「うんっっっま!」
『そりゃ良かった』
「いや、美味すぎる。美味すぎ学園高等部やん」
『うますぎがくえん?』
聞き慣れない単語に疑問を浮かべている私なんて気にもせず、カレーをパクパクと口に運ぶ高橋くん。彼が人気アイドルで同じマンションに住んでいると知ったのは、つい数十分前。今は一緒にカレーを食べている。人生って本当何が起きるかわからない。
「これ、カレーに生姜入ってる?」
『あ、そう。少しスパイシーになるように入れてたけど、生姜ダメでした?』
「いや、逆!逆!俺、めっちゃ生姜好きなんす。好きな食べ物ガリやし」
『え、好きな食べ物ガリとかマニアック…』
まぁ、なにわともあれカレーは彼のお口に合ったようで良かった。あっという間に平らげて、おかわりはいる?と聞くと良いんすか?!とさらに目を輝かせた。何だか大きな犬みたいだなぁ。
『っていうか、高橋くん本当にアイドルだったんですね』
「疑ってたん?」
『いや、MV見たらめっちゃキラキラアイドルじゃんって』
「今もキラキラしてるやろ」
『それ自分で言う?』
おかわりしたカレーも食べ終わり、とても満足げな高橋くん。私のお腹も満たされて幸せ。彼はグーっと背伸びをしてから「手作りカレー食べたん、久しぶりやぁ」と呟いた。
『高橋くんって一人暮らし?』
「そうっすね。デビュー前は大阪で実家やったし、こっち来てまだ一人暮らし始めて3ヶ月くらい」
『自炊するんですか?』
「しようとは思うねんけどなぁ。最近忙しいし専らコンビニか外食」
男の一人暮らしだと自炊も難しいのだろう。何より超多忙のアイドルだ。睡眠時間も短いだろうし、外食やコンビニになってしまうのも仕方がない。
「でもなぁ、やっぱコンビニとか外食ばっかやと家のご飯食べたいなぁって思うやん」
『確かに』
「栄養も偏るし、体力つけなあかんのに外食ばっかで力つかへんから自炊せなあかんなぁとは思うねんけどなぁ」
『忙しいとなかなか難しいですよね』
「だから今日凛さんと会って、こうやってカレー食べれたんがめっちゃ嬉しい」
『それなら良かった』
食後の温かい緑茶を出して、少し雑談タイム。自宅ドアを開ける瞬間まで彼を警戒していたのに、素性を知ってからはお互い気持ちも砕けてきたように思う。
「そういえば、一個気になることがあるんすけど」
『ん?』
「凛さんっていくつなんすか?」
マナーとして女性に年齢は聞かない方が良いのでは?と一瞬頭によぎったけれど、別に秘密にする必要もないかと納得する。こちらに視線を向ける彼に「26だよ」と伝えると「丈くんと一緒やん」となぜか嬉しそう。丈くん?が誰かわからないけど、彼が心を許している人なのだろう。
『高橋くん、いくつ?』
「俺22っす」
『若っ!』
「いや4つしか違いませんって」
『4つも違ったら十分若いです』
そんなに変わらへんよーと笑う彼に釣られて私も笑う。俺より年上なら敬語やなくてえぇですよという提案が。それなら高橋くんも敬語やめてねと返すと、了解っすと案外すんなり受け入れるんだなぁと、また笑ってしまうのだ。
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