…何でってんねん


「……んっ……まぶし……」

窓から差し込む朝の光で目が覚めた。
目を開けるといつもと違う景色に戸惑い、少し考えてから沖縄に飛ばされた事を思い出した。
うちは天蓋付きのベットから足を下ろし、う〜んと背伸びをしてテラスに出た。
昨日は真っ黒だった海が、青々と綺麗に光っている。うちが見てきた海とは大違いや。
…にしても、暑い!沖縄と言うだけあって暑い!!
しかも真夏やからその暑さは半端やない…何度も言うけどあつーーーーぃい!!
…叫んだって暑いのがなくなる訳やないねんけどな…。

さて、今日はどうするか!
…取りあえず借りたまんまの靴返しに行って〜…街にでも出てみるか。
ここCD置いて無いからつまらん!!うちは何やるにも音楽聞かなやる気おこらんねん。
あっ、でもうち平古場君の家知らんわ…電話番号も知らんし…昨日聞いとけばよかったな…。
そんな事を考えてると、門の所に人影が見えた。

「お〜!おはよ〜!苗字さん」
「よかった〜、起きてたさ〜」

手を振ってるのは平古場君と甲斐君だった。
うちもテラスから手を振り、急ぎ2人の所へ向かった。

「おはよ〜さん!」
「うぃっす!」
「どうしたん?こんな朝早くに」

さっき時計見たけど、まだ7時過ぎたとこやった。
沖縄の人って朝早いんかな?

「わったー、今からそこの浜辺で練習なんさ」
「練習?部活の?」
「そそ。わったー比嘉中テニス部なんばーよ!」

そう言って背中にかけてる大きな鞄を見せる。

「部活始まる前にちら見に来た」

にこっと笑う2人を見ると、うちも自然に顔がほころぶ。

「ありがと〜。へ〜、テニス部か!うちも中学ん時テニスしとってんで!」
「じゅんにか!じゃあ今度一緒に打ち合いしようぜ!」
「でも、うち軟式やってん。硬式やった事ないし」
「大丈夫さ〜!わったー教えるし」

2人共運動神経良さそうやもんね〜。テニスも上手いんやろな〜!

「じゃあ、今度お願いしようかな?年寄りなんやから手加減してや〜」
「年寄りって…ぃやーまだ20歳だろ?」
「人間20過ぎたらおっさん、おばはんやの!」
「ぬーがそれ!」

そう言ってけらけら笑う2人。何だか微笑ましいな〜。
うちより20cm位背ぇ高いけど、やっぱ中学生なんや。顔が幼くて可愛いなぁ。

「でも、何でテニス部が浜辺で練習??コートでせんの?」
「わったーの監督、やたらとスパルタ主義なんさ」
「じゅんに…何言い出すかわからんさ〜」

溜息を付いて言う2人。
…一体スパルタって…どんな練習してんねやろ…。

「っと、凛!もうすぐ始まるさ!」
「おっ!遅れると永四郎かしましーしな!」
「じゃっ、また遊びにくーさ!」

そう言って浜辺の方に向かって走って行った。
…ええなぁ〜何か楽しそうで。…あっ!平古場君に靴返さな思てたのに!…まぁ浜辺で練習してる言うてたし、後で行って見よう!
うちは踵を返してうちに入った。



***



「よーし、いざ出陣!!」

1人号令を掛けて門を出た。
…にしても、この洋館ホンマに何でも揃とった。
服や靴や鞄、下着までも!しかもサイズぴったりやし。
…何で知ってんねん。まぁ考えたってしゃーないけどな。

「え〜っと…まずは銀行やな」

取りあえず金下ろさんと。
自分の部屋に携帯も財布も置いてきてしもたから今は無一文。
何するにしても金無かったら何もできんしな〜。指定の銀行、大手やしすぐ見つかるやろ!…でもここの銀行去年合併せーへんかったっけ?
そんな事を考えながら、うちは丘を駆け下りた。

「うわぁぁ〜!綺麗やなぁ!」

今日は快晴!青い空、青い海、照りつける太陽!見るもの全てが大阪と違って見える。

銀行はすぐ見つかった。ATMでお金を下ろし、近くのスーパーに立ち寄った。
こんな暑い中練習してる彼等に差し入れしたろ〜と思って入り口に置いてある籠に手を伸ばした。

「ん〜…何がええかな?やっぱ無難にポカリとアクエリとか…お茶も一応買ぉとくか!部員何人おるか分からんし。…あとは、紙コッ……ん?」

うちは足を止めた。特売品の所にある『ゴーヤージュース』と書かれた緑色のペットボトル。

「………」

口をニヤリとさせ、それを籠の中にほりこんだ。
紙コップも買い、これでOK!さぁ〜、練習に励んでいるだろう彼等に差し入れだ!
ドリンクの入った袋を手に、浜辺へ向かって走った。

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