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 学期末テストも終えた夏休み目の前の土曜日。ラミアとレギュラスはいつも通り冥界の部屋に籠ってそれぞれ好きな本を読んでいた。レギュラスのおかげで不眠を少しずつ解消していた彼女は、少しずつだが体調も良くなっていた。しかしそのおかげで気が付きたくないものにも気が付くようになってしまったのは、レギュラスにとってもそしてラミアにとっても大きな誤算だったのかもしれない。

「レグ」
「なんですか」

 どちらも本から顔を上げることはしない。

「左手、見せて」
「っ……!」

 レギュラスはバっと本から顔を上げると、ラミアを凝視した。今の彼女ならばれる筈がないと高をくくっていたが、そう上手くはいかないらしい。

「どう、してですか・・・?」
「別に。レグが隠し事してるから、教えてもらおうと思っただけだよ。」
「隠し事なんて、そんな……」
「レグ」

 ラミアはそのとき初めて顔を上げ彼の目をまっすぐ見た。

「レグ、そんなに言いたくないなら、いい。ただ、私があなたの口から聞きたい。……その左手は、なに?」

 ラミアには敵わないと、そう思ったここまで来たらもう引けない。覚悟はとっくに決めたじゃないか。
 レギュラスは左手のローブの袖を上げる。そこには確かに黒く禍々しい闇の印が浮かんでいた。自嘲の笑みを浮かべながら、レギュラスは問う。

「僕を軽蔑しますか?あなたの家族を殺した、その仲間に入ることに。僕を憎みますか?あなたの憎む相手の、その下につくことに」
「………」

 彼女の表情からは何も読み取れない。それがとても怖かった。怒鳴り散らして自分を罵倒してくれればどんなに良かったか。レギュラスは目を閉じて、彼女の言葉を待った。

 しかしどれだけ待っても、彼女の声は聞こえない。そっと目を開けた。

「ラミア……?」
「軽蔑なんてしない」
「え・・・・・・?」
「憎んだりしない。それが私とレギュラスだ。私はレグがどんな道に進んだって変わらない。そんなことで変われるほど、私は弱くない。相手がどんな道に進んだって、私には関係ない。それでも私はレグと親友でいたいよ。相手がどんな考えを持っていたって、どれだけ自分と正反対であったって、それがレギュラスなんだ。」
「ラミア……」
「いつか道が離れることなんて、ずっとわかってた。それだけ私とレグには違いがあるから。」
「っ……」
「それでも、それでも……!私はレグといたいよ……!」

 レギュラスは、半ば叫ぶように吐き出したラミアを抱きしめた。ラミアは泣きそうな顔をして、レギュラスの背に腕を回す。

「ラミア、ラミア、……ラミア!ごめんなさい」
「謝んないで、悪いのはレグじゃない、」
「僕は、あなたに……!」

 それ以上言葉は出なかった。言葉にしちゃいけないと、レギュラスは言葉を詰まらせた。
 2人はしばらく離れなかった。離れられなかった。離れたらもう二度と触れられない、そんな気すらした。



 それからも私とレギュラスの関係が変わることはなかった。誰よりも近くに、しかし誰よりも遠い距離にいる私たちに誰もが疑問を抱いた。
 私たちはもしかしたら狂っていたのかもしれない。見えることのないお互いの繋がりに妄信的に縋っていただけなのかもしれない。

 それでもいいんだと、私は信じて疑わなかった。

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