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「今日からみなさんと一緒に働かせていただきます、みょうじなまえです。よろしくお願いします。」
「おう、改めてよろしくなァ。ウチは少数精鋭だったから助かるよ」
「みょうじさんが来てくれて嬉しいです。」
「わぁ!女性2人が話してるのってめちゃイイですね!新谷先生!」
「フン、どーせすぐ辞めんだろ」
「新谷先生!!」
「へーへー、すいませんね」
数ヶ月前、会社が突然倒産して目の前が真っ暗になった。
再就職がとても厳しいというのを、"お祈り"されるたびに痛感して、ガリガリに削られたメンタルのせいでぷつんとなにかの糸が切れたんだと思う。
社会人の基本中の基本であるおとなしい髪色をやめ、神室町では特段珍しくもないシルバーと黒をないまぜにした髪色にした
神室町っぽくて気に入っている。
まぁそのあとに知り合いの知り合いからここ、源田法律事務所を紹介されたのだ。
先生方の事務処理の手伝いからスケジュール管理や来客対応の仕事をお願いできる人を探している、と。
なんだかその頃にはもう吹っ切れてしまっていた私は面接もこの髪のままで行き、どうせ不採用お祈りの繰り返しと高を括っていた。
その予想超えた、その場での採用!と高らかに宣言されたことによって、あんなに苦労したハズの再就職が面接して15分で決まってしまった。
「じゃ、今日は星野くん…」
「いえ。私と、お願いします。」
「…だ、そうで。ハハ、さおりくんはなまえくんが来てくれるのずっと待ってたからなぁ」
「…嬉しいです。よろしくお願いします」
「はい」
食い気味のさおりさんの声に、源田先生も苦笑いしている。
このメガネもっさりのスタイルを貫通して美人オーラを出しているのが弁護士の城崎さおり先生だ。
面接の際にお茶出しをしてくれた人で、源田先生が採用と言った瞬間にありがとうございます、城崎ですこれからよろしくお願いします。と早口で握手された思い出がある。
女性が増えるのを待っていたと言わんばかりなのはわかるけれど、なんだか好感度がとても高い気がする。
「じゃあ今日はこの書類作成と、こっちの資料のまとめ方、私のスケジュールなどをお伝えしていきますね」
「…あっ、ハイ!」
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「この書類、この前教えたばっかりでしたよね?!すごい、めちゃくちゃわかりやすいですよ!」
「あ…えーと、はいありがとうございます」
「…あれ、この資料どこやったっけな」
「まとめたやつ、そこの箱に入ってませんか?」
「お、あったあった。サンキュー」
「源田先生、今日11時からアポあります。忘れないでくださいね」
「おーそうだった!あぶねえ。」
prrrrrr ガチャ
「はい、源田法律事務所です。」
「…覚えも早いし、丁寧だし、おまけに気遣いも完璧」
「そうですね、本当に」
「僕もっと先輩風吹かせたかったんですけどねぇ」
「正直助かってますよ、かなり」
彼女を源田法律事務所に受け入れることができてよかったと、改めて納得する。
面接にきた時は"派手な奴がきた"程度に思っていた。
以前依頼を受けたことのある知り合いから、"突然会社が倒産になって困っている子がいる"という話をもらったときは、ウチも閑古鳥が鳴いている状態で正直受け入れるつもりはなかったのだ。
しかし髪色は派手だったが、その顔つきに多少の修羅場に揺らがない芯を感じさせてくれた。
そして真面目で丁寧な履歴書の文字、髪色を物ともせずに面接にきた気の強さがウチに合っていると思ったのだ。
「うん、雇ってよかったな」
「はい」「さすがです先生!」「…ふん」
そろそろウチの秘蔵っ子、アイツにも会わせてやるかな。