満天の空やった


「ふ、あぁぁ〜…」
「もう12時か…そろそろ寝るか、裕次郎」

わんは今日、凛の家に泊まりに来ている。
夏休みに入って数日が経ち、明日から8月。全国大会が間近に控えたわったーは毎日練習に明け暮れている。明日もまた早乙女のスパルタ練習が待ってるんだろうな…。体力残しとく為にもそろそろ寝るか…。
そう凛に言って、布団に寝転んだ時だった――突然、窓の外が光った。

「ぬっ、ぬーがや!」
「まぶしっっ!」

雷の光とかじゃねえ。それにしては光が長い。目の前に手を翳し、光が治まるのを待った。数秒して徐々に光がひいていき、わんと凛は窓を覗き込んだ。
少し離れた所にある浜辺に光が集まって、それが段々小さくなって…消えた。

「ぬーがや、さっきの光」
「…光…浜辺で消えたな…」

わったーは顔を見合わせ、何も言わず部屋を後にした。



***



「たっしか…この辺だったはず…」

光が消えた浜辺に着いて、わったーは辺りを見渡した。

「取りあえず浜に下りてみようぜ!」

凛に言って、浜への階段に向かった時だった。

「…甲斐くん…それに平古場くんですか?」

聞き慣れた声に振り返ると、近くに木手が立っていた。

「木手?どうしたば、くんな時間に」
「永四郎ん家、こっちやあらんに」
「親戚の家で酒盛りをしていたのですが、時間が勿体なかったので帰っている途中です」

それにしたって、くぬ時間に帰るとのはどうかと思うぜ…まぁ、木手なら何が出たって大丈夫だろうけど。
そんな事を考えてると、木手の眼鏡がギラリと光った気がして目を逸らした。

「ところで、キミ達はこんな所で何をしているんですか?」
「あぁ。わったー変な光見たんさ」
「光…そう言えば、さっきそんな事がありましたね」
「永四郎も見たば?」

木手は空が白く光ったのを見ただけで、余り気にしてなかったらしい。だからわったーの見た事を話した。

「…確かにおかしいですね」
「だろ?」

腕を組んで考える木手。
じゃあ3人で浜を探そう…そう話した時、海岸沿いの道を走ってくる2台の自転車。
…どこかで見た格好だな…そう思い目を凝らして見た。

「…あい?やったー何してるんば?」
「慧君!それに知念も…」
「どうしたんですか、キミ達」

話を聞くと、どうやら2人の家からもあの光が見えて、気になってここに来る途中で一緒になったらしい。
とにかく、あの光がなんなのか手分けして探す事にした。

「…ん〜…何もない…か。木手ぇ!そっちはどうだ?」
「何もみつかりませんね」

声を掛け合い、夜の浜辺を歩いた。でも別に変わった所はこれと言ってない。
腰に手を置いて、やっぱり見間違いだったのかなと半分諦めてた時だった。

「…ん?あれ…」

口を開いたのは凛だった。

「何か見つかったか?凛…」

わんの問いに答える前に駆け出した凛。わったーも凛の後を追った。
しゃがみ込んだ凛の傍に寄ると、凛の腕の中には――女の人が横たわっていた。



***



「――――!」

…うちどうしたんやろ……そうや…昼間に変な手紙が届いて…沖縄旅行がどうとか……。

「ぉ―――っ!!」

それで……0時になって…光に―――

「おぃ!しっかりしーね!!」
「?!」

その声に驚いて、うちは眼が覚めた。少しぼーっとして何も考えられへんかったけど、意識がしっかりして来て周りを見ると、見た事もない男の子達がうちを見下ろしとった。
…何で…うちの部屋に男の子が…?

「気が付いたみたいやっし〜」
「何でこんな所で倒れてたんでしょう…」
「ぃやー、大丈夫か?」
「腹でも減ったば?」

男の子達が口々に聞いてくる。

「うちは……――っ!!」

ハッとしてうちは支えられてた身体を勢いよく起こした。

「っと、危ないやっし!顔面衝突すっさ!」

支えてくれてた金髪の男の子が怒って言ったけど…うちは聞こえへんかった。
目の前の景色に呆然としたからだ。
さっきまで、自分の部屋にいて、ベットにのっかってた筈やのに――
目の前に広がるのは、静かに波打つ海と――満天の星空やった…。


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