死の報復6 エピローグ




「どうして?どうして止めなかったんですか?」

「殺すやつは殺される覚悟をすべきだ」

「そんな話をしてるんじゃない!
鈴木さんの、人生の話をしてるんです!!
人を殺させて…」
「思いを遂げられて本望だろう」


「……なまえが、ナイフと女性の間に入って怪我をしました。……誰かを傷つけてでも、思いを遂げなければならないんですか?!」

「!…………」





▽△▽



目が覚めたのはそれから三日後だった。この一週間、とてもハードなスケジュールのせいだったからだろう。気絶どころかただの爆睡だ。
ある意味休めて良かった。病院は至れり尽くせりだ。

鈴木さんが振り下ろしたナイフは肩と背中を裂いた。多少縫うハメになったものの、怪我は軽傷の部類に入る。

「ズレてたら死んでたかもしれないのに!?」
「いや〜あはは」
「ほんとに医師免許あるのこの子」
「無事で良かったです」

「ありがとうございます〜」

起きてから聞かされたのは犯人の女性は一命を取り留めたこと。そして鈴木さんは殺人未遂で逮捕されたことだった。
殺人罪じゃないだけ、良かったと思っている。
あの時飛び出して良かった。
そう言うと、東海林さんが泣き喚いて怒り、三澄さんは正気じゃないと怒り、久部さんだけが安堵の息を吐いていた。


念のために検査で一日追加の入院になっただけだというのに全員が見舞いに来てくれた。もちろん、説教込みだったけれど。

神倉所長、久部さん、三澄さん、東海林さん。いつものメンバーには一人足りない。

「ご迷惑おかけしましたー!」
「あっなまえー!おかえりぃ〜!」

退院したその足でラボに向かうと内勤の同僚たちと東海林さんが出迎えてくれた。
この数日ずっとこの調子で、半泣きのまま抱きしめられる。

「わたしほんっとに心配したんだよぉ〜!!!」
「わかってますって。もう何回も……めっちゃ聞きました」
「いくらなまえが元救命医だからって自分のことを治せるわけじゃないんだから…!」
「あーーー!はい!わかりました!ごめんなさい!!」

またもや説教が始まりそうなところを声で対抗する。結局この後神倉さんに捕まりお説教パート2が始まったけれどそれは割愛する。




▽△▽

「UDIラボが復讐殺人に加担したことになるんです。わかりますか?!」

退院後からずっと怒られている気がする。
いや、これに関しては本当に悪いと思っているので甘んじて受け入れるしかないけれど。
私、三澄さん、中堂さんの三人が所長室へ呼ばれる。三人で座るにはすこし窮屈なソファのど真ん中に座らされた。いくら三澄さんが細くても隣に180cmが来ると流石に狭い。

鈴木さんの事件を機に、いざこざがあった二人は少々の距離が必要らしい。主に三澄さんの怒りが強くて。


「すみません」
「私はわかっています。わかっていないのはこの人だけです。」
「……」

「三澄さんだってみょうじさんだって、私に内緒で中堂さんと調査を進めてたでしょ?!

今後、依頼解剖において事件性があると判断した場合は速やかに警察に届け出ること。
依頼主もしくは、遺族への説明は警察の判断に委ねること、わかりましたね?!ね!?」
「…はい」

「みょうじさんはしばらく解剖に入らないでくださいよ!デスクワークだけ!ねっ!」
「はあい」


背中の傷が引き攣ることもあり、しばらくは安静にするようにと言われている。
一応医師免許を持っている身としてはそこまで気にしていないのだけれど。過保護+お怒りの所長には刃向かわないでおこう。

「おい、ちょっと来い」
「…誰に言ってます?」
「…みょうじ、来い」


お見舞いに来なかった人に手招きされて向かう、備品倉庫へ足取りはやや重い。

「二度とするな」
「はあ」
「これは…俺のことでもだ」
「?嫌ですけど」
「なっ…なんでだ」

「私の行動をあなたに制限される謂れはありません。私もあなたの行動を制限したりできないので、やろうとしていることを止めたりはしません。いや、止まっては欲しいんですけど。」
「……」
「だからもし、同じ状況になっても私はもう一度飛び出します。命も賭けますよ」
「なんでだ」
「中堂さんだって命賭けてますよね?」

彼はきっと、もし。犯人を見つけたら殺すつもりだろう。そして、その後命を断つ可能性だってある。
自分の人生、彼女のために投げ打っているのだから。

私だって自分の人生投げうつ覚悟くらいある。
たじろいだ様子の中堂さんはそれ以上何かを言うこともなかった。


あなたは知らない。
今後も言うつもりだってない。
自覚していたとしても、こんなの意味ないって分かってるから。ただの自己満足なだけの気持ちだ。
手放す時が来るまで、私はこの気持ちを大切にする。


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