消えてしまった者たちへ
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     ハリーは先日届いた手紙に目をやりながらソワソワしていた。


    Dearハリー

     日曜の夕方5時に迎えに行きます。荷造りをして、家の人に言っておいてください。



     メモのようなそれに差出人の名前は書いていなかった。届いたのは金曜日。一応荷造りを軽く済ませ、叔父に伝えてたが怪しい手紙にとても苛立っているようだった。
     実際誰が来るのかわからないし、来るのかも怪しい。部屋に籠ってただひたすらヘドウィグと戯れていた。


    ピンポーン


    「!! 来た!?」


     急いで階段を駆け降りると、バーノン叔父さんが既にドアから外を見ていた。叔父さんは外を見ながら固まっている


    「ダーズリーさんのお宅で間違いありませんか?」

    「た、確かにそうだが。」

    「ラミア先生?!」

    「ハリー、こんばんは」


     彼女は少しだけ微笑むとバーノン叔父さんに連れられてリビングへ入って来た。 
     ソファーに座った彼女は叔母さんの出したお茶を一口飲んでから、口を開いた。


    「初めまして。ハリーの通う学校で教師をしております、ラミア・セルウィンと申します。」

    「はぁ……。」

    「こちら、つまらないものですが……。マグルの世界で有名と聞いたので……。」

    「これ……この前テレビに出ていたノンシュガークッキーじゃない?!」

    「クッキー!!」

    「是非、どうぞ」


     ダドリーは勢いよくクッキーの缶に飛びつき中を開け食べ始めた。


    「喜んでもらえたようで、よかったです」

    「それで、なんのようだ?」


     叔父さんは先ほどより声色が落ち着いていた。相手に敵意がないことを感じ取ったらしい。


    「今年はクィディッチワールドカップの決勝がこのイングランドで行われる、記念すべき日です。それにハリーを連れていきたいと思っています。」

    「くぃでぃっち?」

    「はい、こちらの世界で有名なスポーツです。」

    「それにこの小僧を連れていきたいと?」

    「そうです。そしてそのまま新学期までハリーの名付け親のもとで生活することを提案します」

    「シリウスのところで?!」


     叔父さんと叔母さんの顔色が悪くなったような気がした。しかしハリーはそんなこと気にならないくらい興奮した。シリウスと暮らせる!


    「ハリーの安全は保障します。許可を頂けますか?」


    頑固な叔父さんもラミア先生にかかればただの叔父さんになるらしい。






    「ラミア先生」

    「どうしましたか?ハリー」


    2人は街外れまで歩いて向かっていた。ハリーはラミアに荷物を持って来なさいとだけ言って家を出たが、そこからは何も言っていなかった。



    「先生が来てくれたんですね」

    「ダンブルドアから手紙が来たんです ハリーをシリウスの家に連れて行き、家に魔法をかけてほしいとね」

    「魔法?」

    「ええ 詳しいことは到着してから話しますよ」


    少しずつ人気がなくなっていく。ラミアはこの辺りかと呟くと、ハリーに荷物を置くように言った。


    「荷物を先に送ります 少し下がってください」

    「え 送る……?」


    ラミアは荷物に杖を向け少し振った。


    「消えた……」

    「大丈夫ですよ、無事に届いているはずですから ところでハリー、姿現しの経験は?」

    「姿現し?」


    経験どころか聞き覚えもなかった


    「マグル風に言えば瞬間移動というところでしょうか」

    「瞬間移動!?」

    「そうです、私の腕に捕まってください 絶対に離さないでください、死にますよ」

    「死ぬ……!?」


    ハリーは急いでラミアの腕に捕まった。その必死さにラミアは少し笑ってしまう。


    「大丈夫ですよ 手を離さなければね」


    微笑んだラミアにハリーはむず痒いような、気恥ずかしいような、そんな気がした。


    バシュッ

    「うわぁっ!」


    しかし次の瞬間、そんな気持ちは吹っ飛んだ。


    体がねじれるような、内臓が混ざるようなそんな感覚に襲われた。



    「着きましたよ、ハリー …大丈夫ですか?」

    「……はい どうにか…」


    とっさに閉じていた目をゆっくり開ける。目の前には心配そうなラミアの顔と見知らぬ土地が広がっていた。


    「ここは……?」

    「シリウスの家のある丘の麓です」

    「ここにシリウスが……!」


    見回せば遠くに小さく一軒の家が見えた。
    あそこに住める。そう考えるとワクワクした。


    「ええ、少し歩きますよ」

    「はい!」


    ハリーは足取りの軽くなっていた。

    嫌いな色で塗りつぶして