ライブが終わってスタッフに挨拶をしながら、すぐにスマホのロックを解除する。凛さんからのメッセージは……無い。うん、まぁ、まだ終わったばっかりやし。これから規制退場もあるやろうから。メッセージが来てないことに少し残念な気持ちを抱えつつもシャワー室に直行。あとでゆっくり連絡したらえぇやんな、とスマホを閉じた。
「なぁなぁ、恭平」
「うっわ、大吾くんに捕まった最悪や」
「あの子来とったん??恭平の彼女」
「彼女ちゃうって」
シャワー室から出てタオルで頭を拭いていたら、入ってきた大吾くんに捕まる。絶対凛さんのこと聞かれるってわかっとったから、捕まらへんようにしてたのに。
目の前でニヤニヤしている大吾くんを軽くあしらいながら再びスマホを見るけど凛さんからのメッセージは無し。ライブが終わってもう少しで1時間経つ。凛さんのことやから、終わったらすぐ感想送ってきてくれるんちゃうかなと思っててんけど。なんか、嫌な予感。
「どうしたん?」
スマホ片手に固まった俺を見て大吾くんが不思議そうな顔をしとったけど、なんでもないっすと言ってシャワー室をでた。
俺から今日どうやった?って聞くのはアリなんかな?いや、でもちょっとウザい?いつに無く悩んだ挙句「今日は来てくれてありがとう。無事にホテルついた?」とだけメッセージを送って誰にも気づかれないような小さいため息をついた。
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『……ひっどい顔』
目覚めて鏡に映った自分の姿に大きなため息がでる。なんだ、この腫れた瞼。
こんな酷い顔になった理由はわかっていて、昨日はいつの間にかホテルに着いていて、シャワーを浴びることもなくベッドにダイブ。ライブ中のアイドル高橋くんを思い出したら、なんだかモヤモヤした感情が消えなくて自然と溢れる涙を止めることなく寝てしまったら、ものの見事に酷い自分の完成。
『シャワー浴びよ、』
部屋の時計は朝の6時半をすぎたところで。今日は昼過ぎの新幹線で東京に戻る。朝食ビュッフェを食べてからチェックアウトしなきゃなと寝起きの頭を働かせて、気怠い体を引きずるようにシャワーを浴びた。
『あ、スマホ充電して無いじゃん』
枕元に置きっぱなしになっていたスマホは充電されることなく放置されていて。近くに置いていた充電器を差し込んだら、画面がパッと明るくなる。待受画面と共に現れたメッセージに胸がドキリと跳ねた。
『………高橋くんからのメッセージ』
ライブの感想、送ろうと思ってたのに。どうしてもすぐ送る気持ちになれず結局送らないまま翌日になってしまって。申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、未読無視するわけにもいかず勇気を出して画面をタップした。
「今日は来てくれてありがとう。無事にホテルついた?」そのメッセージを見ただけで、胸がギュッとして瞳に涙が溜まる。泣くな泣くな。自分に言い聞かせて、スマホを握りしめた。
『もう頭の中ぐちゃぐちゃ』
高橋くんを好きだと自覚して。恋心を自覚したら彼がアイドルだということを再認識してしまって。わかってたはずが全然わかってなくて。ライブは楽しかったのに私の知ってる高橋くんじゃなくて。一気に私たちの住む世界は違うのだと突きつけられたような気がして。この恋心はどうするのが良いんだろう。
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「ん、」
ブブブ、というバイブ音で目が覚める。普段やったらこんくらいじゃ起きひんのに。スマホ片手に握ったまま寝ていたから自分を起こした正体はすぐにわかる。薄目で時間を確認したら朝の7時過ぎ。まだ寝れる。と、思ったけど画面に映る凛さんからのメッセージに一気に目が覚めた。
『返事遅くなってごめんなさい。昨日はとても楽しかったです。誘ってくれてありがとう。今日のライブも頑張ってね』
返事が来た安堵感で一度起き上がったベッドに再び沈む。良かった、返事来た。普段あんまり返信が遅くならへんから無駄に心配した。良かった。……けど。なんか胸のモヤモヤが晴れへんくて。なんやろ、この違和感。こういう時の勘って大抵当たんねん。
「…あかん、ねむい…」
凛さんからのメッセージに何か違和感を覚えながらも、襲ってくる睡魔には勝てへん。今日は仙台公演最終日。凛さんは昼過ぎの新幹線で帰るって言うとったな。次の北海道公演まで1ヶ月くらい空くし、また2人で飲んだりできるかな。アイドルの俺、かっこよかった?って聞いたらなんて答えてくれるんやろ、ここまで考えて思考は夢に溶けていった。
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