僕だけの秘密

リスケになった雑誌撮影の日。ヘアセットしてもらいつつ、個人撮影が始まった。個人が終わったらペアで撮影。今日は大吾くんと一緒らしい。


「うっわ、うまそ」


大吾くんがポツリと呟く。彼が読んでいた雑誌をチラッと見ると、この間俺が見てたグルメ雑誌やった。


「やばい。カレー食べたい」

「大吾くん、昨日もカレー食べてたやん」

「そうやけどー、カレー好きなんやもーん」

もーん、と間延びした可愛い声を出す大吾くんは一応俺より年上。まぁ、確かに俺もその雑誌見てカレー食べたくなってもうたんやっけ。


「俺、先週めっちゃ上手いカレー食いました」

「え?そうなん?どこの?」

「どこ、」


凛さんが作ったカレーめっちゃ美味かったな、と思ったらつい言葉に出していた。俺の言葉に反応した大吾くんに、どこの?と聞かれて喉まででかかった言葉を飲み込む。


「どこ、…どこのやったかなぁ?」

「なんやねん、それ」


呆れたように笑う大吾くんと一緒に笑う。西畑さん、高橋さんお願いしますー!と声がかかり、椅子から腰を上げた。
ほぼ初めましての女の人の家でカレー食べました、なんて言うたら大吾くんはどんな顔すんねやろ。絶対怒られる。ホイホイ知らん人についていったらあかん!何入ってるかわからへんねんで!って絶対言われる。うん、言わんとこ。


「?…なにニヤニヤしとん」

「ん?内緒っす」


あのカレー美味しかったな、と思い出したら自然と頬が緩んでたらしい。カメラのシャッター音が聞こえ、スッと表情を変えた。



▽ ▽ ▽ ▽


ひょんなことからアイドルである高橋くんと夕食を共にしてから1週間ほど。日常の中に彼のグループがたくさん関わっていることに気づいた。有名なミステリードラマの主題歌を担当していたり、今見ている朝の情報番組のテーマソングまで歌っている。逆に何で知らなかったんだろうというくらい。


『お、今日1位じゃん』


星座占いが1位だと何となく気分が良い。トーストをかじって咀嚼しながらテレビに目を向ける。次はエンタメコーナーです、と伝えられた声と同時に画面に映し出された見覚えのある人。


「なにわ男子、高橋 恭平さんが出演している映画の特別映像が届きました!」


アナウンサーさんがにこやかに映像の話をしている間、私はじっと画面を見つめた。おぉ、なんか、本当に芸能人じゃん…とポカンと口を開けたまま見ていたと思う。彼が出演している映画が今週末公開だそうだ。学ラン姿に幼さを感じる。すごい、この間会った感じとは全然違う。


『なんか、すごいな』


カレーが食べたすぎて死にそうだと項垂れていた彼とは別人に見える。でも無駄に良い顔面は同じだ。不思議な感覚だな、と思いながら違う話題になったタイミングで皿を片すために立ち上がった。

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