小さな約束
3年生。ホグワーツでは保護者の許可があれば、ホグワーツ城隣のある村へ行くことができる。
「サインはもらえた?」
「当然」
その日私たちは初めてホグズミード村へ向かった。
秋の過ごしやすい気候の中、私とレギュラスは並んで城を出た。前回の喧嘩の後から私たちは一緒にいることが増え、今日のホグズミード行きも何の疑問もなく二人で行くことが決まった。今まで一緒に出掛けることなどなかったからか、少し新鮮な気がする。
「羽ペン、羊皮紙、インク………」
「欲しいものは買えましたか?」
「うん、多分これで全部。3年生になって授業も増えたから、インクも羊皮紙もすぐなくなるね」
「今までは家から送ってもらってましたが、自分で買えた方がいいですし」
「そうそう」
スクリベンシャフト羽ペン専門店とダービッシュ・アンド・バングズを梯子し、必要なものを買い揃えた私たちはハニーデュークスへ向かった。
「百味ビーンズ買う?」
「僕はいいです……。あまりいい思い出がないので」
「そうなの?私は逆に美味しいのしか当たったことないなぁ」
「それはそれですごいですね……」
昔、兄がくれた百味ビーンズ。どれを食べてもおいしかった。深緑したビーンズには少し尻込みしたものの、食べてみれば少し苦いもののすっきりとした甘さもある不思議なものだった。
「じゃあ今度美味しいのだけ集めてレグにプレゼントするね」
「できるんですか?そんなこと」
「私が食べたいなぁと思ったのだけ集めればいいんだもの」
「じゃあ、期待してます。あ、でもオレンジ色はいらないです」
「わかってるよ。」
百味ビーンズと蛙チョコレートを買って私たちは三本の箒へ向かった。そこのバタービールは飲んでおくべきだと、兄が言っていたからだ。
「不思議な味ですね……」
「そう?レグは苦手?」
「苦手というか…」
「私は好きだなぁ」
レグは少し眉間にしわを寄せている。好きじゃないようだ。
外は少しずつ暗くなり始めている。随分日が短くなった。
「叫びの屋敷行ってみたい」
「今日はもう遅いですから、次の時にしましょう?」
「そうだね。次はクリスマス休暇前だっけ?」
「ええ。今年のクリスマス休暇は?」
「それが今年は帰るように言われてるの……」
一年生の時は私もレグも休暇は家に帰り、去年は私だけホグワーツに残った。今年こそは一緒にクリスマスを過ごしたかったのだが。
「そう、ですか……。今年、僕は残る予定です。」
「そっか。じゃあ来年は一緒にホグワーツ残ろう!」
「ですね。楽しみです」
バタービールを片手に二人で笑いあう。交わされる約束は私たちの仲を深めてくれるように感じた。