消えない違和感
「ただいま」
「お帰りなさいませ!、ラミア様」
「お帰り、ラミア」
何度も何度も呼ばれているその名前。レジナルドの口から出る耳に入る自分の名前に、未だ違和感が纏わりついていた。きっと自分にしか気づけない、そんな違和感。
夏休みが始まって数週間、私は変わらない日々を過ごしていたが、日刊予言者新聞はシリウス釈放の話題を大きく取り上げた。そして驚くことにシリウス無実の横に小さくピーターが逃亡したと書いてあった。
「あの青いリボンを付けたと言っていませんでしたか?あなたになら追えるのでしょう?」
「そのはずだったんだけどね……。全くわからないんだ。」
「わからない?」
「うん。あのリボンが外れることはないんだけど、可能性として一つ。リボンに込めた魔力より大きな魔力を当てれば一時的に追跡できなくなる。」
「何者かがそれを行っていると?」
「そうだね。ピーター自信にそんな知識も魔力もあるとは思えないし……。第三者による妨害がある限り残念ながら追跡できない。」
私があのリボンを作ったのは学生のころ。従ってそこまで膨大な魔力をあのリボンに込めたわけではない。第一妨害を受ける可能性など万が一にも考えていなかった。しかし今の私の追跡を一秒たりとも許さない妨害者は、相当魔力のコントロールが上手いのだと容易に考えられた。
「元々、反抗期だったエニフに付けようと思って作ったものだからね。そこまで強く作ってないよ。」
「そうだったんですか……。エニフにも反抗期があったんですね。」
「大変だったよ。全然手紙送ってくれないし、帰ってこないし……」
懐かしかった。レグと共に学校の中庭から塔の天辺まで探しに行ったのだ。
「結局リボンを付けることすらできずに、収まるのを待ったんだ。」
「大変だったんですね」
レジーはクスクスと笑っていた。
彼は覚えていない。
「あ、そうだ」
「どうしましたか?ラミア」
「来週の月曜日、クィディッチワールドカップの決勝戦があるんだけど……」
「私は行きませんよ」
「即答だね……」
レジーは未だに人が多いところにはあまり行きたがらない。ダイアゴン横丁は別だが。何となく予想は付いていたもののここまでバッサリ即答されるとは思わなかった。
「見るだけ見ればいいのに……」
「ワールドカップって確実に人が集まるじゃないですか。おことわりです」
まあ、しょうがない。そう思いながら、朝エニフが持ってきた手紙の束を手にする。
「あれ?ダンブルドアからの手紙だ。」
「ダンブルドア?」
ダンブルドアからの手紙なんて碌な内容じゃない。そう思っていながらもしょうがなく手紙を開いた。
「あー。レジー」
「どうしましたか?なにか?」
「日曜日も出かけることになった」
「別にかまいませんが、どちらへ?」
すごく行きたくない。なぜ私なのか。思うことは多くあるが、仕方がない。
「マグルの世界。ハリーを迎えに行ってシリウスのところに連れていくことになった」
「はい?」
「はぁ、すごく行きたくない」
溜息を吐きながら、やはりダンブルドアからの手紙には碌なことが書かれていない。そう思った。