世の中というのは、理不尽だと思う。







新卒で入社して6年、それなりに場数を踏んで後輩も出来てやり甲斐だって感じてた。
"仕事してるワタシ"に時たま酔ってることもあった。誰だってそれくらいするよね?







「えっ倒産!?」

「私もさっき聞かされたばっかりでよくわかってないんだけどね…。なんか…、社長が経営資金持って逃げたんだって」

「…は?…………はぁ?!」


同僚の1人である彼女も、同じように寝耳に水のようで、驚きや絶望がないまぜになった表情だった。
私の大きな声にびっくりした様子で、"じゃあ伝えたから"とだけ言って自分のデスクに向かって行った。


え、そんな簡単に飲み込められないでしょこんなの。





少し前に支社が増えたりしててんやわんやしてたはずなんだけど…?
いきなり無くなるなんておかしい、とよぎったところで同僚の一言は頭を鈍器で殴られた気分にさせた。

逃げたってなに。



「俺も出社すると同時に言われたわ…。
ホラなんか…ちょっと前にウワサあったじゃん?あれかなって、課長が言ってたんだよね」

「噂…」

いい淀む隣のデスクの同僚の表情は強張っていた。
うわさとは、うちの会社の黒いうわさ、だ。

うちの会社は神室町にあるビルのテナントの一部で、どこにでもある普通の会社だ。
ただ、ここ1年の業績悪化、なのに支社設立なんかが怪しいと社内でうわさがあったのだ。

これまでの期間、神室町という場所にあっても裏社会の人間たちとは関わりがなかったはずだった。
それなのに今年に入ってなぜだか頻繁に来客があったり、
応接室に通される人がスーツなのに顔つきがどう見ても一般人じゃなさそうな人だったり、
社長がスマホ片手に謝っているような仕草をしたり、電話口からの怒鳴り声が漏れていたりと。

あげ出したらもうそれはクロじゃん。めちゃくちゃ役満じゃんみたいな状態だったのだ。

おそらくは目をつけられ、出資してやるとかなんとか言って支社を作らせてフロント企業にしようとしていたのかもしれない。

それでも、社内のみんなはいつも通り仕事をしてた。
不安もある中みんな立派に社会人やってたのに
家庭のある人だってたくさんいるのに
なのに、いきなり仕事なくなるってなんだよ。今4月なんですけど。

そもそも会社が倒産するには手続きが要るけど、夜逃げした人間がそんなことしてるとは思えないし何人か残っていた上役の人たちで倒産の手続きをするらしい。
その他の社員である我々平社員は全員今月いっぱいで退職、給料はギリ支払われるらしい。

まぁ、なんであれ絶望でしかないわけだけど。
つまり私たちはそれまでに次の仕事を探さなければならない。
思考の端で現実的なことを考えながらも、絶望と怒りで何本か血管が切れた気がする。
ぎゅっと握りしめた拳を机に向かって力一杯ぶつける。
バンッと大きい音がしたけど、同じようにしている人がちらほらいたのか誰も気にしていないようだった。





「今からどうやって仕事探すんだよ…」

「ほんとーーーに、それな」