何故か紙の内容が気になった


うちは、今の生活に退屈していた。
高校を卒業して早2年。今は居酒屋のバイトをしているフリーター。起きて、ご飯食べて、バイト行って、働いて、帰って寝て。休みの日は趣味のカラオケに行って、歌って。
そんな在り来たりな生活を続けている。
昔は夢もあった。歌が好きやから歌手になりたいなとか、踊るの好きやからダンサーになりたいなとか…。…でも結局『なりたい』止まり。
このまま、だらだら生きててええんかな〜…なんて思っても、それを変える為に何かするでもない。
そんな生活を送っていたうちの人生を変えたんは…ある日、うち宛に届いた1通の手紙やった――



***



「ふっっ…あぁぁ〜…暇やぁ〜…」

今日は5日ぶりの休日。
世の学生は夏休み最後の日を楽しんでるんやろな〜。うちは、毎日毎日バイトに明け暮れる生活。休みの日は友達とカラオケに行くか、こうやって日がな一日ぼ〜っとして過ごしてる。
別にこの生活が嫌いって訳やないねんけど…何かもっと…刺激がほしいよな〜…。漫画みたいに、ありえへん事起こったりさ〜…って、ありえへん事ってどんなやねん…。
な〜んて自分の言った事につっこんでみたり…はぁ〜…ほんま退屈やわ…。

「名前〜、手紙来てんで〜!」

1階からお母さんの声が聞こえた。…手紙?どうせDMか何かちゃうん?
うちは重たい体を起こして手紙を取りに行った。

「どれ?手紙って」
「そこのテーブルに乗ってるやつ」

キッチンで洗い物をしてるお母さんが顎で指した先に、白い手紙が置いてあった。
DMちゃうんや…誰やろ〜……ん?差出人書いてないし…。
ちょっと怪しい手紙やと思ったけど、取り合えず中見ようと思って封を開けながら自分の部屋に向かった。

「えっと〜、なになに…苗字名前様――

 暑い日が続きますが、如何お過ごし
 でしょうか?
 毎日何の刺激もなく退屈されている
 事でしょう。
 そこで苗字様にドキドキいっぱい
 沖縄旅行をプレゼント致します。
 期間は8月1日〜8月31日まで。
 その間で必要な物は全てこちらで用
 意させて頂きました。
 今夜0時にお迎えに参ります。
 では、刺激あるひと夏をお過ごし下
 さい。――

手紙を読み終わり、ベットに身を投げた
……何、この手紙……沖縄旅行?8月1日〜8月31日って…今日で終わりなんすけど…。
怪しさMAXな手紙を読みながらつっこみまくっていた。
いや、つっこまなアカンやろ!関西人としては!…どうせ誰かの嫌がらせやろ〜。
そう思って手紙をぽいっと床に落とす。
でも、何故か手紙の内容が気になった。

「―今夜0時に迎えに来る…か…」



***



あの手紙を読んで目を瞑ったらうちはそのまま寝てしもたらしく、気が付けば空は紅く染まっとった。
部屋を見れば妹がうちの部屋でゲームしとって…その後一緒に夏休みの宿題手伝わされた。
ゲームやってるくらいやったら自分でしーや…。
そんなこんなで時間はあっと言う間に過ぎ…――

「23時55分……」

うちは手紙の内容が気になって、取り合えず身支度を整えていた。
身支度と言っても、出かける時の様に身なりを整え、貴重品を鞄に入れただけやけど…。
あんな手紙をちょっと信じてる自分がアホみたいやけど…何か心に引っかかるねん。何でなんやろうな…。

「後5分か〜。…迎えって何で来んねやろ?リムジンとか来たら笑えるな〜!…でも、今から飛行機とか出てんのか?」

うちは携帯を開いて時間を見た…。刻一刻と0時が近づいている。
窓から空を見た…今日は星がぎょ〜さん見えるわ…。
時計の短針音が部屋中に響き渡る。
沖縄…か。どんなとこなんやろ…。
星を見ながらそんな事を考えていると、時計が0時を指した…。

――何も起こらない

…やっぱ嫌がらせやったんか。
そう思って視線を部屋へ移した時やった……窓の外から眩しい光が入ってきた。

「なっ!!」

眩しすぎて目を細めた。すると、頭に言葉が響いた。

―お待たせいたしました。では、ひと夏の旅を存分にお楽しみ下さい

そう響いたと同時に、うちは光に包まれた――


しおり
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