結局は同類
「レグ!ちょっと来て!」
「は?」
ある土曜日の昼、大広間で昼食をとっていたレギュラスにラミアはそうとだけ言って彼の腕をつかんだ。レギュラスと共に昼食をとっていたシルヴィオとタージェスはポカンとその現場を見ていた。
「え?ラミア!?」
レギュラスは状況も呑み込めないまま、友人二人を置いてラミアに引きずられていく。片手にパンを持ったまま。レギュラスはどうにか体勢を立て直し、ラミアの横顔を見た。彼女の目は驚くほど輝いていた。
きっとまた何かを見つけたのだろう、そう思いながら渋々ラミアの隣を歩く。しかし、どこへ向かっているのか全く見当がつかない。歩いていくうちに生徒の姿は少なくなり、レギュラスもあまり来たことのないような廊下へ突き進んでいく。
「この先って何かありましたっけ?」
「私も何もないと思ってたんだけどね。まさかあんなものが見つかるなんて……!」
ラミアは完全に興奮状態にあるらしく、目を爛々と輝かせた。階段を上へ上へと登り、とうとう5階まで来た。ようやくラミアの足が止まったの、5回の突当りだった。
「この肖像画って知ってる?」
「え、はい。没落貴族カポーティ夫人ですよね。ホグワーツの中でも最も古い肖像画の一つだって、何かの本で読んだことがあります。」
レギュラスは意味がよくわからなかったが、ラミアの質問に正直に答えた。するとラミアはニッコリと笑って正解と言った。そしてそのカポーティ夫人に話しかけた。
「紹介するね。私の友人、レギュラス・ブラック。これからは彼もこの部屋使うから。」
〈あらぁ、ボーイフレンド?いいわねぇ。……合言葉は?〉
「富める者〈プルートーン〉」
「え……?」
〈正解よぅ〉
レギュラスは言葉を失った。肖像画の下に穴が開き下へと続く階段が現れたのだ。
「ようこそ、冥界の部屋へ」
ラミアは満面の笑みで笑った。
階段を降りるとその先にはいくつもの扉のある楕円形の広間へ出た。ラミアは迷わず目の前の扉を開けた。部屋を囲む小さな本棚と中心に置かれた丸い机と数脚の椅子。ラミアはレギュラスに座るよう促した。
「どうぞ」
「はぁ……。」
状況は未だ呑み込めないままだ。ラミアは杖を一振りすると2人分のティーカップを用意し紅茶を入れ始めた。
「今日の午前中、なんとなくうろうろしてたら見つけたの。カポーティ夫人曰くもう何十年も誰も使ってないんだって。他にも書庫とか実験室とか寝室とか……、いろいろあるみたい。」
「………」
「大丈夫?……はい、紅茶。」
「ありがとうございます。」
ラミアの入れた紅茶を一口飲み、深呼吸して落ち着こうとした。
「ラミアの行動が常軌を逸しているのは今に始まったことじゃないですもんね……。」
「どういう意味!」
「そのままの意味ですよ。……ハァ」
ラミアは拗ねたようにどこからか取り出したクッキーを齧っている。
「でも、ここの書庫すごいんだよ!図書室でも見たことない本ばっかり!」
「そうなんですか!」
「食いついた…!」
「しょうがないです。僕も貴女もすごい勢いで図書室の本を読破してるんですから。」
「それもそうだよね」
ラミアの目は輝いたままだ。レギュラスも目の奥で期待がキラキラと光っている。要は二人とも知識に貪欲で本の虫なのだ。
「しばらくは図書室ではなく、この部屋で待ち合わせですね」
「うん。ここの方が広いし!そうしよう!」
ラミアとレギュラスは新たな秘密を共有する友人となった。