君にそばにいてほしいこと


哀れな双子。


そう、これ程にまで自分たちを形容するのに相応しいものはない。

小さい頃から引き裂かれ、別々の家の子として育てられて来た。


しかしながら、それ故に互いを思う気持ちは強いのだろう。



誰が何と言おうとも、離れることはない。







「……あ、の。宮田、さん?」


「何ですか?」


宮田は、戸惑ったような声に反抗するように応えた。
すると牧野は少し溜め息を吐き、肩を落として呆れた様子で言った。


「何ですかって……。あのですね」


「良いじゃあないですか。減るものでもないですし」


「あの、だからと言って後ろから抱きますかね?」


牧野がそう言いながら振り返ると、宮田は不思議そうに何を言っているのか解らないという風に首を傾げた。

その仕草を見た牧野は更に大きな溜息をつく。


牧野が困っている理由――それは、先程から宮田が背後から牧野を抱き締めているからだ。

ただ抱き締めるだけならまだ良かったのだが、牧野の髪を撫でたり首筋に触れている。

「最近、寒いじゃないですか……それに可愛かったもので、つい」

宮田の言葉を聞いた牧野は顔を真っ赤にして俯くと、小さく呟いた。

「釈然としませんね……私、男ですけど」

しかしそんな言葉など聞こえていないかのように、宮田は牧野の首元へ顔を埋めるとそのまま首筋へと口付ける。

ちゅっ、と小さなリップ音が響き、牧野はびくりと身体を震わせた。


「可愛いに、男も女もありませんよ。それに本当は嬉しいくせに」


「そ、そんな事……」


「じゃあ振り解かないのは、何故です?」


宮田は意地悪そうな声で囁くように言うと、再び唇を落とす。

牧野はその刺激に、消え入りそうな声で呟いた。


「それ、は……」

「自分に正直になれば良いんですよ」


耳許で響く低い声音に、ぞくりと背筋を走る感覚。

そしてそれを誤魔化す様に、牧野は強く目を瞑り宮田の腕を掴む手に力を込める。


「宮田さん……き、今日は用事で来たんですよね?」


震えるような声で牧野が尋ねると、宮田はくすりと笑って答えた。

「そんなに、恥ずかしがらないでください……ねぇ? 流れに身を任せるだけで良いんです」

まるで子供をあやすかの様な態度だ。

「病院の方に、怒られませんか?」

何とか話題を変えようと牧野が問うと、宮田は何とも言えない表情を浮かべる。

それがどういう意味なのか理解できないまま黙っていると、宮田は大きく息を吐き出して言った。


「心配要りません。そんなの、勝手に怒らせておけば」

「そ、そうですか……」


それ以上何も言えなくて、結局いつものように流されてしまう。


諦めにも似た気持ちになりながら、牧野は目を閉じる。

「……牧野さん」

「はい?」

不意に名前を呼ばれ、目を開けて返事をする。


「俺達は嫌でも離れられないんですから……」


宮田の声には何処か切なさが含まれていた。


その意味を理解するには充分すぎるほど、彼らは運命に翻弄されてきた。
けれど牧野は、敢えて気付かぬふりをして微笑むのだ。

「ええ」

そう言って、彼の腕の中で静かに笑みを深める。

すると宮田が抱きしめる力を強めて、牧野を強く引き寄せた。
この温もりだけは失わないよう、彼はただ祈るしかない。


「ずっと傍に居てください」


その願いに応える代わりに、牧野は彼の腕を優しく掴んだ。


(貴方さえいれば、他には何も望まない)


そう思いながら、二人は暫くの間互いの体温を感じていた。





(要するに俺は貴方の事が、好きだって事です)


fin.




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