翌日、真凛ちゃんと共に新幹線へ乗り込んで久しぶりに大阪へ帰ってきた。ん〜っと背伸びをして大きな深呼吸を一つ。耳に入ってくる関西弁がなんだか心地よい。
「あ、夏美もうこっちついてるって」
『じゃあ、ロータリーのとこ行こっか』
真凛ちゃんの妹、夏美ちゃんが駅まで車で迎えに来てくれると聞いたのは今日の朝。私の母もすでに道枝家にいるらしく、私も一緒に乗せてもらうことに。
ロータリーへ向かうと夏美ちゃんの姿が見えて『久しぶり〜!』と手を振った。
「奈那ちゃん、久しぶり!お正月ぶりやんね」
『そうだねぇ、夏美ちゃんまた可愛くなって』
「奈那、親戚のおばちゃんっぽい」
『もう親戚のおばちゃんみたいなもんだよ〜』
真凛ちゃんが助手席、私が後部座席へと乗り込む。2ヶ月ぶりだからそこまで久しぶりなわけじゃないけれど、窓の外を見て地元に帰ってきたなぁとリラックスしてしまう。3人で話していたらあっという間に道枝家に到着。真凛ちゃんママに会うのもお正月ぶり。
「ただいま〜〜」
『お邪魔します〜』
玄関ドアを開け、挨拶をしてから靴を脱ぐ。リビングからバタバタとお迎えしてくれたのは、道枝家の可愛い愛犬ちゃんたち。3匹全員によしよし〜!と撫でていたら真凛ちゃんママが出迎えてくれた。
「真凛、おかえり。奈那ちゃん、久しぶり〜いらっしゃい」
『お久しぶりです〜!親子共々、お邪魔しちゃってすみません』
「あら、奈那おかえり〜」
『も〜お母さん、また道枝家に入り浸ってるの?』
リビングへと足を進め、我が家かのようにくつろいでいる自分の母に笑ってしまう。母には昨夜、隣に空き巣が入ったこと、真凛ちゃんと大阪に帰ることを連絡したら「了解〜!」と可愛らしいスタンプだけが送られてきた。空き巣なんて怖いね、とか返信くるかと思ってたのにスタンプ一個って!と昨夜は真凛ちゃんと大笑いしたっけ。
世間話もほどほどに、真凛ちゃんママに東京土産を渡して、ソファーに座ろうと思ったら、久しぶりの声が聞こえた。
「あれ、ねぇちゃん帰ってきたんや」
「お、デビュー組」
『あ、駿くん!』
声の主は、部屋着にメガネ姿、若干髪の毛に寝癖がついている完全オフモードの駿くんだった。正月に挨拶した時以来だから、実に10ヶ月ぶり。東京と大阪を行き来してると聞いていたから、実家に帰ってきてるとは知らなかった。
「え!あ、えっ?!奈那ちゃん!?」
『駿くん、久しぶり。お邪魔してます〜!デビューおめでとう!』
「え、あ、あり、ありがとう、ございます…」
私の姿を見て思いっきり驚いている駿くんに道枝家の面々はニヤニヤ笑っている。彼の反応的に私がここにくることを内緒にしていたのだろう。サプライズゲスト、ともいえない私がくることを黙っておくのは謎だけど。
「ちょ、奈那ちゃんも来てるなら言うてやぁ!」
「あれ〜?言うてなかったっけ〜?」
白々しく言う夏美ちゃんを睨んでからバタバタと駿くんは洗面所へと向かった。今をときめくアイドルの貴重な完全オフ姿見ちゃって、すみません!と思いつつも、小さい頃から知っている彼の姿に「また身長伸びてない?」と疑問も浮かぶ。
「奈那ちゃん、聞いたで。家、空き巣入ったんやって?」
真凛ちゃんママがコーヒーを淹れながら、こちらを向いた。隣人宅空き巣事件を母から聞いたのだろう。少し眉を下げて答えた。
『さすがに空き巣入った家にいるのは怖くて、引っ越しも考えてるんだけど』
「え!奈那ちゃんち、空き巣入ったん?!」
「駿、さっきからうるさい」
洗面所から慌ただしく戻ってきた駿くんに真凛ちゃんが突っ込む。眼鏡からコンタクトにチェンジして髪の毛を水で濡らしたのか、必死に寝癖を直している駿くんに『隣人宅にね』と返事をした。
『なかなか条件に合った場所見つけられなくてさぁ』
「セキュリティしっかりしたところじゃなきゃあかんな」
「都内のマンションって高いんやろ?ほら、今、駿も家探ししとるとこやから」
母'sが言う言葉にうんうんとうなづく。コーヒーにミルクと砂糖を入れて、一口飲む。駿くんもこれからは活動拠点が東京になることで引越しを検討中らしい。
「駿が探してるマンションってセキュリティしっかりしてるところなんやろ?」
「まぁ…一応」
『芸能人が住むようなところはセキュリティすごそう。そして家賃も高そう』
「もう、いっそのこと奈那と駿、一緒に住んだらえぇんちゃう?」
さらっと言った真凛ちゃんの発言に全員の動きが止まる。え?今なんて言った?
「ねぇちゃん何言うてんの」
「ん?せやから、奈那と駿、一緒に住んだらえぇやん」
平然と言ってのける真凛ちゃんに驚きを隠せないでいると、何故か私と駿くん以外のみんなは「その手があったか!!」と大盛り上がりしだす。……え????どういうこと??
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