消えてしまった者たちへ
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  • 驕りと代償

     今年のホグワーツにはいいものと悪いものがそれぞれやって来た。
     悪いものはなんとホグワーツにあの吸魂鬼がやって来た。どんよりしたホグワーツの雰囲気にやられて、生徒達も多少鬱気味だ。良いものは、闇の魔術に対する防衛術の先生にあのリーマスがやってきた。 これは素直に嬉しい。 セブルスの機嫌はすこぶる悪いが。

    「私に八つ当たりしないでよ」
    「そんなものしていない」

     この会話デジャヴだ。というか頑なだ。目つき悪いし、口調も荒いし。本当に迷惑だ。
    そういえばもう一つ新たに変わったことがあった。魔法生物学の教授の席にハグリッドが抜擢されたのだ。意外だったが、きっと上手くやってくれるだろう。

     ハリーは酷くソワソワしていた。きっとシリウスの話を聞いたのだろう。自分が狙われているかもしれないと知った彼は、どう動くだろうか。 危ないことはしないで欲しいが、きっと彼らには無理だろう。

     授業初日の朝、起きると首がヒリヒリして触ろうとして指先の異変に気付いた。

    「やっちゃったなぁ、これは」

     寝ている間に引っ掻いてしまったらしい。指先は真っ赤に染まっていた。これが何を意味するのか。私にはとっくに理解できていたが、考えることはしなかった。 本当はすぐにポピーの所へ行って、薬をもらうべきだろう。ただ、午前は全て授業が入っていたはずだ。
     家から連れてきたリス、シェアトは枕元でまだ寝息を立てている。私は着替えるとローブのポケットにシェアトを滑り込ませた。いつもの定位置になりつつある。 私はひとまず首にスカーフを巻いて誤魔化すことにした。午後になれば暇が出来る。その時でも遅くはないだろう。

     その日の午後、ポピーに会いに医務室に行くと、スリザリンのマルフォイ少年が片腕に包帯を巻いてベッドにいた。

    「……Mr.マルフォイ。怪我をしたのですか?」
    「セルウィン教授! どうしてここに!?」
    「それはこちらのセリフです。私はマダム・ポンフリーに用があるんです。……で、その怪我は?」

     マルフォイ少年は酷く驚いていたが、驚いたのはこちらの方だと思う。

    「………魔法生物学の授業でヒッポグリフに………」
    「ヒッポグリフ……?」

     驚いた。ハグリッドは初回授業でヒッポグリフを呼んだのか……。

    「この僕に爪をたてたんだ!絶対に父上に報告してやる!」
    「爪をたてられたんですか……。侮辱でもしたんでしょう?」
    「!!」

     図星のようだ。だが、ハグリッドがそれについて説明していないはずがない。

    「ハグリッドは言ったでしょう? ヒッポグリフは誇り高いから侮辱すれば襲ってくると…。ハグリッドだって阿呆ではありません。それを説明しているはずです。」
    「っ…………」
    「まあ、貴方が一方的に悪いとは言いません。というか状況がイマイチわかりませんし。………ただ」
    「ただ……?」
    「貴方がもし貴方の父親に報告すれば、ハグリッドは停職、最悪クビ。そのヒッポグリフは裁判にかけられて死刑となるでしょうね」
    「え………」

     そこまでは考えていなかったらしい。 私はベッドの横の椅子に座って目線を合わせた。

    「ハグリッドについてはある意味しょうがないでしょう。クビは避けたいですが。ヒッポグリフは自分を侮辱した相手に制裁を加えたわけですが、死刑にされるほどのものでしょうか」
    「それは………」

     ハグリッドはきっと酷く落ち込んでいる。マルフォイ少年は怪我を負った。どちらも充分な罰を受けた。

    「Mr.マルフォイ。あなたはもう少し自分の言葉の与える影響を感じるべきですね。貴方の一言が生き物1体を死においやることもあるのです」
    「…………」
    「貴方だって馬鹿ではないのですから、もう少し思慮のある行動をするべきでした。まあ、わかっているとは思いますが」
    「………はい。」

     やはりマルフォイはまだ子供なのだ。だからこそまだ間に合う。

    「今はやり返すことより、その傷を癒すことに専念しなさい。ある意味自業自得ですから。」

     私はマルフォイの頭を撫でた。

    嫌いな色で塗りつぶして