういうキャラなのかなんてひとかけらも知らないが、たとえるならばレンジャーものならばブルーかブラックの名前を背負う部類のそれだろうとは思う。見た目的に。
 そして、一匹狼系というよりは、いつも物腰穏やかでたおやかな微笑みを絶やさない、おしとやかな敬語キャラ。さらに詳細に言えば、人心掌握術や情報収集に長けており、仲間たちのサポート役や暗躍に徹しているタイプ。かと思えば、どこか不穏で腹の底の読めない部分があり、実は誰よりも物騒で好戦的だったりするキャラ……と言ったところだろうか。いや、知らんけど。まあでもそんな所だと思う、多分。恐らく。

 こうして何某の作品内のキャラクターと思しき人物に成り代わり転生〜前世の記憶を添えて〜を果たした時、人は一体どんな行動をとるのか。
 恐らく、同じ経験をした先人たちの多くは「俺は俺だ! この世界なんてどうでもいい!キャラクターの人生なんてたどってやるものか! 俺は俺として生きていく!!」と言って自分らしく生きていったのだろうし、きっとそれが一番に正しい思考回路なのだとは俺も思う。……けれど、俺の思考回路はそんな当たり前には当てはまらなかった。

 え、いいじゃん。やってやろうじゃん。完璧な『俺』になりきって、この世界の歯車として生きてやろうじゃん。なんか楽しそうだし。

 と、いうわけで。始まりました! 俺による『俺』……いや、多分正しい一人称は『僕』だな、俺の予想するキャラ的に。はい、仕切り直し。

 と、いうわけで! 始まりました! 俺による『僕』の完璧プロデュース作戦!!

 目指すはこの世界の主要キャラと思しき(多分)『僕』を、俺の全力を持って完璧なる『僕』に仕上げること。目標が曖昧過ぎるって? 知らん! 俺が楽しくて満足したならそれが正義だ!! そんなスタンスで、ひとまずは先述した通りのイメージに『僕』を作り上げていこうと思う。

 今世での両親──『僕』の両親なだけあってやはりどちらも美人だ──を不安がらせないように、突然の変化ではなくゆっくりゆっくりと『真面目でおしとやかで物腰柔らかな敬語キャラ』を作り上げ、そのイメージに沿うように勉強や運動、そして魔法の練習にも精を出した。 

『俺』は特別優秀な人間ではなかったけれど、どうやら『僕』は、やはりというかなんというか生まれつき優秀で要領のいい器をしているようで、中身が『俺』であろうともほとんどのことはすぐさま人並み以上に出来るようになった。そこに極めつけの努力をひと匙ふた匙加えていけば、世界はなんともイージーモード。

 一人称は僕。折り目正しい佇まいに、穏やかな物腰。言葉は丁寧に、動作はたおやかに、表情は優しげに。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、を体現するように。外見は華やかさよりも清潔感を重視して、髪は短く、服は基本的に着崩さない。潔癖感を与えるように手袋を嵌めて、背筋はピンと伸ばした。不摂生はせず、肌の美しさやスタイル、健康にも気を使って常に万全のコンディションを。人の表情や言動にも気を配り、相手が何を考えているのか、何を求めているのかを的確に判断できるように。
 秘書キャラたる僕となるために、一番を目指すのではなくあえて上の中付近を常に目指す。自分が目立つのではなく誰かを目立たせることで自らの存在感を薄め、暗躍や情報収集を円滑に行っていくためだ。
 前世でプログラミングもかじっていた為、メディア系に強くなるまでもそう時間はかからなかった。ハッキングもサイバーテロも、今の僕に任せれば朝飯前だ。

「ランディアは本当に優しくて優秀な子ね。お母さんも鼻が高いわ」
「ランディア。次もまた、父さんと一緒にパーティーに参加してくれないか? 父さんの上司がお前をえらく気に入って下さったそうでなぁ」
「ランディアくん、良かったら勉強を教えてくれない?」
「ランディア、一緒に帰ろうぜ!」
「ランディアくんはとても大人びていて、本人に手がかからないどころか、他の子のサポートまでいつも買って出てくれるのでとても助かっているんですよ」
「ランディアは本当に何でも知ってるよな。ハクシキ、ってやつ?」

 優しい。穏やか。大人びている。優秀。冷静。丁寧。プライマリースクールを卒業する頃にはもう既に、周囲からの僕への評価はそんな言葉で溢れ返っていた。

「……でも、心を読まれているみたいで時々怖くなるわ」
「隙がなさ過ぎるんだよな、あいつ」
「正直言って気持ち悪い」
「裏で何考えてるのか分かったもんじゃない」
「あいつ、何であんなことまで知ってるんだ……?」

 けれど、やはり人とは『完璧』の裏側を邪推したくなる生き物。ゆえに、そんな不穏な噂たちもまた、同時に周囲へと蔓延し始めた。いやはや何とも失礼なことではあるが、僕にとってはそれさえもが全て計画通り。
 外面の良さと能力は揃えた。後は、裏側を少しずつ垣間見せていくだけ。

「……酷いですね。僕はただ、貴方を手助けすることができればと思っただけだったのですが……」
「貴方の欲しがっていらした情報は、ちゃんとお渡ししたでしょう?」
「え? “あんなことになるとは思わなかった”?」
「ふふ、嫌だなぁ。──そんなの、僕のご用意した情報からそれを予測できなかった貴方がたの落ち度でしょう?」

「僕は、ちゃあんと、守りましたよ? 貴方と交わした『お約束』を」

「──だから、今度は貴方の番」


「≪[[rb:指切りげんまん > アー・ユー・ライアー?]]≫」


 ……え、これもう花丸満点大正解じゃない?
 物腰穏やかな優等生。その裏の顔は、悪徳(ちゃんと仕事はしてるよ!)な情報屋。14歳の時に編み出したユニーク魔法≪[[rb:指切りげんまん > アー・ユー・ライアー?]]≫は、自らの持つ情報を相手に与える代わりに、相手から自分の一番欲しい情報を奪い取るという魔法だ。いや、これもう花丸満点(以下略)。

 伸び始めた身長は気付けば180pにも迫り、声変わりを超えた声は程よく優しげな響きを持った甘いテノール。外見は相変わらずの美人オブ美人。料理だけはどうしても出来ずダークマターメーカーの名をいいようにしてしまっているのは、まああれだ、そういうところで親しみやすさを演出するそれだ。別に強がりとかではない。全く。

 そして、さらにさらに何を隠そう今現在、ミドルスクールを卒業した15歳の僕の目の前にいるのは、どこか不気味ながらも荘厳な雰囲気を纏った黒い馬車。何でもその馬車、かの名門魔法士養成学校・ナイトレイブンカレッジからの入学通知兼お迎えなのだとか。

 いや、これもう(以下略)。

 把握しました。魔法が使えるファンタジー系学園もの。ナイトレイブンカレッジは全寮制の男子校とのことなので、特例で女の子がある日突然入学してきて〜な乙女ゲー系のそれか、『俺』の前世のような世界からこの世界に突然誰かがトリップしてきて〜な異世界トリップ系のそれか、といったあたりが濃厚筋だろう。

 ……えっ、なにそれ、滅茶苦茶楽しいじゃん!?

『僕』が一体そのストーリーの中でどんな立ち位置になるのかは一切分からないが、どちらにせよ、このナイトレイブンカレッジという学園で何かが巻き起こされるのだろうということは分かった。
 両親に悟られぬよう内心で盛大に荒ぶりながら、僕は冷静を装ってその馬車に乗り込んだ。馬車はかっこいいし、これから先のこともすごく楽しみだけど、棺の中に寝そべって運ばれるというのは些か見た目が不穏過ぎるんじゃないかなと思ったりした。まあ雰囲気はあるからいいと思う。ちょっと身体は痛くなった。

 さあ、来たる学園生活で僕は一体何をしよう。どんな楽しいことをしよう。ストーリーはいつ始まるのだろう。他のキャラにはどんな人たちがいるのだろう。アクションやバトルがあるのはいいけど、人死にが出るようなことはなければいいな。

 そんなことを考えているうちにいつの間にか眠りに落ちていた僕は、次に目覚めた時にはもう既に、ナイトレイブンカレッジの『鏡の間』にいた。
 僕の着ているものと同じ、式典服と呼ばれる厳かな衣装を身に纏った生徒たちがずらりと並んだ暗い部屋。中央に浮かんだ丸い鏡は『闇の鏡』というらしい。なんでも、この鏡が全世界からこのナイトレイブンカレッジに通うにふさわしい魂を持ったものを選定し、導き、そして、かのグレート・セブンそれぞれの精神に基づいた7つの寮に振り分けていくのだという。
 ……やっぱ魔法の世界ってそういうの多いんだな。
 他の人たちの寮分けも気になりつつ、僕は横目で周囲をこっそりと見回した。僕の生まれ育った地域にはあまり獣人族や妖精族の姿がなかったため、耳と尻尾の生えている人や耳が微かに尖っている人の存在にはどうしたって意識が向いてしまう。失礼も無礼も承知の上だ。今日だけだから許して欲しい。

 ──と、その最中。
 ふと、僕から見て右斜め前方に立っていた随分と背丈の高い新入生が、ちらりとこちらへ視線を向けてきた。
 フードの向こうに覗いたのは、鮮やかなターコイズブルーの髪先と、メッシュになっているらしき黒いひと房。吊り気味で切れ長な目元は涼しげで、見た人に怜悧な印象を持たせる。薄暗さの中にもはっきりと分かるほどに整ったその相貌は、傾国の美女も裸足で逃げ出すほど、と称しても過言ではないだろう。
 左右で色の異なる瞳と、視線が交わった。
 瞬間、僕はどうしようもない程の『嫌な予感』に胸を蝕まれる。

 目が合った僕へにこりとたおやかな笑みを浮かべた彼は、次の瞬間名前を呼ばれ、僕に背を向けて闇の鏡の前へと歩んでいく。ぴんと伸びた背筋に、丁寧な所作。からり、とその左耳に魚の鱗のようなピアスが揺れる。

「汝の魂の形は……──オクタヴィネル寮!」

 ジェイド・リーチと呼ばれた彼は、どうやら慈悲の精神に基づいた寮へ振り分けられたらしい。それを理解した直後から僕の頭を占めた言葉は、ただひとつ。

 ──……っ!! オクタヴィネル寮は嫌だ!!

 どうやら彼の双子の兄弟らしいフロイド・リーチという名の生徒が騒ぎを起こしている間も、ずっと、ずっと、僕の頭の中にはそれだけ巡り巡っていた。
 何故そんなことを願ったかって? ……察してしまったからだ。彼という存在によって、理解したくはない現実の可能性に気付かされてしまったからだ。おい、嘘だと言ってくれよジョニー。頼むから、後生だから。
 冷や汗が背筋を伝い落ちていく。手のひらが冷えて、まるで氷漬けになってしまったかのようだ。

 僕の察知したその可能性とは、すなわち。

「ランディア・モルデスティー!」

 彼と僕が、完全なる『キャラ被り』をしてしまっていること。加えて、彼が僕の完全なる上位互換であること。……つまり、メインキャラクターは彼であり、『僕』はただのモブキャラにしかなりえない、という可能性が、今この瞬間、突然僕の目の前へ浮上してきたということ。

 …………は? そんなの許しませんけど???

 僕は激怒した。
 たとえこの世界の歩むべきストーリーが一体どんな形をしていようと、そのストーリーに『僕』の存在など一切お呼びではなかろうと、あちらが本当のメインキャラだろうと、必ずかのキャラ被りも甚だしいいけ好かない男──お前が言うなという言葉は今はそっとしまっておいて欲しい──を下し、その座を乗っ取り、他でもない自分こそがメインキャラになってみせようと決意した。
 だって、そうしなければ、俺は一体何のためにここまでキャラ作りに全力を注いできたというのかという話になってしまうだろう。……まあ、8割ぐらいは途中から俺も楽しんで僕作りをしていたから、そこは全然いいんだけど。やるからには完璧を目指したい俺の心が、この現実を全力で否定したがっていたのだ。

 覚悟しとけよジェイド・リーチ……!!
 僕こそが、真の『穏やかで優しげに見えて実は滅茶苦茶不穏で物騒な秘書タイプキャラ』だってことを、この世界とお前に知らしめてやるからな……!!

「汝の魂の形は、イグニハイド!!」

 僕はランディア・モルデスティー。前世の記憶がある転生者。
 ナイトレイブンカレッジのイグニハイド寮に所属し、2年生でその副寮長となる優等生だ。
 引きこもりでほとんど自室から出てこないイデア寮長のサポートをオルトくんと共に完璧にこなしながら、裏の顔である情報屋も続けている。

 そんな僕のライバルは、オクタヴィネル寮のジェイド・リーチ。
 全て全てが僕の上位互換な彼だけれど、だからって負けるわけにはいかない。
 相手が人魚で、双子(しかも過去がやけに重い)で、幼馴染とのさんこいちで、オッドアイで、飛行術が苦手で、キノコと山が好きで、山を愛する会で、靴が好きで、計画的愉快犯で、エトセトラエトセトラ……、なんていうとんでもないほどの要素を詰め込まれた男だろうと。負けるわけにはいかないのだ、絶対に。……いや、重たい過去は辛くなるから要らないな。うん。ごめん。

 まあでも、ほら。
 キャラ被りって良くないと思うんだよね。僕。


 これは、そんな僕と彼による、仁義なき戦い(十割一方的)の記録である──……



(夢主の設定とか)

ランディア・モルデスティー

・前世の記憶有、ツイステ知識なし(D知識もほとんどなし)の転生者
・転生した先が異世界のハイスペックイケメンだったから多分何かの作品のキャラに成り代わり転生したんだろうなって勝手に勘違いした
・正気か?
・そして勝手にキャラ想像して勝手に努力して勝手にこうなった
・極めつけには勝手な言いがかりつけてジェイドに対抗心燃やし始めた
・何なんだお前(困惑)
・自分が楽しければそれでよし精神
・情報屋的な『慈悲』よりも『勤勉』の方が根っこに近いのでイグニハイド寮に振り分けられました、サイバー系にも強いしね
・何かにつけてさり気無くジェイドに張り合ってみたり内心でジェイドへの嫉妬で歯ぎしりしてみたり負けて堪るかって努力を積み重ねたり時々落ち込んだりする
・本人は隠しているつもりだけど割とバレバレだったりしたらかわいい
・情報屋ってことでアズールとたまに手を組んでたりしてもいい
・監督生が登場した時には内心で「キタコレ!!」って叫んだ
・けど普通に突然異世界トリップに巻き込まれた監督生には同情と憐みしかないので色々面倒見たり優しくしたりした

・フラグは多分沢山立ってる
・本人は気づいていない

・そんな感じの「ドタバタ異世界転生BLラブコメディ〜勘違いもあるよ!〜」なジェイド夢が読みたかった
・ジェイドの前で素の『俺』でギャン泣きさせたかった(本音)

おわり


2020/10/6 支部にて初公開
2020/11/4 サイトにて公開

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