秘密というより知られていないだけ
新学期3日前、私はホグワーツに一足早く来ていた。
今、城にいるのはダンブルドアとマクゴナガル、フィルチ、マダム・ポンフリーぐらいだろう。
「静かだ………」
ホグワーツ城の5階。ここにはなかなか知られていない肖像画がある。
「〈没落カポーティ夫人〉、ただいま」
「あっらぁ、もう帰ってきたのぉ。早いわねぇ」
相変わらずの天邪鬼だ。その頭をちょいちょいとつつけば、ニヤニヤしながら「なによぉ」と言った。
「私のいない間、誰も入ってない?」
「入ってないわよぉ。変わらず独りぼっちねぇ。で、合言葉はぁ?」
「富める者〈プルートーン〉」
「正解よ」
夫人の肖像画が開き階段が現れる。
この先は第二の私の部屋。私とレジーあと多分ダンブルドアしか知らない、秘密の場所だ。
中には五つの小部屋がある。一つは書庫ーーーここにはこの部屋を作った人物の集めた、マニアックかつ素晴らしい本が揃っている。もう一つは実験室ーーー12個の実験机に様々な魔法薬材料。残りは………まあ様々だ。
「さぁて。………やりますか!」
私は書庫へ行き大量の本を魔法で運び、実験室で作業を始めた。何年かかるかはわからないが、私にしかできないことをやるだけだ。
新学期が始まり、早々にハリーとウィーズリーは宴会にいなかった。セブルスの機嫌がまたしても悪かったので、またなにかやらかしたのだろう。八つ当たりをされるのは私なのだから迷惑だ。
次の日はウィーズリーに吼えメールが送られた。その内容は私の耳にも入ったが、まあ、自業自得だろう。
今日はハロウィン。だけど私は例の部屋に篭っている。
「ハロウィンなのにこんなところに篭ってるの?」
「まぁね。今日の授業はもう終わったし」
「そう。…ああ、それは3滴ではなく4滴の方が効果的」
「え、そうなの?」
彼女の名は、ディリス・ダーウェント。歴代校長の中で最も有名な1人と言われ、聖マンゴ魔法疾患傷害病院で活躍した長い銀色の巻き毛の魔女だ。
なぜここに彼女の肖像画があるのか、私にもわからない。彼女曰く気付いたらここにあったらしい。ちょくちょく校長室と聖マンゴ、そしてこの部屋を行き来しては、私にいろいろなことを教えてくれる。便利な私の教授だ。
「あ、もう8時だ。」
気がつけばこの部屋に篭って6時間は経っていたらしい。集中力とは素晴らしいものだ。私は夕食を食いっぱぐれないよう、大広間へ向かった。
夕食後、先生たちが廊下に呼び出された。
「穢れた血……」
そこにあったのは、大層な血文字と石になったミセス・ノリス。フィルチはハリー達が犯人だと思っているらしい。だが、それを否定したのはまさかのセブルスだった。偶然居合わせただけだと彼は言ったが、やはりセブルスはセブルスだった。
ハロウィンのご馳走を食べずに何故廊下にいたのか。その問いに、ハリー達は疑わしい答えをするだけだった。
「ああ!また会いましたね!ラミア!」
「はぁ、そうですね。Mr.ロックハート」
最近あの胡散臭い魔法使いにつきまとわれている気がする。
「ギルデロイと名前で呼んでくれればいいのに!」
「いいえ、結構です」
いい加減しつこい。そのうえ声がでかい。いい迷惑である。
「このあと、私とお茶でも……」
「いいえ、遠慮させていただきます。このあと用があるので。」
無理やり会話を終わらせ、速攻で消えてやった。付きまとわないでほしい。